読書メモ
・「心療内科からの47の物語」
(中井吉英:著、\1,143、オフィスエム) : 2004.02.14
内容と感想:
心療内科医の著者が診療室での長年に渡って繰り返された患者との出会いを綴った短編集。そこでは「人生の四季」が繰り返されて来た。患者は老若男女を問わない。人生の春を子供の期間に喩え、人間の成長と老いに従い、夏・秋・冬と季節は移り変わって行く。
心療内科医は体だけではなく心も診る。心の問題が原因で肉体を悪くしたり、その逆もある。心と体は切り離して考えられなくなってきた。著者が診療の中で発見したこと、学んだこと、患者から教わったこと、などなど。著者自身も人生の四季を通して、悩み苦しみ成長してきたのだ。
-目次-
春の章 子どもたちの内面の世界
夏の章 青年期の夢と挫折
秋の章 人生のターニングポイント
冬の章 「老い」の価値、「死」の意味
著者は言う、「現在のゆがんだ不健康な社会や環境、学校制度に」適応している子供が心配である。こういうのを過剰適応というらしい。無理して適応しようとするために表向きは普通だが、内面に歪みが生じてくる。最近は子供の時期からストレスを抱えている。私の子供の頃は自分でストレスを意識したことはなかった(概念を知らなかったとしても)。適応できずに不登校になったり、反発したり、非行に走る方が子供として実は正常なのではないかとも思えてくる。
そろそろ私も夏から秋へと向かおうとしている。「成長の終りと老化の始まりとの境界」で高まる不安があるという。人生の四季それぞれに人は悩み、苦しむのだろう。
本書を読んむだけで治っていく人もいるという。この本には確かに癒しの力があるように感じる。凄くエネルギーや勇気が沸いて来るといった力強さではなく、何かじわじわと効いてくる感じ。かといってほのぼのともしないし、どちらかといえば現在の日本の状況に薄ら寒さすら感じてしまい、決して読後感は爽快とは言えない。昔は心療内科医なんて不要な時代だったのだ。昔はストレスがなかったとは言わない。心療内科医の代わりをする存在が何かしらあったのだろう。
更新日: 04/02/14
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