読書メモ
・「夢がなくても人は死なない 〜好きな仕事を探すより、仕事を好きになりなさい」
(三浦 展:著、宝島社 \1,300) : 2008.06.15
内容と感想:
「下流社会」の著者。
「はじめに」で著者は本書は「働く意味」が不明瞭な時代に、それでもなお働かねばならない人、働こうとしている人、
そして自分なりに働く意味を探している人のために書いたと言っている。
「好きなことを仕事にすること」が強迫観念にすらなっている迷える若者は必読の仕事論。
本編に入る前に、「本書の効能」や「仕事がイヤになったときのための“御教訓”カレンダー」(31日分)なるものもあり、
ちょっと笑ってしまった。御教訓は日めくりで毎日見るとよいだろう。若者だけでなく、経験を積んだ大人にも効くかも。
本書は奇数章が編集者と著者とのQ&A、偶数章が対談で、
ワタミの渡邉美樹社長やキッズシティーの住谷栄之資社長、漫画家・三田紀房氏、藤原和博・和田中学校長との対談という構成になっている。
著者は若者から進路相談をされると初めは「好きなことをやれば」とアドバイスしていたという。
しかし、好きなことを仕事にするには能力も必要だ。むしろ好きなこともはっきりしていないし、好きなことを仕事にしなければならないと思い込んで悩んでさえいるのではないか、
と考えるようになり、「できることをやれ」というアドバイスのほうが正しいのではないかと思うようになった。
本書を読んだ後は、とりあえず好きじゃない仕事でもきちんとやることで、やりがいを感じることができるかも知れない。
仕事をしながらもっと広い社会・世界に目を向けることで視野が広がり、やるべきこと、やりたいことが見つかるかも知れない。
そしてその仕事をやり続けた結果、それが得意になり、「自分らしさ」が得られるかも知れない。
またその仕事は自分を必要としてくれていたのだと考え、そこに幸せを感じることが出来るかも知れない。
○印象的な言葉
・雑務が人を育てる
・「自分らしく生きればいい」とアドバイスするのは無責任
・仕事でやりたくないことをやらざるを得ない。それも能力や人間としての幅を広げるのに役立つ。人生の大半はつまらないことをきちんとやっていくこと
・教育の役割は子供を社会化させること。一人前の大人にして、精神的にも経済的にも自立させる
・好きなことがあるなら趣味でやればいい。趣味が高じて職業につながったら運がいい
・仕事とは他者の期待やニーズに応えること、他者を満足させること
・「好き」よりも人より上手にできること、得意なことを仕事にする。「良い仕事をしているね」
・多くの仕事に必要なのは誰にでもあるはずの能力。誰でもできることを最低限できるようにすべき
・つまらないことでも必要だからきちんとやる。社会の基礎を支える
・親は子供に楽しそうに仕事の話をしろ。大人が働く姿を子供が見る機会が減っている
・いろいろな人に出会って揉み合う機会
・お客さんがその商品を気に入っているなら、自分の好き嫌いは関係なく、お客さんのためにきちんと説明して売るのが営業マン
・仕事をしているときの身体の動きがかっこいい
・子供は生まれてくる場所を選べない。大人には日本をよくする責任がある
・グローバルな人材になるには宗教観が必要。考え方や文化のバックボーンとなる。生き様に関する指針
・自分らしく生きることが楽であり、かつ社会にも適応できるという人は幸せ。そうでない人もいる。彼に自分らしく生きろと言うことは抑圧にすらなりえる
・マズローの五段階の欲求の最上位、自己実現の欲求を、日本では誤解されてきた。「自分のやりたいことをやって満足している」状態みたいな意味で使われている。
・格好はクリエイティブ風だが頭はクリエイティブじゃない。個性的な格好をしているのに無個性なことをやっている格好悪さ。
・自分らしく生きるとは孤独に生きること。個性的に生きるって怖い事。誰にも理解されなくてもいい
・とてつもなく変な生き方をしても恥ずかしがらず、堂々と生きられるのが本当の個性
・自分が正しい、いつかは自分が勝つ、と思えないとめげる、耐えられない
・個性は自分のプライドを守るために戦っているうちに形になっていく
・型は個性を引き出すための近道
・ジーコ監督に「自由にプレーしていいよ」と言われたら、選手はどうしていいか分からず実力を発揮できなかった。トルシエのように絶対服従で命令したほうが勝った
・簡単なことからやらせる。それが出来ると動き出す。一員になれた、という手ごたえ
・個性など自分が演じたい役割ということに過ぎぬ
・保護者教育をしなければどうにもならない
・成績のいい子の親は性格が面白い
・一人の父親、学校が子供に社会の全てを教えようなんて無理
・働かないと気分が悪い、という身体。身体が無意識のうちに動くのがプロ
・あなたが仕事を選ぶのではなく、仕事があなたを選ぶ。謙虚に仕事に従う
・仕事を通じて武器に変えることができたとき、人は自由になれる。それには時間がかかる
-目次-
はじめに
本書の効能
仕事がイヤになったときのための“御教訓”カレンダー
第1章 やりがいは、仕事をきちんとやった後についてくる
第2章 もっと世界に目を向ければ、やるべきことが見えてくる ―対談・渡邉美樹
第3章 若いときに頑張っておけば、あとは楽です
第4章 五感を鍛えることが仕事の基本 ―対談・住谷栄之資
第5章 自分らしさは、働き続けた結果得られる
第6章 はじめは個性はいらない。働く型を身につけろ! ―対談・三田紀房
第7章 就職するな、就社しろ!
第8章 仕事に役立つ「ナナメの関係」 ―対談・藤原和博
第9章 仕事が自分を必要としてくれることの幸せ
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