読書メモ

・「日本の技、日本の匠
(情報処理推進機構:編、アスキー \1,238) : 2006.01.09

内容と感想:
 
情報処理推進機構というよりIPAと書いてもらったほうが私にはピンとくる。 IPAは独立行政法人で、日本のソフトウエア産業の発展のための支援を行っている。以下の3つの活動の柱としている:
・ソフトウエア開発支援
・情報システムのセキュリティ対策事業
・人材育成
 巻頭でIPA理事長が語るように日本のソフトウエアの競争力(特に輸出競争力)は弱いと言われる。 ソフトウエアは社会のインフラとして認知されてきているし、産業規模自体は決して小さいわけではない。 このままでは日本のソフトウエア産業は衰退に向かう、との指摘もある(「ソフトウエア最前線」)。 そういった環境で、IPAが具体的にどんな活動をしているかをドキュメンタリータッチで記したのが本書。
 創造的なソフトウエアの作者を発掘、支援する「未踏ソフトウエア創造事業」とPM(プロジェクトマネージャ)制度や、 事業化の推進や経営を支援する「中小ITベンチャー支援事業」、戦略的情報化投資活性化支援事業(ITSSP)、 ITのスキルやキャリア向上に役立てるITスキル標準(ITSS)、IPAが認証機関を努める「ITセキュリティ評価・認証制度」(JISEC)などが 関わった11のプロジェクトが紹介されている。
 個人的には策定が進められているETSS(組込み技術スキル標準)のベースにもなったITSSの導入事例に興味があった。 また、日頃愛用している「紙」というソフトウエアが取り上げられていたのも意外で興味深かった。
 個人情報保護法施行などでよりセキュリティの重要性が叫ばれている今、「ITセキュリティ評価・認証制度」は情報機器を開発している企業は押さえておかないといけないだろう。 これは「ISO/IEC15408」として国際規格となっている。 本書ではシャープとキャノンの認証取得の取り組みが取り上げられている。

○ポイント
・ビジョンとテクノロジーしかなくてもIPAが資金を支援してくれる
・ベンチャー企業成功の秘訣:やりたいことからブレない、信頼できるコアメンバーと分担できる体制
・IPAの後ろ盾で市場と金融機関に対してのブランドが活かせる
・ITSSは使い込んでいくことが大切。ITSSはスキルを可視化できる。
・ファイザー社ではITSSを人材育成とアウトソースの調達に活用している
・急成長した(コンピュータ)ビジネスの多くは独創的な開発者が少人数で作り上げた
・ソフト業界には、未開の新天地が広がっているという雰囲気がなくなってきてしまった?
・ITSSPでのITコーディネーター派遣費用は無料

-目次-
第1部 創造
第2部 安心
第3部 競争力