読書メモ
・「ウェブ進化論 〜本当の大変化はこれから始まる」
(梅田 望夫:著、ちくま新書 \740) : 2006.08.13
内容と感想:
最近、「Web2.0」という言葉が使われるようになり、本書やその著者が紹介されることも多いようだ。
ウェブの世界は技術の進化とともに日々、発展しているが、ではどこまでウェブは進化し、今後どうなっていくのか、
という興味をもちながら読んだ。
Google、Amazon、WikiPedia、ブログ、SNSなど企業や新しいサービスなども取り上げて現状を分析している。
特にGoogleには一章を割いて取り上げており、その存在や可能性の大きさを再認識させられるだろう。
事実、私も第2章は興味深く読ませてもらった。Googleは便利だと思って使っていても、これまでその本当の凄さを認識していないことを思い知らされた。
例えば「ロングテール現象」という言葉も始めて知ったし、その概念がアドセンスという検索結果に連動した広告システムに応用され、
Googleのビジネスモデルを支えていること、そのシステムを通じてバーチャルな経済圏がネット上に作られていることもだ。
さて、世界の様々な主義・主張、思想や宗教をもつ人々が、低コストでインターネットを利用できるようになることで、
別の異なる考え方にも触れることが出来るようになり、互いにその違いを理解、尊重するようになれば、
各地で起きている対立もなくなっていくのではないだろうか?(時間はかかるかも知れないが)
そういう意味ではグーグルも世界人類へ貢献している企業といえる。
この本を読んでいて思い出したことがあった。かつてあるサイトが公開しているデータベースの情報にアクセスして、自動的に必要なデータだけを
抽出して整理・加工して表示させるという、フリーウエアを作成し、ネットで公開したことがあった。
しばらくするとそのサイトからクレームが来た。きっとそのソフトが多くの人に利用されることで同サイトへのアクセスが急増して、
システムが耐えられなくなったか、そのソフトに似た有料サービスも同サイトは提供しているから脅威をもったのか、・・?
面倒くさくなって私は同サイトと喧嘩することは止めて、ソフトの開発も中止したのだ。
グーグルのビジネスを頭に置いて、この一件を考えると、同サイトももっと工夫をして、DBを活かした新たなビジネスを
展開できるのではないかと思ってしまう。もっとユーザの意見を取り込むことで、思いもしなかったような新しい活用方法を見出せるのではないか、
と今更ながら考えてしまった。
○印象的な言葉
・チープ革命がもたらす総表現社会の出現により既存メディアの権威が揺らぎ始めた
・アメリカはネット社会という巨大な混沌に真正面から対峙し、そこをフロンティアと見定めて新しい秩序を作り出そうと試みている
・スケーラブル・アーキテクチャ:シンプルに部品を増やしていけばよい設計。グーグルが採用している。増え続ける情報に即対応。コンピュータの数は2006年末で30万台らしい。
・グーグルは「優秀な人間が泥仕事を厭わず自分で手を動かす」文化
・小さな組織ユニットをたくさん作り、個々がスピード最重視で動き、結果として組織内で激しい競争を引き起こす
・グーグルでは既存プロジェクトに80%、オリジナルの仕事に20%の時間を割く
・存在が誰かに知られることに価値を見出す。書けば誰かにメッセージは届く
・社会現象としてのブログ:世の中には途方もない数のこれまで言葉を発信してこなかった面白い人たちがいる
・アメリカでは実名でブログを書く人が多い。自己主張の強さ、人と違うことをする。一方、日本の専門家は恐ろしく物知りだがアウトプットが少ない
・(ブログを書くことで)己の能力と生き様がそのままプレゼンテーションの装置として機能する
・不特定多数無限大の良質な部分にテクノロジーを組み合わせることで、混沌をいい方向へ変えていけるはず
・ITやネットにより誰もやっていない新しい世界の存在を探すことも容易になった
・異質なもの同士の組み合わせで無限の可能性
・年齢を重ねることでモノが見えるようになった。反面、未経験なことをネガティブに判断するようになっていないか?それを「老い」というのか?
・シリコンバレーにあって日本にないもの「オプティミズム(楽天主義)に支えられたビジョン」
-目次-
序章 ウェブ社会 ―本当の大変化はこれから始まる
第1章 「革命」であることの真の意味
第2章 グーグル ―知の世界を再編成する
第3章 ロングテールとWeb2.0
第4章 ブログと総表現社会
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第6章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
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