読書メモ

・「これから10年、新黄金時代の日本
(Bill Emmott:著、 烏賀陽 正弘:訳、PHP新書 \720) : 2007.09.24

内容と感想:
 
2006年初めに出た「日はまた昇る」で日本経済の復活を宣言した著者。 著者は前書執筆中は日本経済の本格的な回復にはまだ悲観的で懐疑的だったらしいが、その後、本格的であると確信し始めていると本書では書いている。 著者はまだ日本人に広がる不安感を払拭し、自信をもつべきだと考え、本書を記した。 タイトルにあるように「これから10年、日本の新黄金時代がやってくる」だろうと言う。 しかし「それには従来のように懸命に働き、持ち前の秀でた知力と優れた協調性の特性をいかさなければならない」と。
 本書はタイトルから想像されるような全編「日本の復活」宣言だけの内容ではない。 著者の日本への期待が、日本贔屓とは言え我々に元気や勇気を与えてくれているのは素直に嬉しいが、浮かれてもいられない。 目次からも分かるようにどちらかと言えば地球規模の問題を主に論じている。 日本だけでなく、アジア、欧米、その他の地域の情勢にも言及し、我々の視野を地球規模に広め、考え方を深めてくれる。 グローバリゼーションが我々に恩恵を与える一方で、痛みを感じている者もいる。 常に変化する世界の中で日本は何ができるのか、そして我々は一個人としてどう対処していくべきか考えさせられる。
 訳者が「あとがき」で書いているように、翻訳しながら著者の造詣の深さと視野の広さに驚嘆していたという。 本書を読めばそれを実感することだろう。 また著者本人にインタビューしたときは、その高ぶらない謙虚な態度に驚き、その後も彼の気高い品位に心打たれたという。 本書は新書という制限された媒体の中でも密度の濃い、深い分析の記述が満載でお買い得である。

○印象的な言葉
・グローバリゼーションが地球規模でインフレが大問題にならないようにしている。世界経済を成長させ、生活水準も向上した
・日本での規制緩和策も競争を激化させ、インフレを抑制している
・日本の人口減少と高齢化が生産性向上の必要性を生じさせている。女性の活用、より高性能な機会やITの利用
・現在の日本ではあまりに多くの生徒が前の世代よりも粗末な教育を受けている
・絶対的な経済規模は人口の問題に過ぎない
・国が裕福になれば国民は支配者に対し、彼らの責任問題を追及するようになる。中国でも起こるだろう。
・自国が改革を望まなくても、周りの世界では変革が進む。そのうち時代遅れになる。その分だけ、どうしても改革が必要になったときの苦痛は大きい。
・1990年代、日本は平凡な国に堕した
・自衛隊のイラク派遣は世界問題について当たり前の役割を進んで果たす新たな積極性を示す。真に国際社会の一員となろうとする
・より優れたテクノロジーとより多くの資金が効率的に投資されれば生産性は向上する
・感情や野望、恐怖や希望などが激しくなりあまり、判断が狂わされる。かつては文明人だった人たちが残虐行為を犯すことに。
・倫理的で慎重な行動は、自然なものではなく、社会状況によって必要とされる場合に限り、とられる。
・中国の貿易はGDPの80%。日本は25%、アメリカは30%。中国が製造業が原動力で、GDPの50%以上。
・インドのIT分野はGDPのわずか4%。IT産業が成長を長らく持続させるだけの力とはならない。サービス業が原動力で、GDPの50%以上。製造業25%。 インフラの整備が課題。
・中国とインドの接触は驚くほど少ない。互いを無視して近隣諸国を支配することに専念?
・ライス長官:アメリカの外交が女性であるばかりでなく、黒人によって主導されていることは、アメリカの社会的、倫理的強みを示す。実力社会、流動性のある社会。
・外交問題を軍事的手段で解決するやり方は時代遅れ。アメリカの世論が許容しない。外交で説得を重ねながら、裏面で軍事力によって脅す
・アメリカの非軍事的分野における世界への指導力:貿易、金融市場、他の商業分野で規則に基づくシステムを確立
・中国とインドの経済力が増大し、国力の配分が世界的に均等化されることにつれ、世界の集団指導体制の可能性も。
・EU(欧州連合):ヨーロッパ全土を通じて政治および経済上の平等化
・最貧国への貿易開発援助が発展を促す一方で、阻害している。援助に依存し自立できない
・テロリズムは人々の疎外感や不満に起因。指導的テロリストは交渉の相手となる類ではない。彼らの行動は何の得にもならない
・開発途上国からの農産物の輸入は彼らの援助になり、単なる援助金を与えるより安くつく
・日本人は国内農家保護のための補助金を負担し、しかも輸入規制によって高値となった作物を買わせられている
・途上国へのインフラに対する支援なら監視が容易で、盗まれたり、流用されることは難しい。貿易によって助ける
・アフリカは過去30年間、何十億ドルもの援助をうけたにもかかわらず、大半の国家がむしろ貧しくなっている。 必要なのは優れた政府機関、司法制度。生産物を輸出する能力。
・民主的な選挙が民主化への進歩や向上をもたらす。選挙で選ばれた政府や関係機関が国民や外郭団体から平和的手段で正当化される。
・アメリカでは何でも実現できるという精神。更生するという国家理念。

-目次-
第1部 日本経済の復活はホンモノか
 序 これから十年、日本の新黄金時代がやってくる
第2部 世界潮流をどう読むか
 第1章 日本経済とアジア諸国との関係
 第2章 アメリカの「力」を見極める
 第3章 世界におけるヨーロッパの役割
 第4章 貧困、貿易、テロリズム
 第5章 世界を変革できるアイデア