読書メモ
・「新・SFハンドブック」
(早川書房編集部:編、 \740、ハヤカワ文庫SF) : 2002.08.23
内容と感想:
1990年刊行の「SFハンドブック」の全面改訂版。その1990年版の存在すら知らなかったが、書店をぶらっとしていると目に留まったのがこれ。盆休みの暇潰しに近年のSF界の情勢なんかを知っておくか、と軽い気持ちで購入。直前に読み終えた「ニューロマンサー」の影響も大いにあるが。SFの想像もできないほどの進化や転換を少しだけ期待して。
一昔前はSFの世界だけの話だったものが、近年現実のものになったりと、テクノロジーの世界は凄い勢いで進歩を続けている。そういう時代であるからSF作家もさぞ、創作には苦労されているのではないか?
最近は商売柄か、テクノロジーをビジネスの面でしか見られなくなっている。純粋な気持ちで、こんなことが出来たらいいな、とかこんなものが欲しい、とかいった夢見る心を失っている自分が寂しい。先が見えにくくなっている昨今、その日その日を生きていくのに汲々としていると、夢も見られなくなるのだろう。本書には何か奇想天外なニュー・テクノロジーの出現を期待すると同時に、将来実現可能かも知れない一歩先行くハイテクの種(ヒント)を得られないかという、不純な動機のリサーチとも考えていた。
SFといえば”ハヤカワ文庫”である。中学生時代はお世話になったが、すっかりご無沙汰であった。前書きによると1990年以降の10年でハヤカワ文庫は500点も発刊されているらしいから、バブル崩壊後、出版界も苦戦しているようだが、そういうご時世でもSF出版界もそれなりに頑張っているようだ。どうして中学以降、SFと疎遠になったのかを自分なりに分析してみると、それ以上に読みたいと思わせるものがあったのだろう(歴史物など)。中学卒業後は工学の道へ進んでいったから、決して科学やテクノロジーなどに興味がなくなったわけではない。今思えば、未来や架空の世界を描くはずのSFが次第に古めかしい物に思えてきたからかも知れない。これまで読んで来た本が悪かったのかも知れないが、現在もSFというジャンルそのものが古典的で保守的なものという印象が確かにある。
<目次>
・オールタイムベスト
・対談 ぼくたちは、こんなSFを読んできた
・編集部のおすすめ作品
・日本人作家が選ぶ文庫SF、マイ・ベスト5
・年代別SF史
・講座
・用語小事典
SF初心者にも興味が持てるようにと、どこからでも読める構成になっている。興味をもったところから適当に読んでいたが、結局全部読んでしまった。読後すぐに読みたくなったのは、古典よりも、80年代から90年代にかけて出されたもの。ダン・シモンズ著の「ハイペリオン」は本書の「オールタイムベスト」投票の6位で評価が高く、紹介記事を読んでもエンターテインメントとして楽しめそうだと感じた。
読後のSFへの印象は残念ながら大して変化はない。ハンドブック程度では心を揺さぶるのは難しい。SF的な娯楽は小説に止まらない。今後も映像(映画)、漫画・アニメ、TVゲームなどに消費者を奪われていくだろう。業界もきっと危機感を持っているとは思うが、これはSFに限ったことではないかも知れない。今後のSFに期待するものは、二番煎じではない、オリジナルの奇想天外さである。ヘビメタ、ハードロックのような様式美を重視するような物は読みたくない(たまにはいいかもしれないが)。娯楽が溢れるこの時代、小説でなければ表現できないような(映像表現が難しい)想像力豊かな作品が読みたい!
更新日: 02/08/23
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