読書メモ

・「下を向いて生きよう。
(安田 佳生:著、サンマーク出版 \1,200) : 2008.03.20

内容と感想:
 
ベストセラー「千円札は拾うな。」の著者。
 2章で「人は自分と他人を比べずにはいられない生き物である」、 「自分より上のものと比べると人は不幸を感じてしまう」、 「見えなければ幸せでいられることはたくさんある」と書いている。 だからこそ「あえて下を見ることが必要なのだ」という(下流になれ、と言っているわけではない)。
 しかしそれは私には、ある程度上流に辿り着いた人の発言に聞こえる。 物質的にも精神的にもそこそこに満たされてしまった人だから言える言葉だろう。 その言葉には重みはない。上を見てもキリがないから、下を見て満足しろ、としか聞こえない。諦め、投げやりである。 「足るを知る」と言われるが、足るを知ったから言える言葉。
 これまでの著者の本とは全く立ち位置が変わってしまったようで残念だ。 本書中には離婚をしたことを告白しているが、その影響が全編を覆っている印象。 よほどショックが大きかったのだろう。
 しかし「ビル・ゲイツはNASAがつかまえた宇宙人」だと思うようにしているというのには笑った。 そういう考え方もあるのかと目から鱗である。 「こんな大変な時代に生きているのだから、生きているだけで偉い」というのは自分を慰めるときに使っているそうだが、これは使えそうだ。 「どんなつらいときでも楽しいを言わざるを得ない。でないと罰が当たりそう」というのは共感できる。いつも「有難い」と感謝の気持ちで生きないと罰が当たる。

○印象的な言葉
・絵になる人生。人生はアート
・時代で変化しない本質。長く人に支持される。
・(自分は)特別なんじゃないか?
・最も幸せな状態は、届きそうで届かない状態
・投資は文化を生まないが、消費は文化を育てる
・お金を度外視した文化的価値
・人生の「のりしろ」
・強い意志も本質を見失うと本末転倒な頑固になりかねない
・今そこにある幸せ
・上ばかり見ている人は下を見ることが下手。下と比べて満足することに恐怖と罪悪感を感じる。自分が小さくまとまってしまう気がする。
・上を見続ける人生は頂上のない山をひたすら登るようなもの。しんどい。上を目指すこと自体が目的化する。
・周りと比べて、すべてにおいて勝つ必要はない
・(人生の)勝ち負けのルール(基準)は自分で作る
・会社の成功は偶然(運)だが、潰れるのは必然。成功したいなら失敗をなくせ。
・世の中はうまくいかないことのほうが多い。人生を勝とうと思わず楽しもうと思う。
・ギャンブルは楽しませてもらうのだから、ちょっとくらい負けてもいい。勝つことを目的にしない。
・松下幸之助:この国をなんとかしたいという高い志。人間の本質をつかんだ経営者。彼の経営哲学の本質は「人に興味を持つこと」にある。
・常識は単なる共通認識なので場所や時代によって変化する。マナーは心遣いであり、センスが必要。
・女の色気とは「隙」。付け入る隙。
・プロセスを楽しむ。結果を追い求めるプロセスの中に喜びがある。
・流れに逆らわないで流される。流れに乗りながら自分で舵をとる。どんな流れの中にいて、どこに向かっているか観察し、自分の目的地をはっきりさせる。
・自分にとって本当に大切なもの、失いたくないもの
・繊細な神経を持っているほうが正常
・人に言える苦労や苦しみなんて大したことはない。
・次に来るときは今日覚えたことを全部忘れて来なさい(茶道)。知識でおもてなしするのではない、という意味。

-目次-
1章 「人は人、自分は自分」というウソ
2章 負け上手は、比べ上手
3章 流され上手は、生き方上手
4章 忘れ上手は、幸せ上手