読書メモ

・「「哀しみ」を語りつぐ日本人
(山折哲雄、齋藤孝:著、\1,300、PHP研究所) : 2004.02.29

内容と感想:
 
哲学者・山折哲雄と今や売れっ子作家・齋藤孝との「日本的感情」をテーマにした対談集。本書ではその日本的感情の中でも「哀しみ」に焦点を当てている。二人は現在、日本的感情が衰退していっていることに危機感をもち、それを取り戻すためにどうすべきかを考えている。第一章では齋藤氏が喜怒哀楽に替わる新たな感情の分類方法として、「感情の三原色」(哀しみ、憧れ、張り)を提唱している。”憧れ”というのは齋藤氏の著書によく出てくる言葉である。面白いのは三原色を構成する感情を同時に液体、気体、固体のイメージに置き換えている点だ。

-目次-
第一章 「日本的感情」とは何か
第二章 日本人の感情の”ふるさと”
第三章 日本人が思い起こすべき「精神の形」とは何か

 対談は能や祭り、宗教、演歌にJ-POP、方言、呼吸法、などなど豊富な話題に溢れ、様々な問題提起をしている。
 日本人の感情の磨耗、枯渇に警告を投げかけると同時に、一青窈(ひととよう)や元ちとせの曲がヒットする土壌がまだ日本にあったことに安心感をもっている2人も、まだ日本人は捨てたものではないと当然確信していることであろう。
 先日も村上春樹と河合隼雄の対談集を読んだが、対談集のよさは、話し言葉で読みやすく、すっと頭に入ってくるところと、対談者が互いにお互いの個性を引き出して盛り上がっていく様子や、言葉を交わしながら自分の考えを再構成していく過程が傍で見ているように感じられることだと思った。

更新日: 04/03/02