読書メモ

・「脳を活かす仕事術 〜「わかる」を「できる」に変える
(茂木 健一郎:著、PHP研究所 \1,100) : 2008.10.18

内容と感想:
 
脳を活かす勉強法」に続く第2弾。
 「はじめに」でかつて著者がアイデアはあるのに実現できない、という悩みを抱えていたことを告白している。 ならどうすればよいかが自身の脳の研究を進めていくうちに分かってきたという。 問題の原因は脳の「感覚系学習の回路」と「運動系学習の回路」が直接、つながっていないことにあったのだ。 その2つの脳内回路のバランスを意識することで、「アウトプットを自分がよいと思うものに近づけられる」と言う。
 もう少し分かりやすく書くと、感覚系を通して外部から受け取った情報(入力)が記憶として側頭葉に蓄えられる。 その記憶は実際に手足を動かしたりして実践し、運動系の出力を経て意味づけされ、応用可能な経験(知恵)となる。 本書の1〜3章ではその感覚系と運動系をテーマに、その仕組みと、それを成長につなげる秘訣について解説。 4〜8章では「生きる」ため、すなわち「生命の輝き」を放つための5つの行動について解説。 その5つとは、
・クリエイティビティ
・セレンディピティ
・オプティミスト
・ダイナミックレンジ
・イノベーション
 これらは人間の脳に先天的に備わった能力だと言う。それらを発揮する機会を作ることが大切。 そうした機会を作り、入力と出力を繰り返すことで成長し、できなかったことができるようになり、 創造性を発揮したよい仕事が出来るようになる。そして人生に喜びを感じることが出来る。 脳科学からの説明で入力・出力のサイクルの重要性の理解がより深まった。

○印象的な言葉
・肥大化した自意識。あれをやりたい、これもやりたい、でも実行が追いつかない
・好奇心をもって様々な「いいもの」を見て感覚系を鍛える。本物に触れて感動する
・生命を特徴付けるものは自律性と自発性。それは前頭葉が司る。ここの元気がなくなると人は無気力になる
・脳は生きるためにある。生きるとは「生命の輝き」を放つこと
・小さな出力の積み重ねが能力向上につながる。早めに作品にし、リリースする
・完成度の高い仕事には拡散と収束が共存共鳴している
・根拠なき自信。修羅場においても笑って仕事をする。リーダーは太陽のように明るい存在でなければならない
・感覚系を鍛える:生で聴き、観る。十分に鍛えれば本物を見抜ける。一流に触れる、よいものを観る
・常に自分の仕事ぶりを冷徹に監視し続ける、言い訳をしない
・情報の整理や暗記に頭を使わない。細かい情報は破棄し、脳の力を知的な創造に注力したほうが効率的
・感覚系と運動系のサイクル(インプットとアウトプット)を回し、感性を磨く。
・文書管理ソフト:Papers
・スカラーペディア:専門家による査読を経て公開されたフリー百科事典。キュレータ(査読者)。
・デブリーフィング:体験報告。任務遂行状況などの報告。経験の再構成を行なう
・成長のきっかけは「背伸び」。そこには他人の目が欠かせない
・当て字は日本文化の一つ
・深い思索をしたい時は歩き慣れた道を歩きながら考えるのがよい
・身体を動かすことで間接的に無意識をコントロールし、集中力を高める。簡単な動作をしながら考える
・深部感覚:体の内部からもたらされる情報
・経験が前頭葉によって編集されるとき創造性を発揮する。そこで大切なのは意欲、価値判断。
・常に準備。日々の基本的な努力。常に考え続け、疑問を持ち続ける。自分に足りないものは何か?本当にこれでいいのか?
・ひらめきをキャッチする回路。ACCとLPFC。面白アンテナ回路。ひらめきにはリラックスが必要
・対象にずっと向き合わず、身近に置いて、他の仕事をしながら時々チェックする。無意識で観る、周辺で見る。無意識では並列的に色々と処理し続けている。 無意識の働きを自然な形で引き出す
・没我の境地:そのとき脳はフル回転。没頭
・世間の期待に応えてから、自分のやりたいことをやる
・精神の発達、社会性に目覚める
・誰かに出会うことで理想の自分に出会うための指針を得る
・人は未来を楽観的に見ることによって前進しようとする
・特定の文脈に囚われず、状況を広くまんべんなく見る
・恐怖の源泉は不確実性。最悪の事態をできるだけ詳細に想定し、対処法を考える。シミュレーションできれば「大したことはない」と思える。
・コンピュータゲームの最大の欠点は「その世界のルールが既に決められていること」。自らルールを作る能力。現状では出来ないならルールを変えてしまう。
・苦手な分野、経験のない領域では脳は緊張して苦しみ、全力で結果を出そうと必死になる。厳しいからこそ脳は成長する
・理想の働き方:社会と自分が相思相愛になること
・教師なし学習:正解がなく、先生もいない。
・喜びを感じるかどうかを基準にする

-目次-
第1章 脳の入力と出力のサイクルを回す
第2章 茂木式「脳の情報整理術」
第3章 身体を使って、脳を動かす
第4章 創造性は「経験×意欲+準備」で生まれる
第5章 出会いが、アイデアを具現化する
第6章 脳は「楽観主義」でちょうどいい
第7章 ダイナミックレンジが人生の幅を広げる
第8章 道なき場所に道を作るのが仕事である