読書メモ

・「脳を活かす勉強法
(茂木 健一郎:著、PHP研究所 \1,100) : 2008.07.27

内容と感想:
 
著者は高校1年のときには取り立てて良い成績でなかったのが、3年生のときにはトップになっていたという。 そこには勉強法に秘密があった。「はじめに」ではそれを「勉強のしかたが分かった」からと書いている。 勉強が面白くてたまらなくなった、勉強をして新しい知識を取り入れることに熱中していた、のだと。
 その鍵を握っているのがドーパミンという脳内物質である。 著者の場合は「勉強すること」が脳に喜びを与え、それを繰り返したくなる動機であった。その結果、(勉強に)熟練していき成績もアップした。 これをドーパミンによる「強化学習」という。
 本書では脳が専門の著者が脳を意識した効果的な学習法を解説する。 その肝は強化学習と持続力、集中力の3つ。 ドーパミンが分泌されるから嬉しいのか、それとも嬉しいからドーパミンが出るのか分からないが、 それが出たときに脳はそのときにとった行動を記憶し、再現しようとするらしい。つまり同じ行動をとりたくなるのだ。 その快感を得る行動を繰り返すうちに癖になる。それが学習に結びつけば、成績は上がり、何かの技術であれば上達していく。
 新しいことを知ること(学習)は嬉しい。成長した、うまく出来たと実感できたときは嬉しい。 私も読書が好きだから好奇心旺盛なほうだと思うが、それも知らなかったことを「知ること」の楽しさからだ。 みんなが経験することだと思うが、それを意識して続けていくことで更に強化され成長する。 本書に書かれていることは改めて教えられなくても、自然に身に付け(学習回路が出来上がって)、意識的に実践している人は多いのではないか? ただそれが脳内の何と言う物質名か知らないだけで。

○印象的な言葉
・タイムプレッシャー(制限時間)によって脳の持続力を鍛える
・突き抜ける感覚
・学習することは今までの自分と違う自分になること
・分からないことは脳の反応の鮮度が高いうちに調べ、答えを得る
・絶好調の時の感覚を身体に覚え込ませる
・強化学習の回路を暴走させて能力を開花
・変人であることの自由。変人を許容する文化。変人を集めてコミュニティを形成し「知」として消化させる仕組み(英国トリニティカレッジ)
・偶有性:半分は安全で予想できること(secure)、残り半分は予想できないこと(challenging)。予想可能なことと意外性が混在してこそ楽しい。不確実な状況を楽しむ
・ドーパミンは前頭葉を中心とする特定部位を通して放出される
・苦手だと思っていることも強化学習サイクルが回っていないだけ。最初のきっかけをつかむことが大事。
・「うれしいこと」を見つけるのが人生の課題。うれしいこと(やりたいこと)が「やるべきこと」と一致したら、もっとうれしい
・主体性を引き出すには小さなことでも自発的にやって、成功体験を持たせること
・できることを続けても脳は喜ばない
・脳は常に「苦しい刺激」を求めている。自分のキャパシティ以上の負荷をかける。一定の負荷に耐える根性、耐性
・人間の幸せは生き生きとした興奮状態を人生の節々で持てること、日々新しい発見に興奮できること
・計画自体が心理的名障壁になる
・記憶は側頭葉の側頭連合野に収納される。五感など様々なモダリティから働きかけると記憶が定着しやすい
・何度も反復して脳にアクセスされたものは重要と判断されて長期記憶として定着する
・ノンレム睡眠:脳が深く眠っている状態。記憶の整理にはレム睡眠が必要不可欠
・考え事をしたり難問を解いている時、脳の活動領域は小さくなる。領域を絞り込むことで集中力を高めている
・肉体の限界より精神の限界のほうが先に来る
・失敗続きでも「新しいことを試している」と前向きに考える
・一回性:その後の人生を変えてしまう出来事
・ピアプレッシャー:他の人と一緒でなくてはいけないという無言の圧力。友人や仲間、社会的通年などの周囲からの圧力
・共感回路:ミラーニューロン。共感する環境に身を置く
・一勝よりも一生!(一生続けること)
・安全基地(secure base)が固められてこそチャレンジできる。子供にとっての安全基地が親。親は後ろからそっと支えてあげる、見守ってあげる
・これからの時代を乗り切るキーワードは「猛勉強」。時代は「知価社会」
・知恵を得る以上に価値があるものなどこの世に存在しない(プラトン)
・学問ほどの快楽はこの世にない(江戸時代の近江商人)

-目次-
第1講 脳は「ドーパミン」と「強化学習」が好き
第2講 「タイムプレッシャー」が脳の持続力を鍛える
第3講 「瞬間集中法」で勉強を習慣化させる
第4講 茂木健一郎流「記憶術」
第5講 茂木健一郎の「読書のススメ」
第6講 脳のコンディションを把握しよう
第7講 自分を変える「一回性」に巡り会うには
第8講 偶有性がさらなる脳の発達を促す