読書メモ

・「自民党はなぜ潰れないのか ―激動する政治の読み方
(村上正邦、平野貞夫、筆坂秀世:著、幻冬舎新書  \780) : 2008.06.29

内容と感想:
 
2007年11月に出た元・参議院議員3人による鼎談本。「参議院なんかいらない」(2007年5月)の続編。 そう簡単には自民党は潰れないかも知れないが、自民党政権が潰れるのは十分にありえる。 筆坂氏が言うように「長いスパンで見ると自民党は長期低落傾向から脱していない」のは事実だろう。 平野氏も「福田でおしまい」と言っている。タイトルだけ見ると「自民党は不滅です!」と言いたいのかと考えてしまうが、 内容は全く逆である。今回も各氏が言いたい放題である。
 冷戦も終わり、それを反映した55年体制も不要になった。 ソ連が崩壊し、日本社会党も解体され、一方の極が失われたことでバランスが崩れてしまった。 現在のアメリカと自民党が重なって見えてくる。 元自民党の村上氏ですら、現在の「すべて曲がり角にある日本の政治」状況を鑑みて、「今、政権交代の機が熟してきている」と言っている。
 また平野氏は55年体制とは「不正と腐敗、銭」と言い切っている。自民党と対抗する社会党すら地下水脈でつながっていて、金の授受があり、 国会も出来レースで、シナリオもあったらしい。 長期の自民党支配により、ここに来て積年の膿が噴き出してきている(今に始まった話しでもないが)。 年金問題、政治家の事務所費問題、大臣のお粗末な発言、防衛省汚職、などなど。 自民党政権が社保庁や自治体のデタラメな仕事ぶりを放置し、大企業に偏った政治を行なってきた。 すっかり政治は国民から乖離してしまった。政治不信が今の日本を暗くしている最大の原因である。
 第5章では亀井静香氏がゲスト出演。

○印象的な言葉
・弱肉強食派と共生社会派
・金をかけずに努力する政治家
・テロ特措法、イラク特措法は無原則な憲法9条判断でずるずると自衛隊を海外派遣する
・政治家、最高指導者は絶対的な敵を作ってはいけない。敵の止めを刺してはいけない。生きていける道を残しておく
・防衛利権:アメリカの安全保障戦略が関わるから聖域にされてきた。その分、膿がひどい
・安倍前総理の突然の辞任の際に、臨時代理を立てなかったのは大失態。国会機能、憲法機能が停止したのだから。政治の空白、統治者不在を放置。
・郵政解散のとき野党は憲法を盾に喧嘩すべきだった。
・トリックスター:おかしなことを喋っても「あの男なら仕方がない」、批判されない、ピエロ役
・歌舞伎ならその役者の芸が伝統ある流派の真髄をいかに継承しているかを見たい
・小沢一郎が政権交代を可能にしていくための選挙制度改革が必要と言い出した
・政策と理念と誠実さで国民に選んでもらう
・今の日本には憲政の常道である民主主義、議会主義の正論、本質を担保するという人間も機関もない
・日本の政治から「革新」という概念は消えた
・民主党の大基盤「連合」の組織率は低下
・田中角栄はナンバーツーの人。ナンバーツーがナンバーワンになるから間違いが起きる。小沢もナンバーツー。軍師タイプ
・隠退蔵物資:大戦中に軍や軍需産業に隠されていた様々な物資。敗戦のどさくさに紛れて軍人、官僚、政治家が私物化した
・自衛隊の給油活動は兵站。兵站は軍事活動の一つ。兵站なしの戦争はありえない。兵站のほうが危険。敵に狙われる
・反米になる必要はない。親米でいい。対等な関係が大事
・テロ対策の基本は貧困や差別の一掃
・官房機密費:使用先の証明、使用目的の公開が不要。外務省にも報償費がある。外務省機密費を内閣官房に上納することも
・その国に政権交代があるか否かが、民主主義が担保されているかどうかを示す
・社稷(土地の神「社」、五穀の「稷」)を大事にしたい。日本古来からの共同体の姿

-目次-
プロローグ 緊急鼎談
第1章 安倍辞任劇と福田政権樹立
第2章 したたかな自民党と政権交代の可能性
第3章 小沢一郎と政界再編へのシナリオ
第4章 非自民・細川政権誕生秘話
第5章 亀井静香が明かす政権奪還秘話