読書メモ
・「アメリカの巨大軍需産業」
(広瀬隆・著、 \800、集英社新書) : 2002.02.09
内容と感想:
目次
序章:不思議な国アメリカ
第一章:ペンタゴン受注軍需産業のランキング
第二章:軍閥のホワイトハウス・コネクション
第三章:日本の防衛産業を育てた太平洋戦略
第四章:二十世紀戦争百年史
第五章:CIAとFBIと諜報組織の成り立ち
第六章:NASAと宇宙衛星産業
アメリカが世界の警察として、冷戦後も世界のどこかで戦力を展開させている。直近ではアフガニスタンへの派兵。北部同盟を支援し、イギリス軍と共同でタリバン政権を崩壊させた。現在は暫定行政機構が復興に向けて動き出したところ。それでも中央アジアには未だ米軍が腰を据えたままだ。
アフガン攻撃を開始してから、ブッシュ大統領の支持率は高騰。アメリカがその戦力を展開させるたびに起きる現象。確かに今回はテロとはいえ、アメリカ本土が攻撃された特殊な状況であるとしても、常々こういうことが起きるたびに、予め仕組まれたことに過ぎないと思えてしようがなかった。常に緊張状態を維持していないと生きていけない国なのだ。その裏で暗躍するのが”死の商人”たちだ。きれいな言葉で言えば軍需産業ということになる。
つい最近のブッシュ大統領の一般教書演説で改めて知らされたのが、アメリカの国防予算の膨大さである。約30兆円という額は異常である。日本が5兆円をわずかに下回るのに比べれば、6倍にもなる。その巨大ビジネスの甘い蜜に多くの輩が群がるのは当然である。営利企業として、またそこで働く人の雇用を考えれば、政府高官と癒着して、毎年一定の予算を確保したいと思うのも分からないでもない。しかし、そのためにCIAの工作員を世界中で暗躍させ、絶えず紛争の火種を撒いて、危機を煽っているのではと思われてもしょうがないだろう。
アメリカに対するその漠然としたイメージが、本書を読むとなお強くなる。先に読んだ同じ著者の「アメリカの経済支配者たち」もそうだが、一部の金持ちがその財産を守るため、拡大するために手段を選ばないことは確かなようだ。彼らだけの手でアメリカが支配されていると考えるのは短絡的だが、少なくとも裏でいくらかの力を発揮させているのは間違いないだろう。そういう矛盾した現状をほとんどの人間は薄々は感じているはずであるが、それが大きな世論として、国防予算の大幅削減や戦力の削減にまでには繋がっていないようである。軍需産業に関わっている多くの人々は自分らが作ったミサイルが外国の見知らぬ人々の命を今も奪い続けていることに、良心の呵責に苦しむことはないのだろうか。非常に疑問である。
また、先の演説でブッシュはイラン、イラク、北朝鮮を”悪の枢軸”と敵意を露わにし、危険な香りがまた漂い始めた。当分、アメリカはその独善性を批判されながらも、それを維持していくようである。問題はそれだけではない。アメリカだけの問題なら勝手だが、日本も高額の戦闘機や艦船を購入させられている。自衛隊は米軍の後方支援として完全に取り込まれてしまっているのが事実である。国に望むのはアメリカ追随の外交だけは止めて欲しい、ということだ。経済状況がよくないとは言え、日本が足元を見られるのだけは御免である。このままいつまでもアメリカを放って置いてよいものか。唯一の超大国アメリカにも言うべきことは言わなければ外交ではない。属国ではないのだから。
更新日: 02/02/09
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