読書メモ

・「天才の読み方 〜究極の元気術
(齋藤孝:著、大和書房 \1,300) : 2004.04.29

内容と感想:
 ”天才”と呼ばれる人物は世界で過去にも現在にも存在する。それは我々の憧れの的でもある。所謂、”天才”と”秀才”を比べるとその憧れの度合いは大きな差があるだろう。しかし著者は一般に思われている”天才”を、持って生まれた才能だけで何の苦労もせず成功した人とは見なさず、「上達の達人」と定義し、彼(女)らが明確な仕事のスタイル、確固たる生き方のスタイルをもっており、常に時代を先取りしていると捉えている。
 本書では日本人・外国人、故人・現役の異なる分野の天才の中からピカソ、宮沢賢治、シャネル、イチローの4人を取り上げて、それぞれの”天才”の天才たる所以を探っている。”天才”から凡人の我々にも学ぶことが多い。各章の最後にまとめとして「天才に学ぶ元気術」が列挙され、上達のコツ、天才に近づくためのヒントが示されている。

-目次-
第一章 天才のエネルギーの秘密 - ピカソ
第二章 身体感覚を技にする - 宮沢賢治
第三章 新しいスタイルの創造 - シャネル
第四章 真の天才は量をこなす - イチロー

 4人に共通して言えるのは皆、自分のエネルギー、パワーの使い方が上手いこと。特に集中力が凄く、それが長く維持できる。常にチャレンジし続けていること。ゼロから作り上げたものではなく、先人や仲間たちから何らかの影響を受けながらもアレンジし、自分のスタイルを作り上げていること。などが挙げられるだろう。
 第一章の「エネルギーは使えば使うほど、湧いてくる」というのは印象に残る言葉だ。エネルギーの使い方にもよるが、この場合は、ピカソのようにエネルギーのよい循環ができている状態を指している。自分のエネルギーを好循環に向かわせることができれば、きっとよい仕事を成し遂げられるだろうことは理解できるが、自分の現実を見ると全く逆なのを思い知らされる。やはりエネルギーのベクトルを誤っているのだろう。エネルギーの悪循環は自分を悪戯に消耗させるだけだ。現実のシガラミから上手く逃れる方法を教えて欲しいもの。やりたいことだけをやって食っていけるなら、エネルギーは好循環しそうなのだが・・。そこに至るにはやはり、こうありたいと明確にイメージし、そこへ向けた日頃の努力が必要だろう。
 勿論、イチローは最も身近に感じられる天才であり、その天才ぶりはご存知の通りであるが、シャネルという名前はファッション・ブランドという知識しかなかったので勉強になった(女性であることも初めて知った)。ファッション界にあって、ファッションに芸術性を持たせながらも、お金が取れる物作りをしている点は現実的であり、天才のイメージとはやや異なるが、そのレベルが高いため著者は彼女の天才性を認めているのだろう(残念ながらファッション界には疎いのでシャネルの好さはよく分からない)。

更新日: 04/05/09