読書メモ

・「金持ち父さん 貧乏父さん
(ロバート・キヨサキ:著、 白根 美保子:訳、筑摩書房 \1,600) : 2007.05.04

内容と感想:
 
タイトルからして私にはショッキングだったのだが、その本の存在は知ってはいたが、その内容までは余り興味はなかった。 しかし先日読んだ榊原正幸氏の投資の本で紹介されていたため興味を持った。
 著者には二人の「お父さん」がいる。一人は実の父親である「貧乏父さん」で、もう一人は彼にお金について教えてくれた「金持ち父さん」で、 彼の友達・マイクのお父さんだ。それがタイトルになっている。
 彼が金持ち父さんから学んだのはたったの6つだと言う。 それが本書の中で「金持ち父さんの六つの教え」として解説されている。全く難しい数式などは出てこない。 損益計算書と貸借対照表を用いてお金持ちとそうでない人のお金の流れを比較している。
 著者は金持ち父さんから学んだことをベースに「金持ち養成学校」の先生として活動を続けている。 「キャッシュフロー」というお金の勉強をするゲームも作って売っている。 国家が財政難に苦しむ理由の一つには高い教育を受けたはずの政治家や政府の役人が、お金に関する訓練を受けないまま財政上の決定を行なっていることだと言う。 そうかも知れない。私自身もお金に関する教育を十分に受けていない、と感じている。 著者は日系四世のハワイ生まれのアメリカ人だが、アメリカも今の日本と同様、社会保障や年金があてに出来なくなっている。 お金の知識がないと損をする時代になっていることに皆、気付き始めている。 著者はそのニーズに応える形で本書を書いたのかも知れない。
 著者は多くの人の人生がラットレース(イタチゴッコ)だと言う。そこから抜け出すには ファイナンシャル・インテリジェンス(お金に関する知性)が必要だと言う。 ファイナンシャル・リテラシー(お金に関する読み書きの能力)とも言い換えている。 その能力は四つの専門知識:会計力、投資力、市場の理解力、法律力から成る。
 私が意外に感じたのは昔、日本人が信じていた「三つの力」というものが取り上げられていたこと。 それは「刀、玉、鏡」の力のことので、刀は武器、玉はお金、鏡は己を知ること(これが最も大きな力)だという。 そりゃ「三種の神器」(皇位継承の証しとして天皇に受け継がれる三種の宝物)じゃないかと突っ込みを入れたくなったが、 比喩としてはうまいなと思った。
 金持ちはますます金持ちになると言う。それは資産が大きいから、そこから生まれる収入が支出を上回る。余ったお金を再投資することでまた資産が増えるからだ。
 著者自身は給与所得者だった頃に不動産保有会社を設立し、不動産を活用して資産を増やしてきた。貸し家や貸しアパートを転売してきたわけだ。 会社という形態にすることで得られる税の優遇措置、合法的な税法の抜け道があるのだそうだ。 著者は株投資と不動産を資産運用の柱にしているが、結局のところ株価が上がるところ、地価が上がるところをうまく見つけ出し、 利ざやを稼いで再投資を繰り返してきたのだ。景気がよいときは地価も上がるだろうが、ようやく景気が上向いてきたという今の日本では土地転がしは果たしてどうか?
 本書を読んだお金持ちでない我々が今出来ることは、支出を低く抑え、負債を減らし、確実な資産の基盤を築くことだ。

○印象的な言葉
・子供たちはお金に関する教育を十分に受けていない。その親もお金について学んでいない
・ラットレース(イタチゴッコ):ローンや税金を払うために、退職の日までただがむしゃらに働き続ける。次の世代にも繰り返される
・ラットレースから抜け出すには会計と投資に関する能力を高めること
・ゲーム「キャッシュフロー」:損益計算書、貸借対照表を使う
・一つの年金プランに依存することがどんなに危険なことか
・世界が変わったのに教育がそれにともなっていない。時代遅れの教育システムの中で、将来使うことのない知識を学び、子供は無駄な時を過ごしている
・「頭のいい人間を雇う」立場になる
・頭を鍛えるのも身体を鍛えるのと同じ
・お金のことになるとたいていの人は安全そうなことだけをやる。恐怖に動かされている。自分自身に搾取されている。お金の奴隷になっている
・恐怖と欲望という二つの感情に走らされ続ける人生。感情も魂もお金に支配されていること
・貧乏や金詰りの原因は恐怖と無知
・偉大なる文明は持てる者と持たざる者の間のギャップが大きくなりすぎたときに滅びている。アメリカもその道を突き進んでいる
・政府がしっかりしていて、社会の教育程度が高ければ物価は上がらない。本当は物価は下がるはず。物価が上がるのは無知から生じた欲望と恐怖のため
・偉大な富「教育」
・エンパイヤ・ステート・ビルを建てるならしっかりした基礎をつくらねばならない
・学校は雇い主としてではなく、雇われる側の人間として優秀な人間を育てる場所
・富とは、あと何日間生き残ることができるかの能力を指す
・マクドナルド社は会社としては世界最大の不動産を所有
・金持ちは中流以下の人間と同じルールでゲームはしない
・実社会では、(学校での)いい成績以外の何かが必要。ガッツ、図太さ、やる気、大胆さ、はったり、ずる賢さ、世渡りの技術、粘り強さ、頭の切れ
・専門知識と同時に「度胸」が必要。恐怖が強すぎると才能が萎縮する。
・リスクを負うこと、大胆になること、恐怖を知恵と力に変えること
・「情報」は新しい富
・古い考え方は最大の負債
・失敗を避ける人は、成功も避けている
・リスクはつきもの。避けるよりもうまく乗り越える方法を学ぶ
・人は損をするのが怖くて、そのために損をする
・バランスを取ることではなく、焦点を絞ること。前に進むにはバランスを崩さなければならない
・臆病な人間は批判をし、勝利を収める人間は分析する。批判は人の目を見えなくし、分析は目を開いてくれる
・「いやだ」という気持ちが成功の鍵を握る
・投資とは買うときに利益を得るもの
・「知っていること」が時代遅れになっていることが多い。いかに速く学ぶことができるかが問題
・ヒーローのやることをそっくり真似る

-目次-
教えの書
・金持ち父さん、貧乏父さん ―ロバート・キヨサキが語ったこと
・金持ち父さんの六つの教え
実践の書
エピローグ たった七千ドルで四人の子供を大学に行かせた男の話