読書メモ
・「Linuxの哲学」
(岩谷宏:著、\2,000、ソフトバンクパブリッシング) : 2004.03.27
内容と感想:
Linuxの名も随分、広まってきたと思うが、まだまだ一般化には程遠い。家電店に並ぶPCはWindows搭載機が当然で、WindowsというOSの存在すら意識しないで家電のごとく使うPCユーザが急拡大した。それもこれもインターネット、ブロードバンドの急激な普及が貢献(?)している。そんな状況で個人ユーザのデスクトップへLinuxが入り込む余地があるのか?という疑問をもつ人はまだまだ多いだろう。Red
HatやTurboのようにクライアントPC用OSとしてのビジネスにチャレンジした企業もあり、それなりの成果はあったが成功したとは言えない。しかし全くデスクトップとして使えないというのではない。一般人が店で買うPCの選択肢にLinux搭載機がないのだからユーザが拡大しないのは当然だ。Windowsから入ったユーザがLinuxに乗り換えようということになるまでには、よほどLinuxの優位性を説かないと無理だろう。啓蒙活動が必要だ。
本書はそういうLinuxの名前くらいは知っていて、ちょっと使ってみようか、という初心者を対象とした入門書である。とはいえ「すぐ使えるLinux!」「できるLinux!」的な内容ではない。題には哲学と冠されて小難しそうだが、哲学というよりはLinuxカーネルを含めた周辺世界の概念を理解してもらおうというのが目的である。著者が体験的に学んだことをまとめたガイドブック的な内容になっている。Windowsユーザのような表層的な使用だけではつまらないので、Linuxの舞台裏まで覗いてみたいというユーザ向けである。
-目次-
第1章 なぜ今Linuxか?
第2章 インストール達人への道
第3章 あなたのLinuxの基本形
第4章 Linuxの使い方
第5章 さて、とりあえず何をしようか?
第6章 Linuxのファイルシステム(1)
第7章 Linuxのファイルシステム(2)
第8章 シェル
第9章 プログラミング
第10章 そのほかの話題
最近はインストールが楽になったディストリビューションも多く出回っていて、初心者が最初で躓いて二度と触りたくない、というような悲劇も少なくなっているだろう。より使い易くするためのこういった無償の活動には本当に頭が下がる。
クライアント向けのものは、ほとんどWindowsやMacのようなユーザインターフェースをもち、メールやWebアクセス、Office製品のようなソフトもフリーであるし、Windowsをある程度使ったことがあれば、すんなり乗り換えられるはずである。
本書ではGUIではなく、CUIでコマンドを叩いたり、コンフィグを変更したり、システムの振る舞いを変えるような操作を分かりやすく説明してはいるが、よほどコンピュータに興味のある人間でなければ出来ればそんなことはしたくないだろう。であるから本書の対象読者は技術的興味のある人に限定されてしまう。ハッカー入門というところか?
あいかわらずWindowsのセキュリティ問題が日常的に報じられ、Microsoftバッシングも続いているが、文句を言いながらも使っているのが日本の大半のユーザだ。基本的に無料のLinuxだが「タダほど高いものはない」というように、価格以外の魅力を説かないとまだまだ日本での個人ユーザ向け市場は広がらないだろう。しかし今やネット社会。口コミの威力は凄い。いつ突然、Windowsボイコット運動が激化するかも知れない。Linuxやオープンソースという概念は世の中を変える力があると思われる。ただそれが広く理解されないだけだろう。地道な草の根的な布教活動が変えていくことだろう。
更新日: 04/03/27
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