読書メモ
・「人を10分ひきつける話す力」
(齋藤孝:著、大和書房 \1,200) : 2006.07.09
内容と感想:
本書はプレゼンなどで人前で10分くらい話す力を身に付けよう、というのが目的である。
日常会話のような少人数で”話す”のではなく、メッセージを多人数に向けて発信する点にフォーカスしている。
3分間スピーチなどでは時間が短いから聞くほうが我慢できるため何とかなっていることが多い。
しかし10分も聞き手を飽きさせずに、引き付けて聞かせることは難しい。
そういう私も人前で話すのは苦手で、出来れば避けたいくらい。しかし業務上、そうは言っていられないこともある。
なんとか喋ってみても納得いくことはなく、余計に自信がなくなっていく。
本書ではどういう話が人を引き付けるか、どうしたら聞き手を引き付ける話が出来るか、そのトレーニング方法を説明している。
簡単に言ってしまえば、きちんとした内容の話を、しっかりとした視線で、張りのある声で、緩急をつけてテンポよく話し、
視線を巡らしながら場の雰囲気を感知して冷静に対処できなければいけない。人間としての総合力が要求されるのだ。
著者が指摘するように日本では学校教育で話すという最も基本的な行為について教育もされていなかった。
「話す・聞く」は当たり前にできるとして「読み・書き」よりも軽視してきたのだ。
なるほど世界でも日本人が自己表現が苦手だというのも理解できる。
講演会などでお金が取れる話をするためには本書で取り上げたトレーニングは役立つだろう。
これくらいやっていないで聴衆から公演料を取るとしたら詐欺だ。
永六輔、古今亭志ん朝、小林秀雄、宮崎駿らの公演やキング牧師の演説などの例も挙げていてイメージしやすい。
○印象的な言葉
・単に場数をこなすだけでは話慣れするだけで本当の話す力は付かない
・つまらない話は他人の時間を奪うこと
・中心メッセージを最初に言い、話の中でも繰り返し、最後にもう一度言う
・聞き手が映像化して理解できると定着する
・”つかみ”で意表を突く。聞き手が既に知っている世界に訴える。共通の基盤を作る。
・面白い話にはオチ、教養、笑い、飛躍、ネタが大事
・タイトルには時間をかける。仮設的な問いかけや、角度のついた、具体的なイメージのもの。奇をてらう。切れ味のよさ
・普通の人が言いそうなことからちょっとずらす。逆説的に
・つながりそうもない3つのキーワードをつなげてみる
・かなりの人たちは相手の話の嘘臭さを嗅ぎ分けることができる。誠実に話すほうが信頼できる感じになる
・話に意味があるか、人に発見や気付きをもたらしているかチェックする
・自分の言葉で説明する、子供にも分かるように話す
・うまいスピーチは見応えのある一人芝居のようで、聞き手との無言のやりとりがある
-目次-
第1章 「話す力」とは知情意体だ
1 意味の含有率を意識しよう
2 人をひきつける話とは
3 話す力の基本は対話力だ
第2章 人をひきつける話をしよう
1 ネタ主義―話す前の準備
2 テーマ主義―何を話すか
3 ライブ主義―話す現場で何をやるか
第3章 話すトレーニング
1 話す力がつく基本トレーニング
2 話す力がつく応用トレーニング
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