読書メモ
・「新たなる「挑戦」―夢をカタチにする時」
(渡邉 美樹:著、ソフトバンクビジネス \1,400) : 2006.08.20
内容と感想:
ワタミ社長である著者は、居食屋(居酒屋ではない)とう業態の「和民」を初め多くのスタイルの店舗を展開中の外食業界の風雲児である。
先日読んだ「渡邉美樹の夢に日付を!」では、氏が只者ではない経営者であることを再確認した。
本書では主力の外食以外のビジネスに新たな挑戦を始めたきっかけや、現在の状況などが書かれている。
うがった見方をすれば、厳しい外食産業の環境において、今後のビジネス展開を株主や投資家にアピールする狙いで書かれたのかも知れない。
このご時世ではどちらかというと経営の多角化はマイナスに見られ勝ちである。リスクの方が大きい。
しかし、農業・環境・教育・医療・介護ビジネスが単にトレンドである、大きなビジネスチャンスになるから、
というのが参入理由ではないことが読み取れる。当然、企業は利益を追求しなければならない立場だが、
それよりもこの国の将来への危機感から「誰かがやらねば」という気持ちから、これらの事業に取り組み始めたと言っている。
ビジネスとしてやっていくからには、大きな儲けにならなくても利益は出していく必要がある。
本書で明らかにされた事業拡大には、これまでの外食で培った経営ノウハウが活かせると著者は考えている。
また、学校経営や病院経営へは株式会社が実質、参入できないことになっており、それらには著者個人の事業として参画しているそうだ。
この参入障壁ゆえに新たに学校経営や病院経営を始めるのは難しいのだが、実際には経験難に陥っていた学校、病院を氏が引き継ぎ、
負債などもポケットマネーで肩代わりしているそうである。
そもそも経験難に陥る学校、病院には経営という視点が欠けていたらしい。
教師も医師もある意味、職人であり、経営を学んだこともなければ、経営感覚にも乏しいのだ。いつ潰れてもおかしくないのだ。
既に日本は少子高齢社会。学校や病院は淘汰が進むだろう。
既存のビジネスへの参入ということもあり競合は確かにあるが、それらとの差別化をどう図っていくか、という点について、
それは人材だと言い切る。社員の人材育成にも取り組んでおり、ここにも外食のノウハウが差別化となると考えているようだ。
私がワタミの株主だとしたら、それぞれの新事業はまだニーズもあり、また新規・既存の事業との間で、それぞれ相乗効果を出せると考える。
グループ内で人材やノウハウを回せるかも知れないし、有機野菜栽培もうまく軌道に乗れば、
各事業で使う食材においてもスケールメリットでコストも抑えられるし、いいことばかりなのではないだろうか。
氏にはまだまだ頑張ってもらわねばならない。
○印象的な言葉
・ニートは憲法違反。国民の三大義務の一つである「勤労の義務」を果たしていない
・人間の命は水の分子のようなもの。水の流れた距離、川の長さが人生の長さ
・出会い、ふれあい、安らぎ
・(企業の)存在対効果(費用対効果にひっかけて)
・日本の食糧自給率は40%。高齢化で農業の担い手も減少
・農業は規模がものを言う。科学的な管理・経営手法が必要
・2002年時点で65歳以上の高齢者1人を3人の働き手が支える。2020年には2人で支えなければならなくなる。
・国民年金は4割の人が保険料を納めていない
・あたたかな、やわらかな風が吹く地球に
-目次-
第1章 外食産業の会社から「外食産業もやる会社」へ
第2章 「農業」への挑戦
第3章 「環境」への挑戦
第4章 「教育」への挑戦
第5章 「医療・介護」への挑戦
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