読書メモ

・「ニューロマンサー
(William Gibson:著、黒丸尚:訳、 \800、ハヤカワ文庫SF) : 2002.08.23

内容と感想:
 
”Neuromancer”とはニューロ(神経)とロマンサー(夢想家)を組み合わせた造語らしい(最初はNew ロマンサーだとばかり思っていた)。その正体は第四部・21章で少年の姿で登場する。
 LinuxかOpen Sourceか何かの関連の本で本書の名前が出てきたのを覚えていて、購入したのは昨年のこと。しかし読み始める機会を失って、そのまま”積ん読”状態であった。
 盆休みで帰省中の実家で読み始めたが、読解力の不足か、想像力が希薄になったか、読み進めても何だかよく分からないのだ。どうやら主人公ケイスが最先端の手術を受けたりして、古い表現で言うところのサイボーグに近い(?)肉体であり、その肉体を電気的に電脳空間(サイバースペース)へ接続して、ハッキングらしいことを生業にしているらしいことは分かった(こういう人のことを電脳空間カウボーイというらしい。どうもイメージが違うような・・)。
 しかし一体、敵(犯罪者に敵も何もないか?)が何者なのか、最終的にケイスは雇い主の依頼を成し遂げたのか、よく分からなかった。もう1、2度読み直した方がよさそうだ。

 ヒューゴー賞(1985年)、ネビュラ賞(1984年)というSF界のビッグタイトルの受賞作品。筆者は80年代半ばに”サイバーパンク”SFというジャンルの旗手となったということである。
 インターネットの普及で、今でこそ当たり前になった感のある”サイバー”という言葉であるが、現在のインターネットは本書でいうところのサイバースペースにはまだ程遠い。今のインターネットはコンピュータをネットで接続しただけの分散型図書館のようなものに過ぎない(意志や人格?をもった電脳空間だけの”存在”も将来登場するのだろうか)。
 ケイスは電脳空間へ意識を没入(ジャックイン)することで、電脳世界を飛翔する。標的のシステムに侵入するために防御プログラムを破るなど、犯罪者ハッカーならではのテクニックを駆使。相棒の女性モリイは戦闘用の肉体改造を受けており、二人で物理的空間・電脳空間を行き来して目標へ迫る。このあたりの描写をみると映画「マトリックス」が真っ先に頭に浮かぶ(ちゃんと見たわけではないが。物語の筋もよくは知らない)。映画の方がずっと後の登場であるから、きっと本書の影響を受けているのだろう。
 これで主人公が正義の味方のハッカーで、勧善懲悪ものの話なら2つの賞も与えられなかっただろう。必ずしも正義の味方がヒーローではなくなっているこの時代。読者も新たなヒーロー像を見つけたのだろうか?

 著者は日本人ではないが、通貨は新円(New Yen)だし、千葉など日本の地名や、三菱や日立といった日本メーカーの名も登場し、親近感が沸くかも知れない。

更新日: 02/08/23