読書メモ
・「参議院なんかいらない」
(村上正邦、平野貞夫、筆坂秀世:著、幻冬舎新書 \720) : 2008.04.13
内容と感想:
2007年5月に出た元・参議院議員3人による「参議院」がテーマの鼎談本。
民主党が先の参院選挙で躍進し、自公連合を半数割れに追い込んだ。衆参で与野党が逆転する「ねじれ国会」となる前に
出た本である。
著者の一人、村上正邦氏はKSD事件で実刑が確定、つい最近(5/15)収監されたばかり。
参議院自民党の議員会長まで勤めた方だが、脇が甘かったということか?
「まえがきに代えて」にもあるように本書では3人が「今の政治のあり方、参議院のあり方」について
熱い思いを語っている。
3人が感じているのは小泉政権時の郵政民営化法案で「参議院は自殺行為をした」、「存在意義を自ら否定している」、
「こんな参議院ならいらない」ということだ。緊迫感のない国会論戦、大所高所からの議論の少なさなどが示す、政治の弱体化である。
そもそも参議院の役割は「抑制と補完」である。
「衆議院や内閣の暴走をチェックし、足らざるところを補う」、「国の進路を誤らせない」役割がある。
第七章では政治を川の流れに例え、
「表面的な諸問題の処理は衆議院」、「一番底の滔々とした静かな流れ」で揺るぎのないのが参議院。
「政治の秩序を整え、浄化する」、「国民生活を守り、国の進路の根っこの部分で誤りなきを期す」のが役割だと言っている。
参議院はその役割を果たしてこなかった。参議院は「既に死んでいる」のだった。先の選挙までは。
その「参議院を殺した」参議院自民党と小泉元総理に対する国民の審判が下ったのが先の参院選挙だ。
郵政解散で自民党を圧勝させた国民だったが、騙されたと知った国民は自公や小泉元総理の暴挙に対して怒ったのだ。
まだ日本人はまともだったということだ。国民と離れてしまった自公政権は目を覚まさないと国民から見捨てられる。
今後、民主党が政権交代を果たしたとしても自民と同じ事をやっていたのでは意味がない。
是非、本書でも提言されている参議院改革を実施してもらいたい。
改めて日本の政治の課題を知ることができた。
○印象的な言葉
・参議院はタレント議員の府(⇔良識の府)。タレントの知名度を生かした票集め、数合わせに使われている。
政治も知らず、見識もないのでは国民を冒涜している。政治家もタレント化している。
・衆院のカーボンコピー
・参議院議員定数の100人削減を。議員の数が多すぎる(現在242人。アメリカ上院は100人)
・党議拘束を外せ
・官僚(行政官)に責任を取らせる仕組みを。責任の所在が分からない。損害賠償を請求する。
・施政方針演説は衆参で一本化を(天皇が国会召集の勅書を読む際は既に一本化されている)
・金持ちと権力者の子供は指導者に育たない。苦労した人間でなくては
・共産党は政党助成金も企業献金も受け取りを拒否している
・政治家をやって財産を残すことはおかしい。国民への奉仕である
・いざというときに判断できる政治家、腹の据わった政治家
・自民党政権の大臣は誰でも務まる。役人の機嫌をとっていれば
・国のあり方や国益について国民の代表としてものの言える人
・心の中を律するのが教会、社会を律するのが議会。議会は社会的な教会
・参議院の6年の任期はじっくり腰を落ち着かせ、教育や国防、外交といった国家の根幹に関わる問題と格闘するためにある。
内閣を不信任できないかわりに、解散によって内閣からクビを切られることもない
・衆議院は地域と密着し、日常的に惹起する問題への対応をする。地方の代表、住民代表
・道路公団民営化は看板を付け替えただけ。名を捨て実を取った
・政治家は筋を通すこと、出処進退が大事
・自分を超え、党を超えて、国をどうするか。どこで命を投げ出すか、どこを死に場所にするか
・高度経済成長期に参議院は業界と労組の談合機関へと堕落。財界や労組の利権の代表と化し、日本の進歩に抵抗した。
・比例代表並立制は小選挙区で落選しても比例で復活できるという、おかしな仕組み。落選候補者の失業対策になっている
・歴史観や思想に関することを国会決議にすべきではない。宗教的考え方や生き方、民族問題や精神的なものも。
・改革は自分の身を削ることでもある
・参議院からは政党の影響を減らす必要がある。参議院比例制度はそれに反する。党の公認や推薦を受けるべきでない
・国が選挙経費を出す公営選挙にして、選挙資金の競争をやめさせる
・3年も4年も前の決算を審議している。予算に反映されることもなく、決算の国会承認は無意味。
現在の膨大な借金財政はこの杜撰な決算が根底にある
・予算が単年度主義であることが問題。消化主義になっている。
・会計検査院も事業の有効性や効率性までは検査しない。検査院を参議院の付属機関に。
・マスメディアは権力の御用機関になっている
・最高裁判事は内閣の任命。本来、司法と立法、行政は独立しているべき
・政治は経済界の下僕。財界は政治献金の見返りにいろいろな要求をしてきた
・政治家のディスカッション能力が低い。話が噛みあわない
・教育は国家百年の計。人づくり、国づくりの根幹
・政治は相対の世界。絶対という言葉を使う政治家は信用するな
・中道。中しい(むなしい)。柔軟性。
-目次-
第1章 国会議員は特権階級であってはならない
第2章 タレント議員の府
第3章 参議院をを殺した政治家たち
第4章 参議院改革の歴史
第5章 「村上天皇」体制とその変質
第6章 参議院改革論
第7章 政治改革の本丸は参議院の大改革
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