読書メモ
・「稲盛和夫のガキの自叙伝」
(稲盛和夫 :著、日経ビジネス人文庫 \619) : 2007.07.11
内容と感想:
2001年に日経新聞の「私の履歴書」で連載した自伝をベースに書かれた本ある。
著者に興味を持つようになったのは最近の著書「アメーバ経営」からであるが(遅いくらいである)、
本書は自伝ということもあり、彼がどのような人生を歩んでこられたのか非常に興味があった。
読み進めていくと、一人の人間がここまで経験できるのかと思えるくらい、劇的で波瀾万丈の人生が描かれている。
「解説」で堺屋太一氏が書いているように、まさに「手に汗握る出世物語」である。
同氏は「努力と才能と幸運によって苦境を乗り越えて意想外の大成果を築き上げた」経営者とも評している。
京セラ・グループの発展は”プロジェクトX”の連続で、数々の伝説とも言える成果を挙げ、それが更に求心力を増幅させていったようだ。
著者の「アメーバ経営」に少し触れると、組織をアメーバという独立採算制の組織に分け、
経営者意識を持ったリーダーや社員が組織運営していく仕組みだ。
好業績を上げたアメーバに与えられるのは名誉と誇り。みんなのために貢献したという満足感、仲間からの感謝や称賛が報酬という。
業績が給与に直結するような近年の過激な成果主義とは一線を画す。古き善き高度成長期のやり方そのままとも言えるが、
単なる懐古趣味ではなく、やはり日本人には成果主義は合わないのかも知れない。
京セラの歴史は多角化の歴史とも言えるが、著者は様々な事業にチャレンジし、多くの仕事を生み出し、雇用を生み出してきた。
初めは得意技のセラミック・結晶技術を応用して展開し、成長と安定した経営を両立させてきた。
その後は、経営危機に陥った企業を支援する形で情報通信機器事業にも関わるようになり、
通信事業の自由化に伴い、情報通信事業にも参入した。第二電電(DDI)や携帯電話サービスのセルラー(現在のKDDI)を立ち上げ、
巨象NTTに対抗できる勢力を目指し、果敢に挑戦を続けた。恐るべきパワー、情熱の持つ主である。
最後のページにあるように「どんな苦難や逆境に遭遇しようと、恨まず、嘆かず、腐らず、明るくポジティブに人生を受け止め、素直に努力をすればよい。
感謝の念を持ち、前向きに生きていくなら、道は必ず開けていく」という言葉は、
苦難や逆境に遭遇しては立ち止まりがちで、前に進めない私のような凡人にとっては力強い励ましである。
○印象的な言葉
・いつまで世を恨んでいても仕方がない。希望を捨てないで、すばらしい未来があると信じて生きよう
・苦しい時にこそ、明るい希望を失ってはならない。成功した時こそ、感謝の心、謙虚な心を忘れてはならない。
・挫折続きのままならない人生。それでもひがまず、ひねくれず
・薩摩の尚武の気風。強く正しく美しく
・全従業員の幸福を目指す会社
・全社員が共感し、心から納得できる普遍的な価値観に根ざした経営理念
・常識をかなぐり捨て、限界を超えた努力を傾ける
・一緒に涙し、ともに笑う会社
・会社はパートナーである全従業員のためのもの
・コンパは教育の場でもある
・人間、能力は無限だ。なんとしてもやり遂げるという強烈な願望
・アメリカ流も日本流もない、人間流でいけばいい
・経営者は常にフェアでなければいけない。業績が悪くなった時もフェアでいられるか
・労使は共に運命を切り開き、同じ考えのもとに喜びも悲しみも分かち合う厳しい労使同軸の関係
・自分の能力を進行形でとらえ、常に進歩していると信じる
・災難に遭うのは過去につくった業が消える時。業が消えるのを喜ぶべき
・人間には勢いがある。そういう時は人助けもできる
・M&Aは相手企業のトップの人間性や社風を見極めて決断
・科学技術と精神面の両者がバランスよく発展してこそ人類の未来がある
・仲間の心を奮い立たせるような高邁な志
・国際的な秩序づくりとその運営に積極的に参画していける日本の外交政策
・日本の官僚は個々は優秀だが、自己過信と組織防衛が目に余る。過ちを認めない
・官僚組織は自己変革機能を失い、急速に変化を続ける現代社会から取り残された
・国は21世紀における難問に立ち向かうための能力を若者達に与えるという義務を怠っている
・企業経営はトップが持つ哲学、理念によって大きく左右される。トップの器が大きくなれば、会社も自然と発展する
・情けは人のためならず。善の循環。
・世のため、人のために尽くすことが人間として最高の行為
・善きことを思い、善きことを実践すれば、善き結果を招く
・善きことを実践するには利己の心を捨て、心を磨き、美しくしていかなければいけない
・使命感(ミッション)、情熱(パッション)、思想(フィロソフィー)。使命感は夢、情熱は志、思想は現状に対する憤り。
創業者の夢と志と憤りの絶えざる燃焼。
-目次-
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