読書メモ

・「ウェブ時代5つの定理 〜この言葉が未来を切り開く!
(梅田 望夫:著、文藝春秋 \1,300) : 2008.10.20

内容と感想:
 
シリコンバレーでビジョナリー、とかオピニオンリーダーとか呼ばれ尊敬される人たちの「切れ味の良い言葉」、金言の数々を引用し、 シリコンバレーの創造性を駆動する重要な要素を5つ挙げて、タイトルにある「5つの定理」としてまとめている。 読者にそれらの「未来を切り開く言葉」から生きるヒントを得て欲しいと著者は考えている。
 「あとがき」では本書を「存在しない美しい答えの代わり」に「成功確率を高めるエネルギーや知恵の源泉」にして欲しいと語る。 また、高コスト構造の日本には「守りの仕事の一つひとつにも創造的な攻めの部分を盛り込んでいくこと」の重要性を指摘していて、 改めて「攻め」の姿勢の大切さを確認させられた。
 本書にはAppleのSteve Jobsや、IntelのAndrew Grove、GoogleのEric Schmidtなどなど、シリコンバレーを代表する そうそうたる人物の言葉が詰め込まれていて興味深い。シリコンバレーという特殊な場所で働く人々が主役だが、 座右に置いて時々眺めることで刺激や活力になることだろう。
 5つの定理の内の第4定理の「グーグリネス」とはグーグル社内部でも使っている言葉だそうで、グーグルらしさ(気質)を意味する。 それは協力することを楽しむ、上下関係を意識しない、親しみやすさ等からなると言う。
 第5定理の最後では「フラット化するこれからの時代に、仕事の上でコモディティ化しないための心構え」として、 「自分がやらない限り世に起こらないことをする」ということを挙げている。 それをやるために重要なのは「他者が絶対にやらないような組み合わせを工夫すること」と言っている。 それはイノベーティブな製品やサービスの創造のアイデアだけではなく、それを実現するための人の組み合わせにも必要なことだろう。

○印象的な言葉
・カジュアルな起業
・細部に対する強迫的なこだわり
・大人が社会を鼓舞する
・濃密な経験から世界を俯瞰して眺める、複数の専門性を究める、言語表現能力が高い
・未来の姿を想像する補助線
・不確実な未来、未知を楽しむ心
・ゴードンの起業の三条件
・新事業の創出はおそろしく成功確率が低い。挑戦の数を増やす必要がある。失敗しても返さなくてよいお金を用意。数多くの挑戦を猛スピードで回す
・一人ではできない「より大きなこと」を目指す。自分ではできないことの出来る人と組む
・優秀なメンバーの集合体。強い力を持った個。スポーツ感覚。少数精鋭。互いを信じて無駄なく動き続ける
・固い信念、狂気にも似た情熱を持つリーダー。極限の状況を楽しめるタフで優秀な技術者
・チームの理想のサイズは6〜8人
・do-oriented: 行動指向。自分で手を動かす。雑用も自分でこなすフットワークの軽さ
・データで最終的意思決定を行なう
・fact-based decisions(意思決定)
・product-oriented culture。製品へのこだわり、愛着。製品が作り手の思い・挑戦・技・創造・使い手への配慮を語りかけてくる。製品も言語の一部。
・ハッカーの価値を尊重。居場所を与える。Intel社では彼らを「Achiever」(優秀な人)と敬称し厚遇、自由な環境を与えている
・自分が作りたい物を作りながら自由に生きていく。没頭度合いの深い人が勝つ
・既存のxx産業の怠慢。問題意識
・解決策を考えることを愛する
・designe-savvy(精通してセンスがよくクール)
・マイクロマネージャ:細かいところまで口を出してくるマネージャ。細部の手抜きを嫌い、目配りされたトップのこだわり
・勤勉と没頭の継続
・インターネットの本質:知識欲、コミュニケーション、帰属意識を満たすことを助ける
・命令にして下に落とせば誰もものを考えなくなる
・迅速に動き、たくさんのことをする会社。ミスを全く犯さないとすれば、十分なリスクを取っていない(ラリー・ページ)
・言いっぱなしの匿名文化
・励まし、動機付け、ガイドするマネージャ
・偉大な仕事をする唯一の方法:あなたがすることを愛すること。それが見つかっていないなら探し続けろ(スティーブ・ジョブズ)

-目次-
まえがき ――私の勉強法
第1定理 アントレナーシップ
第2定理 チーム力
第3定理 技術屋の眼
第4定理 グーグリネス
第5定理 大人の流儀
あとがき ――私の最終定理