読書メモ

・「村上春樹、河合隼雄に会いにいく
(村上春樹、河合隼雄:著、\438、新潮文庫) : 2004.02.27

内容と感想:
 
1995年11月に行われた対談を収めたもの。1995年という年はオウム事件と阪神の大地震があった。対談の中でもオウムに入信する若者の心理や震災にあった人々の心のケアなどが話題に上がっている。それぞれの世界での第一人者である2人の対談ということで非常に中身が濃く、ちょっと理解が難しい会話もあったりする。世代も違う二人だが意気投合ぶりが傍からでも楽しい。
 最近のマイブームは”河合隼雄”なのであるが、実はもっと若い頃は”村上春樹”だった。”春樹”を読めばお洒落な時代があったのだが、正直なところ私の中には今、何も残っていないのだ。きっと読解力がなかったか、上っ面だけを読んでいたに過ぎなかったからであろう。

第一夜 「物語」で人間はなにを癒すのか
第二夜 無意識を掘る”からだ”と”こころ”

 印象に残った点を挙げると、
・日本人には言語化することを嫌に思う人も多いし、どちらかというと不得意(河合)
・昔の若者は手軽に反抗する相手を見つけることが出来たが、いまはそれが難しい時代(同)
・翻訳を通して原作者の心の中や頭の中にはいっていく感じがする(村上)
・自分の中のメッセージを探すために小説を書いている(同)
・オウムに惹かれた若者は何か高度で洗練されたものを求めていたのではなく、逆に稚拙な物語を求めていた(同)
・フィクションは現実より弱い(同)
・自分の中にある暴力の意識化(河合)
・「文化の病」「時代の病」(同)

 村上氏は夢を見ないそうである。河合氏はそれは夢を別な形(小説)で出しているからだと言う。このやりとりも面白い。
 前書きで村上氏が河合氏をこう評している。「決して自分の考えで相手を動かそうとしない」。

更新日: 04/03/02