読書メモ
・「現役大学教授がこっそり教える 株価予測黄金の方程式 ―木を観て森も観る!」
(榊原 正幸:著、PHP研究所 \1,300) : 2008.02.17
内容と感想:
「株式投資「必勝ゼミ」」第1講、第2講に続く応用編。三部作の完結編と位置づけている。
本書では引き続き個別銘柄の株価予測の手法を解説している。
「正統派のファンダメンタル分析の手法」と著者は胸をはる。
第1章では2007年以降の日本株の行方を予想している。
個別銘柄の株価(木)を観る前に相場全体(森)を観ようとしている。
第2章は著者が開発した「Prof.サカキ式投資法」の要点をまとめている。前編の復習になっている。
第3章は「個別ケース分析」手法におけるデータの採り方、予測の仕方を説明している。
第4章では個別銘柄の事例を紹介しながら個別ケース分析を学ぶ。
第1章の予測では2007年以降の日本株を大胆に予想しているが、
サブプライムローン問題の影響は加味されていない。執筆当時は予想されていなかったのだから仕方がないだろう。
今(2008年2月17日現在)、その予想結果を見てみると、「2007年夏以降の日本株の先安」は当たっている。サブプライム問題がなくても下がっていたかどうかは微妙だ。
「当分は円高・株安」という予想も当たり。2008年2月頃は日経平均は¥10,000〜¥12,000と観ている。
サブプライム問題を加味していない底値なのだから、果たしてこの先どうなるだろうか?注目である。
また、2008年3月期決算発表(2008年5月)が大底と見ている。その上で投資方針としては、
2007年夏以降半年は静観しながら、「極めて控え目」なスタンスで臨み、
2008年年初以降は活発に、というシナリオを描いている。
さて、第4章では個別銘柄の事例を挙げて個別ケース分析による2007年の株価予想を行なっているが、
やはりサブプライム問題の影響が大きく、予想はことごとく外れている。
著者の手法は3冊読んでみてほぼ理解できたが、財務優良企業の安値圏だけを狙う投資法なのでじっくり構えていられるメリットがある。
損切りしないから損もしない。「必勝法」ではないが負けない投資法と言えるだろう。
○印象的な言葉
・知識・技術、データ、根気よく続けること
・向こう一年以内に予定されている重要なトピックを定性的に分析・考察
・日本の「資産インフレ」の胎動。不良債権処理が進んだ。企業のリストラも完了。世界同時インフレの進行。
・素材価格の上昇・高止まりによる「物価インフレ」。商品価格に転嫁されずにはいられない
・中国の経済成長と需要増大が物価高を呼んでいる。「デフレの輸出国」から「インフレの輸出国」に。
・東証二部、新興市場の脆弱性
・予想に反して中規模以上の大きな下落になった場合、ナンピン水準まで下がったらナンピン買いし、トントンで救済する。
そういう局面のためにナンピン資金を用意しておく。
・外国人投資家にすれば国際的に優良な企業の株を安値で買い集めたい。
・増税を延期できるほど日本の国家財政に余裕はない
・「世界のトヨタ」は世界が狙っている
・シティグループによる日興コーディアル買収の目論見は「外資による日本企業へのM&Aがこれから増える」と読んで、
それを仲介するビジネスをチャンスと観ている
・不祥事で急落した(させた)株を安値で買いに来る ※コンプライアンスが重要に
・外資による日本乗っ取り懸念。キヤノン、ソニーは外国人株主比率がかなり高い。外国人に買い集められないように日本国民みんなで買う
・有望銘柄は次から次へと出てくる
・買いのタイミングを逸しても、見送って他の銘柄にいけばいい。売りのタイミングを逸しても次の高値で売ればいい
・疑心暗鬼になるとスパイラル的に株価が下落する
・「得意銘柄」を5〜10銘柄ほど持ち、安値と高値を順番に追っていくだけでいい
・「High PBR」(過去10年のPBRが1.0を割らない)銘柄は売買しないこと。業績悪化の際に大幅な下げを演じ、売り叩かれる(High PBR崩れ)。
安値に見えても1.0を割らなければ見送る。業績が画期的に回復しない限り、ボックス圏が当分続く。
・株価が新たな安値圏に突っ込んだら、戻りの高値は安値に突っ込む前の安値圏まで
・プロの投資家(うさぎ)は結果を急ぎ、結果で評価される。次の買いをじっと待つことも難しい。個人投資家(カメ)には「資産を減らさない(負けない)投資」が可能。
-目次-
第0章 本書を始めるにあたって
第1章 2007年春から2010年夏までの「日本株大予想」―木を観る前に、まず森を観る
第2章 基本事項の確認
第3章 「個別ケース分析」に関する詳細な解説
第4章 いくつかの個別ケース分析の実例
第5章 個別ケース分析の木を観て森も観る!
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