読書メモ

・「原稿用紙10枚を書く力
(齋藤孝:著、大和書房 \1,200) : 2006.09.09

内容と感想:
 
話す力」では人を10分ひきつけるだけの”話す力”を付けようというのがテーマであった。 本書は”書く力”である。私がこうやって読書メモを書くようになったのは、特に誰かに読んでもらいたいと考えたわけではなく、 ただ読みっぱなしでは勿体無い、書いて残せば後で何かの役には立つだろう、くらいなノリで書き始めたのがきっかけである。 いざ始めてみると続くもので、読書自体が好きだから、習慣化して読み・書きしないと具合が悪くなりそうで、 半ば中毒化している。しかしこれらのメモが他人の鑑賞に耐えうるものかどうかは疑わしい。はっきり言って読むに耐えないものばかりだろう。
 さて原稿用紙10枚を書くのはなかなか大変だと思われる。それだけの量を書けるテーマがあればなんとかなるかも知れない。 このメモだってとても10枚には及ばない。10枚書くにはそれなりの構成力が要求される。しかも他人が読むものであれば 内容に意味があり、書き手の考えがしっかり伝えられなければちゃんとした文章とは言えない。 本書では書くための技法やトレーニングについて解説すると同時に、意味のある、そして新たな価値を意味や価値を生み出す文章を書くための 考え方、思考力についても重点を置いている。
 キーワードは引用、3つのキーコンセプト、レジュメ、図化、立ち位置、など。 論文、レポート、企画書などを書くのが仕事であれば、日々、同僚や上司のレビューに晒されて鍛えられていくのかも知れないが、 なんの訓練も補助もなしではよい文章は書けないであろう。まともにレビューすら出来ないに違いない。 本書には特にビジネス文書に対して、具体的なノウハウは書かれていないが、文章を書くための基本が分かるだろう。 またどうしたらオリジナリティを文章に出せるか、という点で思考方法にもヒントを与えてくれる。

○印象的な言葉
・書く力をつけることで読書力がつくだけでなく、考える力もつく
・文章の質は書き手の総合力にかかる
・たくさん書けそうなテーマで練習し、量的な不安をなくす
・尺取虫方式:何かを引用し、それにコメントする
・どうやって書いたのか想像しながら読む
・翻訳もアレンジ
・話すことと、書くことは全く違った行為
・書き言葉の定着力、文字の永続性
・話し言葉は何万年も前からあるが、文字が定着したのはせいぜい数千年
・自分と正面から向き合って人は初めて文章を書ける
・引用文の文脈と自分の文脈がクロスし、そこに別の意味が生じ、オリジナリティが生まれる
・頭の中でつながっていなかったものがつながる面白さ、気付きの喜び
・まず小さい絵をたくさん描いて、それらを結合していく
・キーフレーズは思考の凝縮
・項目立てて構築した時点で書く作業の半分は終わっている
・書くことはエネルギーを溜める。考えを溜めて、自分の内圧を高める

-目次-
プロローグ 書くことはスポーツだ
第1章 書くことは考える力を鍛える
 1 書く前に考える
 2 思考力を鍛える
 3 書くことは価値の創造だ
第2章 「書く力」とは構築力である
 1 「引用力」をつける
 2 「レジュメ力」をつける
 3 文章は「3の法則」で構築する
 ・トレーニングメニュー 映画の活用
第3章 「文体」を身につける
 1 文体が文章に生命力を与える
 2 文体は立ち位置で決まる
 3 オリジナルな文章を書く
 ・トレーニングメニュー 日記の活用