読書メモ

・「現役大学教授がこっそり教える 株式投資「必勝ゼミ」<第2講>
(榊原 正幸:著、PHP研究所 \1,500) : 2007.06.03

内容と感想:
 
前作「必勝ゼミ」に続く第2講。前作の進化版。「はじめに」にもあるように本書では株式投資で資産形成するための基礎知識、考え方、方法に重点を置いている。 実際にこれから使える、再現性のある知識と方法論を読者へ伝えようとしている。
 前作との違いは、買う基準を見直している点。例えば、
・買い値をPBRが0.5以下の株価 → 0.4 〜 0.8の間(日経平均がの7,600 〜 20,800の間の場合)
・BPSは1,500円以上 → 売買単位が1株のものはBPSは100で割る(BPSが何万、何十万というものもあるため)。単位が10株なら10で割る。修正BPS。

 また、前作の基準を満たす企業が格付け「AAA」とすれば、 本書で示している新基準(基準の拡大、緩和を行なっている)では「AA」の企業は、以下の基準を満たす。
・BPSは1,250円以上
・自己資本比率は60%以上(一般に60%以上なら優良企業)
・安全ポイント = BPS × 自己資本比率 が1,125 以上
 更に「A」格付けでは安全ポイントは1,125 未満としている。

 第3章では、キャッシュリッチな企業を買いの選択肢として挙げて、その選び方を説明している。 ここでは、PnCR(株価純キャッシュ倍率)という指標を定義している。 株価をnCPS(一株当たりのキャッシュ純額)で割った値で、これが1を割っていれば割安と言えるそうだ。 つまり会社が解散するときにPnCRが1未満なら株を持っていても損をしないことになる。
 第4章では信用取引の4つのリスクについて(著者の投資法では信用取引は禁止)説明し、信用取引に似ているがそのリスクがない取引(空売り)を披露している。 名付けて「現物空売り」。しかしよく読めば、一度現物を売って決済してしまうから空売りでもなんでもない。売った時点で現物はゼロなのだから。 更に値が下がると読んで十分に下がったところで買い直しているだけだから、そこだけを見れば通常の取引をしているに過ぎない。 しかも下がってから十分に値を戻すには下がるよりも時間がかかるものだ。 どちらかと言えば「バーチャル(仮想)空売り」と言ったところか?
 著者は信用取引は禁止と言っているのだが、現物を持っている上で信用取引で空売りを行なう「ハイブリッド空売り」という手法も披露している。 こちらもリスクがないのだが、少し難易度は高い。「リスクがない」と言っているが、やるなら十分に理解してからやるべきだろう。

○印象的な言葉
・皆様が喜ぶようなことをすれば、回り回って必ず自分も潤うもの
・損失は(株の)世界から引退したときか、人生が終わるときにしか確定しない
・過去のデータから「ありえる株価レンジ」をある程度予測する
・底値PBRはそのときの日経平均にもよる。PBRデフレータ(0.3854)と待機係数(0.77)を市場の平均PBRに掛け合わせることで求める(0.3を掛ければいい)
・同じ日本株の中でポートフォリオだ分散投資だと言っても下がるときはおおかた、一緒に下がるもの
・「良いと考えるもの」に資金を集中
・企業が一年度で計上する赤字は多くて EPS で -250円。2期連続でEPSで250円の赤字を出しても赤字計上前に BPSが1,500円あればBPSは1,000円。
・修正BPSが500円未満の企業は赤字を出す確率が大きい
・高PBR企業群への投資は成長期待型のグロース投資。下値の余地も大きく、大幅な下落のリスクあり
・キャッシュリッチ企業:期末に保有する現金で負債を全部返済しても現金が手元に残る
・nCPS = 一株当たりのキャッシュ純額(= 負債返済後の純額の現金、キャッシュ ÷ 発行済株式総数)
・東証一部上場企業ならPnCRが2.4以下(かつ、PBRが0.7以下)、それ以外の企業では0.6以下(かつ、PBRが0.35以下)なら買い
・ハイリスク・ハイリターンの取引と、ローリスク・ローリターンの取引では期待値は同じ
・空売りするには下落幅を予想しなければいいけない。なかなか簡単ではない
・株価は事実や情報を6〜8ヶ月程度、先読みする
・堅調なEPS推移をしている割安株は大幅に上昇することがある
・高値はPERで決まりやすい
・β値:個別の株価と日経平均との相関性を表す
・同じ銘柄をずっと追い続ける能力
・優良企業なら焦る必要はない

-目次-
第0章 「必勝ゼミ」の第2講を始めるにあたって
第1章 基本事項の復習
第2章 Prof.サカキ式投資法の「進化論」―新基準でチャンスが広がる!
第3章 知られざるお宝発掘法 ―「絶対買い!」の「謎のキャラメル箱!?」
第4章 信用取引のリスク ―ノーリスクの「現物空売り」「ハイブリッド空売り」とは?
第5章 個別銘柄のケース分析編
第6章 エピローグ