読書メモ
・「江戸300藩
最後の藩主 〜うちの殿さまは何をした?」
(八幡和郎:著、光文社新書 \850) : 2004.12.30
内容と感想:
2004年のNHK大河ドラマは「新撰組」だったが、私は興味がなかったから、ちらっとしか見ていない。もともと新撰組なんぞ幕府方の用心棒程度としか見ていなかったからだが、なぜそんなに新撰組が人気があるのか昔から理解できない。本書の「おわりに」でも著者が同様のことを書いているが、歴史小説や時代劇が正しい歴史だと思ったら大間違いなのである。本書では新撰組とも重なる時期、幕末をテーマにしている。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」やドラマ「新撰組」とは違った幕末史が当時の殿様たちを中心にして描かれている。
義務教育の日本史ではどうしても時間が足りずに、駆け足で読み流すだけになってしまったため、幕末から明治・大正・昭和は現在から近い歴史であるにもかかわらず、私も正しい歴史認識が不足している。誤解も多い。幕府独裁の江戸時代から急激に、いったいどうやって近代日本へ生まれ変われたのかという謎が少しは解けるだろう。
本書ではいろいろ新しい発見があった。江戸末期には日本全国に約300藩あったそうだが、それらのほとんどの藩主は江戸生まれの江戸育ちだとか、大名家は養子縁組などで多くが親戚どうしだとか、戊辰戦争で官軍に歯向かった藩への寛大な処分とか、藩主たちが華族と呼ばれるようになったときの「公・侯・伯・子・男」爵のランク付けの方法とか、・・。
結局、幕末にうまく時勢を読んで勝ち馬に乗った藩は官軍に付いて、戊辰戦争の後に報奨金をたくさん手にした。戦国期のような内戦状態は長く続かず、あっけなく終結した。それは内乱よりも黒船来航以来の外患への対抗が急務という意識が大勢を占めていたらしく、当時の殿様たちが正しい時代認識をもっていたことが国を救ったとも言える。下手をすれば日本も清国の末期のようになっていたのかも知れないのだから。
維新時点での各藩の藩主名や、維新に臨んで藩主がどういう態度をとったなどが書かれている。維新の主役・薩長以外のほとんどの藩はドラマ性に乏しいから、面白みには欠けるかも知れない。
-目次-
第一章 殿さまはどのような人たちか
第二章 幕末維新の読む年表
第三章 日和見主義の多数派が流れを決めた
第四章 情報不足が戊辰戦争の悲劇を生んだ
第五章 西南雄藩の行動原理
第六章 「錦の御旗」が宿す魔力の秘密
第七章 殿さまたちの明治・大正・昭和・平成
更新日: 05/01/04
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