読書メモ

・「理想の国語教科書
(齋藤孝:著、\1,238、文藝春秋) : 2004.02.19

内容と感想:
 
本書よりも先に同名の「理想の国語教科書」(赤版)を読んでいたのだが、本家というか元祖というか・・読んでみたくなって読んだ(だいぶ活字中毒気味だ)。編集方針・構成は前書とは変わらない。一学期から三学期までに分かれていて、日本人の作家だけでなく、外国の作家らの作品の翻訳も約半分ほど収められている(全文ではなく抜粋)。ゴッホの手紙や野口英世の母の手紙など文学以外からも名文がセレクトされている。「本格さ」「すごみ」のある文章を選んだ、というのが著者の言。
 また、各作品の本文の終りには「解説」が付けられている。本書を読んでいて思い出したのは子供の頃、学校で先生が使用している教科書が自分らのものとは異なることを発見したこと。本書における解説のようなものが本文以外の空間を埋めていて、先生の指導の補助をしていたことは間違いない。子供心に手品の種を見たような複雑な感じがした。
 これまでいくつか著者の本を好んで読んできた。一貫しているのは優れた文章に出会うことで日本語力だけでなく、教養や倫理観を鍛えられる、というコンセプト。子供の頃のこのトレーニングにより「他者に対する想像力を育て、感情を豊かにし、生きる勇気を鍛えてくれる」と言う。勿論、大人が読んでも十分楽しめる。
 藤原てい(新田次郎夫人)の「白い十字架」は13ページほどの短文であるが、思わず泣いてしまったほどインパクトがある。実話だけに力があった。
 氏の他の著作でもキーワードとなっている「感動」「あこがれ」「生の美意識」「まねる盗む技術」「技化」「身体の文化」等が解説文のあちらこちらに出てきて、だいぶん私の脳にも刷り込まれてきている。そういえば最近、名文や古来の日本語をテーマにした本が多くなったような気がするが、これも著者の功績か?。

更新日: 04/02/22