読書メモ

・「ニューノーマル ―リスク社会の勝者の法則
(Roger McNamee、David Diamond :著、三五 寛子 :訳、東洋経済新報社 \1,900) : 2008.12.28

内容と感想:
 
鮮やかなグリーンの表紙が目立つ本。 梅田望夫氏の「ウェブ時代 5つの定理」の中で紹介されていたので読んでみた。
 タイトルの「ニューノーマル」だが、イメージが湧きにくい言葉だ。 かつての「ニューエコノミー」にも似た、新たなバズワードかも知れないが、 私の解釈では時代の変化に対応する新たな生き方のスタイルを表現した言葉。 著者によれば、「ニュー」は時間の捉え方や投資決定方法、グローバルな競争力など環境の変化を示し、 「ノーマル」とはその変化した光景が少なくとも今後10年間は続くことを意味する。
 「まとめ」にあるように著者は今の時代をエキサイティングな時代、可能性に満ちた時代と非常に前向きに捉えている。 テクノロジーの発達とグローバル化の進展により、個人の選択肢が今までより多くなり、優れたツールも増えてきたからだ。 ニューノーマルでは過去は誰かが決めてくれた物事を、今後は自分で絶えず決断し、行動することが求められる。 結局はよく考えて、行動しろ、ということだ。特に新しいことを書いているわけではない。 「基本に戻れ」と言っていると理解した。そういう意味でのノーマルなのだと。
 著者のロジャーは昼はシリコンバレーの投資家、夜はロックバンドのギタリスト、という風変わりな人物。
 内容としては「フラット化する世界」に似た印象。
 「はじめに」ではニューノーマルを実践するための4つの極意を上げている。 その極意を読者がマスターできるようにと本書は書かれた。 そのポイントは個人の力、決断、テクノロジーとグローバル化、時間。
 第5章ではニューノーマルにおけるキャリアについて書いている。 「外注できないような貴重なスキルを養うこと。または、企業から外注を受ける側になること」と。 また、「今後は一つのキャリアを続けるのではなく、異なるキャリアを連続して歩んでいくことがおそらく一般的になる」とも言っている。 これからの長寿社会では定年退職となっても、生活のためには働き続ける必要があるだろう。 そのためにも年をとってもチャンスを求めて新たなことにチャレンジしていくことが求められるのだ。
 投資家らしく最後の第18章では投資で勝つための15のルールを紹介している。個人投資家にもヒントになるだろう。

○印象的な言葉
・今まで見ようともしなかった場所に無限の機会が潜んでいる時代
・リスクは増えたが、リターンを得る機会も増えた
・北極星のように不動の目印
・組織から個人への力のシフト。個人の台頭。
・責任が増えるたびに心と視野が広がり、能力が高くなる。機会が拡大。
・好奇心、観察力、詳細と全体の切り替え
・技術の組み合わせを変えれば、ほぼ無限の種類の単一目的製品を簡単に生み出せる。量よりカスタマイズが重要
・保護貿易政策は国の経済を弱めるだけ。雇用を保護しようとすれば起業家精神を抑制する
・売上高、利益、キャッシュフローなど従来の指標への回帰
・規模の小さい会社や個人は集中度を高められる。規模から柔軟性へ。分散型のアプローチ。サイクルの短縮。
・創造性の爆発。誰もがプロデューサ、記者、監督になれる時代
・顧客の近くにいることの価値。現地主義。地域密着型。
・変化への対応の助けとなる製品・サービス
・MITの「OpenCourseWare」。ネットを使った無償教育。全2,000科目。
・北京語の重要性が高まる
・What-If分析
・技術を先取り。何が起きているかに注意を払う
・インフラ事業は資本集約的になる。競争も激しくなる。実現技術は独占になる。顧客が標準にこだわるから。
・時間をかけて適切な計画や決定をする。事業をよく理解し、焦点をぶらさない。十分な資金。従来と同じやり方。昔ながらのルール
・ライバルより「相対的」に早く動く。早いよりも正しいほうが重要
・単にデータやニュースを分析するのでなく、データやニュースに対する自分の反応を分析。意思決定に入り込む感情的要素を最小限に抑える。
・他の人が避ける領域に足を入れる
・自分の能力を証明した後でのみ、人と違うことをするのを会社が許してくれる
・ビジネスの場がローカルからグローバルへ、9時5時から一日24時間へ、一括処理からリアルタイム処理へ。
・ビジネスの成功の90%は、顧客が連絡を取ろうとしているときに、それに応えることで決まる
・情報は文脈のあるデータ。データに文脈をつけることが成功の鍵。データに圧倒されず、消化する。
・汎用の製品やサービスに興味を示さなくなった企業や個人消費者を対象とした市場。 小企業はカスタマイズしたソリューションをごく小さなセグメントに提供するのは比較的簡単。
・資金調達が情報開示になってしまう。後に支障が出るほど世に知られてしまう。調達前に事業の価値を高めておく。
・人が常にもっと欲しいと思っているものは時間。個人サービスには無限の需要がある。時間のかかる作業を解消するサービス。
・実験し、評価し、改善し、更に評価し、また改善
・もっと効率よく、短期間で、安く可能にする新技術はなにか
・SOX法の基準は巨大企業を対象にしており、小企業には経済的、管理的負担が重い。
・調査を独自に行なう小さな産業
・直販モデルは業績が悪くなった場合にダメージを受けやすい
・時間はその使い方を心得ている個人の秘密の武器

-目次-
はじめに ―ニューノーマルの四つの極意
第1部 現状把握
第2部 ニューノーマルのロードマップ
まとめ