読書メモ
・「アメリカの経済支配者たち」
(広瀬隆・著、 \700、集英社新書) : 2001.12.12
内容と感想:
貧乏人はいつまでも貧乏人。どうあがこうが突如として富豪になどには成り得ない。宝くじなぞ当たっても、たかが知れている。せいぜい数億円だ。急にそんな大金を手にしたら普通の人間(貧乏人)は金銭感覚が狂ってしまうかも知れない。それまでの地道な生き方ががらりと変わり、不幸な結末を迎えるのが落ちだ。私は競馬はやるが、宝くじは買わない。宝くじには何ら戦略を必要としない。ただ資金と運任せ。ゲーム感覚で競馬をやるのとは根本から違う。いつ当たるとも知れない(一生当たらないことのほうが多数だ)宝くじに、ただ無駄に資金を投入し続けるのは虚しい。そんなことに資金をつぎ込むのなら、遊びの競馬のほうが金の使い道としては有意義である(当たれば尚うれしいが)。
ところで、最近の日本の”超”低金利政策により、預金に対する利息は全く期待出来ない現実。つい最近では安全と言われていた一部のMMFが、米エンロン社の破綻で元本割れとなり、解約が相次いでいるという。そうでなくとも日本では”たんす預金”が増えているという(金庫が飛ぶように売れているらしい)。
外資系の証券会社などはそのたんす預金を目当てにこぞって、日本の金融市場に乗り込んで来たが、結局は財布の紐の硬い日本人に愛想をつかし、撤退するところもあると聞く(怪しげな外資に割高な株を買わされて、手数料を巻き上げられるだけでなく、証券会社内部の運用部門によって高値で売り抜けられ、投資家につけが回され損をさせられるくらいなら、たんす預金のほうが極めて安全である)。この現実はいかに日本人が内外の金融システムに不審を抱いているか、日本での金融ビジネスが困難かを端的に表していると言えよう。
さて、前書きが長くなったが、本書は我々ごく普通の日本人とは別世界の人間達のお話である。こんな奴らが世界の経済を動かしていると知ったら、自分の無力さを知ることであろう。目先の現金に血眼になっている自分が、いかに小さな人間であるか思い知るであろう。
世の中には大金持ちと貧乏人の両方しかいないのである。まともな人生を送っていたら富豪なんかにはなれやしない。富豪になるのは余程、ラッキーか、悪事を働かないと無理である。そういう連中には汗水たらして働いて勝ち取った金だと主張する者もいるかも知れない。しかしどんな一生懸命働いても稼げる額など知れている。本人は悪事とは自覚していないかも知れないが暴利をむさぼるか、雇用者から搾取したりしない限り蓄財は無理だ。
さきに著者の大作「赤い盾」(本書にも登場する財閥ロスチャイルド家の話)を読んだとき、その情報収集力には驚愕させられた。登場する人物は実在の人物で(らしい)、人間関係も複雑、その人数も膨大で、本当かどうか検証するとしても大変だというのが素直な印象であった。
本書も「赤い盾」と同系統の話である。アメリカのみならず世界経済までを支配する者たちと、近年経済ニュースに登場する人物たちとの人間関係を知り、そうだったのか!と納得する反面、どこまで本当なのかと首を傾げたくなる部分もある。
本書の内容を信じるも信じないも、検証するには膨大な資料と人脈、労力が必要であろう。著者に対する一般の評価は知らないが、はなし半分を信用するとしても、本書の登場人物たちは我々からは遠い存在である。大金持ちはいるところにはいるのである。これは歴然とした事実である。彼らを羨んでも仕方がない。憎らしいから殺してしまえと思っても、実行に移したら犯罪者。余計に不幸になるだけである。膨大な資産を維持していくために、彼らにも彼らなりの苦労があることであろうが知ったことではない。金持ちであるが故に命を狙われることもあるだろう。どちらが幸福かは、本人の価値観次第。本書を読み終わって、改めて現実を思い知らされた。
目次 〜
序章:世界を動かす”七つのメカニズム”
第一章:遺産相続人の指令
第二章:南アのゴールドが動かす資産価値
第三章:CIAの経済戦略
第四章:ヨーロッパ財閥の威力と組織
第五章:ウォール街の国際投機人脈
第六章:タックスヘイブンによる地下経済
第七章:金融ジャーナリズムの支配力
更新日: 01/12/13
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