読書メモ

・「グーグル 〜Google 既存のビジネスを破壊する
(佐々木 俊尚:著、文春新書  \760) : 2006.08.14

内容と感想:
 
先に読んだ「ウェブ進化論」より少し後に出された本。 本書ではグーグル(Google)という企業の本質を明らかにし、その脅威の技術力とそれがビジネスや社会に及ぼす影響について述べている。
 今や仕事や趣味でもグーグルは欠かせなくなってきている。何かちょっとしたことを調べるにもネットの検索エンジンは便利である。 そのグーグル社は約2年前に株式公開したが、その時価総額はアメリカのハイテク業界ではマイクロソフトに次ぐ第二位にまでになっている。 それだけ成長期待も大きいのだが、そのビジネスの拡大のスピードにも驚かされる。
 既存のビジネス側から見れば、グーグルにビジネスを脅かされるとしたら脅威に写る。 また、もし検索エンジンがグーグルただ一つ(独占)になってしまったとしたら、そこでヒットしないWebページは世の中に存在しないものと同じとなる。 グーグルという一企業が意図的に(あるいは権力の圧力により)検索結果を操作させられたとしたら、サイト運営者としては困ったことになる。 更に、グーグルはネット広告での利益を元手にあらゆる無料サービスを展開している。 メールやブログなどの情報は全てグーグルが管理してくれ、グーグルの検索技術を活かすことで検索も容易になり便利である。 そういう情報保存のための領域はすべてグーグル側で用意されているから、ユーザ側では管理不要となる。 自分のPCがなくてもインターネットが使えれば、どこでも情報が取り出せ、発信も出来る。 これを「ウェブ進化論」では「あちら側」のシステムと表現していた。あちら側に全て情報があるということは 便利な反面、グーグルに対してはプライバシーがないも同然で、悪意の目で見れば何をされるか分からないという恐怖もある。 (検索語を分析してその人の性向を調べたり、権力へメールそのものの検閲を許すかも知れない)
 本書ではそういった「グーグル脅威論」的な論調の一方で、グーグルを活用することで地方零細企業の再生や世界の貧しい国や人々の 所得拡大にも貢献する、といった好意的な論調も見られる(ロングテール現象)。 その具体例として羽田の民間駐車場や福井のメッキ工場を取り上げて分かりやすく説明している。
 マイクロソフトがPCのOSを独占したように、一企業が市場を独占するような事態になればグーグルも同じように脅威の的になるだろう。 かと言って、マイクロソフトが解体されることも国有化されることもなかった。 今やグーグルはマイクロソフトのビジネスをも脅かそうとしているから(オフィスソフト製品を無料で提供しようとしているらしい)、 栄枯盛衰、グーグルだっていつ別の新しいビジネスモデルに取って替わられないとも限らない。 当分の間、グーグルのビジネスからは目が離すことが出来ない。

○印象的な言葉
・グーグルは情報のハブ(中心地)となり、情報空間を支配する司祭となるだろう
・「グーグルニュース」では利益を出していない。バナー広告すらない。
・無料無線インターネット接続サービス「グーグルネット」はたくさんある無線中継器を介してユーザの位置まで把握できる。TPOに合わせて最適なサービスが 得られると期待される半面、常に監視されているとも言える
・テレビCMはある分野では(広告効果として)あまり効かないらしい
・キーワード広告:現オーバーチュアの発明。キーワードに大きな価値があることを発見した検索結果に広告を入れる仕組み。
・グーグルの技術の根幹は、(コンピュータの)クラスタリングとページランキング
・パレートの法則(80:20の法則)はもともとは19世紀のイギリスの所得分布調査から発見された
・グーグルも設立当初は検索エンジンなんか儲からないと言われた。現在の収益構造から見れば広告代理店。ありとあらゆるメディア、コンテンツに広告を載せるのが狙い。 いずれグーグルはメディアになる。
・個人も容易に情報発信できるようになり世界はフラットになりつつある
・グーグルを世に出すきっかけとなったのはヤフー。グーグルとビジネスが競合するに至って契約を解消している。
・これからはアテンション(人々に注意喚起し、注目を集める)が大事。アテンションはテレビからネットにシフトしている。
・グーグルは(今やインフラを提供しているとも言え)公共サービスに近い立場にあるのではないか

-目次-
第1章 世界を震撼させた「破壊戦略」すべてを破壊していく
第2章 小さな駐車場の「サーチエコノミー」すべてを凌駕していく
第3章 一本の針を探す「キーワード広告」すべてを再生していく
第4章 メッキ工場が見つけた「ロングテール」すべてを発信していく
第5章 最大の価値基準となる「アテンション」すべてを選別していく
第6章 ネット社会に出現した「巨大な権力」すべてを支配していく