読書メモ
・「プログラマーの復権 〜情報ビジネスの展望」
(Edward Yourdon:著、松原友夫:訳、シイエム・シイ \2,800) :
2004.05.02
内容と感想:
原著「Rise & Resurrection of the American Programmer」は1996年に書かれている。本書は翌年にはその翻訳として出版されている。本書でいうプログラマーとは狭意での職種を示すそれではなく、より広意でソフトウエアに関わる業界の人々を示している。著者はこれよりも前、1992年に米ソフトウエア産業の世界における暗澹たる競合状態を記した「Decline
and Fall of the American Programmer」(訳:アメリカのプログラマーの没落)を書いた。要は米国や西ヨーロッパ、日本など先進国のソフトウエア産業は開発途上国の給料の安い技術者との競合に晒されている状況を憂慮したものであったようだ。最近、経済新聞にもよく取り上げられるように、日本でもソフト開発をインドや中国といったよりコストが安い優秀な技術者を多く抱える会社に外注したりしている。同様なことは早くから米国でも起きており、雇用が海外に流出し失業率が上昇することを憂えて、議会でも議論になっている。価格競争では先進国は勝てない、ではどうすればよいか?というのが本書のテーマである。
1992年以降に起きてきた業界の新しい潮流などを踏まえて、特に米国のソフト産業界の展望を示している。これは日本を含む先進国のソフト産業界にも示唆を与えてくれる。著者が1990年代に米国のソフト産業の競合力を高めると信じた興味ある事実としては、本書でも取り上げている「ベスト・プラクティス」、「十分によいソフトウエア」、「インターネット」という概念が含まれている。インターネットについては2000年代に入った現在の状況を見れば語るまでもないだろう。世界で爆発的な発展を見せている。これらの他にもソフトウエア業界、特に開発現場においてよく聞かれるようになったピープルウエアや銀の弾丸、プロセス成熟度などの重要な概念も取り上げられている。いまだMicrosoft帝国の存在は大きく、その動向にも注意している。第12章の「埋め込み型システム」は日本では「組み込み型」のほうが一般的だろう。活字が多く、読み応えがある一冊。
-目次-
- 第1部 アメリカのプログラマーの没落の再検証
第1章 Decline and Fall を書いたときの前提
第2章 ピープルウエア
第3章 その他の銀の弾丸
- 第2部 ふたたびカウボーイ・プログラマーへの道を踏み固める
第4章 システム・ダイナミックス
第5章 個人のプロセス成熟度
第6章 ベスト・プラクティス
第7章 十分によいソフトウエア
- 第3部 素晴らしき新世界
第8章 サービス・システム
第9章 インターネット
第10章 Java 及び新インターネット・プログラミング・パラダイム
第11章 Microsoft パラダイム
第12章 埋め込み型システムとすばらしき新世界
第13章 過去,現在,そして将来
更新日: 04/05/09
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