読書メモ

・「ヒルズではたらく社員の告白 ―ネット企業って、実際どうよ?
(洋泉社MOOK \1,000) : 2006.05.28

内容と感想:
 
題名は「渋谷ではたらく社長の告白」(藤田 晋:著)のパクリだが、ヒルズといえば六本木ヒルズ。 その六本木ヒルズは楽天、ライブドア、など所謂、ネット企業が入っていることで有名なビル。 そんなネット企業で働く社員、元社員の声を聞いたムック本。野次馬的な気持ちで、つい読んでみたくなった。
 勤務状況や給与、査定方法など内部事情に興味のある者にはそれなりに面白いかも。 しかしここに書かれていることが全ての人の意見ではない。
 成長スピードに人事制度や作業環境などの整備が追いつかず、花形と言われる裏では現場はドタバタしているようだ。 それも仕方がないだろう。最初から全て準備できるはずはないのだから。そのため人材育成や福利厚生などは二の次になる。
 ライブドア・ショックで一時のネット企業の勢いは失速した感があるが、その成長性へ期待から 企業も門を叩く人も多い。その一方で、定着率が低いとも聞く。 会社が成長が期待されているだけに、売り上げ至上主義に走りがちであり、 しっかりとした目的がなく名前や雰囲気だけで入社すれば、過酷な労働条件でいいように使われるだけだ。
 全体としては暴露話でこんな世界もあるんだな、という程度だが、最終章だけは考えさせられるものがあった。 アマゾンの物流センターで働く若者のアルバイトの実態がレポートされているが、日本社会の縮図を見せられているようである。 コンピュータに監視され働きアリのように働くことだけを求められるバイト。能力向上や賃金上昇の機会はないという。 そんな職場では希望を持てない。最近、”格差社会”が問題視されているが、これも”希望格差”という問題だ。 絶望感で心が荒んでいく。これが日本社会を不安定にしていく一因となるという。資本主義の悪い一面である。 ネット企業だろうが、花形企業だろうが、人を大事にしない会社は長くは続かないだろう。 そして希望が持てない社会ではますます少子化が進み、国力は衰えていくだろう。我々はどうすべきなのだろうか?

-目次-
file.01 現場観察記
file.02 ネット企業社員の実態
file.03 社員のサバイバル術
file.04 M&Aを経験した社員たち
file.05 ネット企業社員に直撃
file.06 ネット企業社員との対談
file.07 起業を選んだ人たち
file.08 株式公開目前での失敗
file.09 ネット企業列伝
file.10 企業選択の基準
file.11 ネット企業元社員の告白
file.12 巨大ネット書店を支える現場ルポ