夜  に  見  る  夢         >>>2








 熱くて、体が溶けてしまいそうだった。否、もう溶けてしまったのかも知れない。何処からが自分の体なのか、分からなかった。
「はっ、やんっ…」
 胸の蕾を舌で転がされて思わず声が上がる。利吉の指の、口唇の触れていないところは無かった。体中に口付けを落とされて甘い悲鳴を上げながら、利吉の愛情と欲情を感じて、泣きたい程の幸せを感じている。
「利吉、さんっ…」
「好きだよ、乱…」
 指先が秘められた蕾に触れる。
「あっ、」
「力、抜いて」
 口唇と指の愛撫に力を抜く。思いもしなかった恥ずかしい場所なのに、触れられると其処から体が蕩けてしまいそうだった。指先でくじられ、甘い声が零れる。
「んんっ、あぁ…」
「気持ちいい?いま、もっと悦くしてあげるから」
 抱き締めていた利吉が離れ、熱く昂った其処に温かくぬめる感触が生まれた。
「ああんッ…」
 利吉が何をして居るのかに気付いて足を閉じようとしたが、却って大きく広げられてしまった。恥ずかしくて堪らず、腰を捩ったが、それは快楽を煽っただけだった。濡れた音を立てて其処を貪られ、乱太郎は啜り泣いた。気持ちよくってどうにか成ってしまいそうだった。初めての快楽は底なしで、乱太郎を捕らえ、飲み込もうとする。それがとても怖いのに、頭よりも体の奥がもっともっとと欲しがっている。何か、追い詰められているように苦しくなり、嗚咽が詰まった。その時、何か熱いものが蕾を押し広げ、昂りが強く吸われる。瞬間、尻尾の付け根から昂りの中を熱い何かが走り抜け、体の中で何かが弾けた。
「あぁ────っ」
 一際高く、甘い悲鳴が上がって、乱太郎の体がぐったりと弛緩した。何がどうしたのか、良く分からない。
「気持ちよかった?」
 囁かれても何の事か分からず、ただ、甘えてしがみ付いた。利吉の口唇が、頬に、額に幾つもの口付けを落とす。
「初めてじゃ分からないかな。でも、嫌だった?」
 問われて頭を振る。嫌じゃなかった。むしろ、その反対だった。しがみ付いた利吉の髪をそっと探る。其処に白くて長い耳が無いのは知っていたけれど。触れた指で元結を解くと、長く艶やかな黒髪がさらりと流れ落ちて来て肩に掛かる。乱太郎は泣きたい程の幸福感に包まれた。この綺麗な黒髪を持った、とても美しい人が、優しい人が、自分の好きな人。そしてその人も自分を好いていてくれる。
「利吉さんが好き…」
「私も、乱太郎が好きだよ」
 口付けは甘く、乱太郎の体は再び溶け出してゆく。
「本当はもっと時間を掛けて慣らしてあげたかったんだけど、ごめん」
 苦しげに利吉が囁く。何の事か分からずに、ただしがみ付き、口付けをねだった。狂おしい口付けに、乱太郎の悲鳴は吸い取られた。何か熱いものがゆっくりと蕾の中に入り込み、内側を掻き回している。柔らかな内壁をそっと辿り、きつく締め付ける入り口を揉み解す。その手は優しく、決して乱暴でも性急でもなかった。熱い感覚が動くたびに、乱太郎の昂りは熱くなっていく。
「っ、はっ、」
 途切れた口付けの間に零れたのは、甘い声だった。
「痛くない?」
 切なげな乱太郎の様子に、利吉が愛撫を止め、そっと聞いた。
「熱くて、なんか、あっ…」
 動きの止まった指が何故かもどかしく、腰を捩る。
「止めちゃいや…」
「いい子だ」
 小さく微笑って、利吉は指を使い始める。乱太郎の其処は早くも利吉の指を締め付け、もっと深く飲み込もうとヒクついた。ゆっくりと指で慣らしながら、胸の小さな果実にそっと舌を当てて擽る。
「あんっ…」
 びくりと乱太郎の体が震える。しっとりと汗ばんだ白い体に燻っている甘い香りが一層強くなったような気がして、利吉の体も熱くなる。指を受け入れている其処はすっかりほぐれ、柔らかく指を締め付けている。
「好きだよ」
 そう囁いて、口付ける。自身の昂りを押し当てると、ゆっくりと乱太郎の中に入る。熱く狭い其処は、苦しげに、だが確実に利吉を受け入れていく。指とは違う、圧倒的な質量に、乱太郎は息を詰めた。苦痛は無く、利吉を受け入れているのだという歓喜が乱太郎を浸していた。
 ゆっくりと動き出した利吉のものが其処に触れたとき、乱太郎は泣き声を上げて彼にしがみ付いた。熱く、堪らない快楽に頭の芯まで揺さぶられ、泣く事しか出来ない。
「やっ、あぁっ、ああっ」
「乱…」
 思っても居なかった乱太郎の淫れ方に、利吉の理性の箍も外れてゆく。慣れないうちは辛いだろうから無理はさせられないと、抑えていたものが、緩く解けて行く。
「気持ちいいんだね。ここ、こんなにしてるよ」
 囁いて、誘うように蜜を零している昂りを握りこむ。小さな体が跳ねた。
「可愛いよ、私の乱…」
 その言葉に、乱太郎の体の芯がじわりと熱く成る。何故か分からないけれど、涙が零れた。
 突き上げる動きにあわせて扱くと、しきりに頭を振り、口唇を噛み締める。何か一つでも堪えていないと、何処かへ流されてしまいそうで怖かった。だが、それすら、利吉は許さなかった。
「ダメだよ、そんなに噛んだら唇が切れてしまう。ほら、可愛い声、もっと聞かせて」
 指が噛み締めた口唇を割って口腔に入り、薄い舌を掴みあげる。
「かはっ、あ、ああっ…」
 閉じることの出来ない口唇から、切なげな声が洩れた。無意識に口腔を犯している利吉の指に舌を絡める。
「ふっ、う…く」
「乱…」
 唾液に濡れた熱い舌の感触に、ゾクリとする。子供の、薄い舌の感触はそれだけで堪らないものが有るのだが、それが乱太郎のものだと言うだけでこれ程までに気持ちいいものだとは思って居なかったのだ。突き上げる動きに連れて、乱太郎の白く長い、うさぎの耳が揺れる。それが酷く可愛らしくて、軽く歯を当てた。と、乱太郎の体がびくっと引きつり、利吉を強く締め付ける。不意の感覚に、利吉は眉を顰めて達きそうになるのを堪えた。
「ひぅっ、あぁ…」
「耳、気持ちいいんだね」
 囁いて柔らかく噛み続けると、微かに頷く。泣きながら夢中でしがみ付いてくる乱太郎が愛しくて。
「もっと悦くなって。私しか見ていないから、乱…」
 頭の芯が痺れる程の快楽に、薄い笑みが上がる。開放したくて痛いほどに昂っている自分を抑えることが、苦痛ではなく愉悦に変わる、そんな事も初めてで。泣いている乱太郎を容赦なく攻め立て、腰が蕩けてしまうような快楽の中をゆっくりと上り詰めた。熱い迸りを体の奥に受け止めて、乱太郎も達する。
「くッ…!」
「ああっ」
 深い快楽。初めて味わう充足感に、利吉は溜め息を吐いて乱太郎の体を抱き締めた。荒い息を整えて、息も絶え絶えの乱太郎に口付けると、細い腕が弱々しくしがみ付いてきて。
「乱…」
「もっとして…。私を離さないで…」
 濡れた眸は酷く蠱惑的で。利吉はその眸に溺れる様にして、乱太郎に口付けた。



 翌朝遅く、気懶さの中で利吉は目覚めた。腕の中には乱太郎が居た。だが、その体は幼く、見慣れたものだった。昨夜の事は夢だったのかと思ったが、乱太郎の白い肌には薄紅色の情交の後が残されている。
「乱太郎…?」
 自分はこの幼い体に無理強いをしてしまったのだろうか。そう思うと、不安になる。その時、乱太郎が目を覚ました。その手が無意識に利吉を求めて彷徨う。その手を取って抱き締めると、甘えた色を湛えた鳶色の目が利吉を見つめた。それは昨夜見た、大人びた乱太郎のものと同じだった。そのことに何故か安堵する。
「利吉さん…」
「お早う」
 優しく笑って言うと、乱太郎も赤くなって挨拶を返した。触れ合った素肌が、改めて恥ずかしい。けれど。
「あ、れ?私…」
 触れ合った手を見て、乱太郎は慌てて体を起こした。昨夜、確かに大人に成った筈なのに、今、自分の体は元の大きさに戻ってしまっているのである。恐る恐る頭に触れてみると、やっぱり耳は無かった。
「私、元に戻っちゃった…」
 ポツリと、乱太郎が言う。子供のままでは利吉と縁組は出来ない。昨夜、利吉の腕に抱かれたのは夢だったのだろうか。あれ程に幸せだったのは、満月の見せた夢だったのだろうか。そう思うと、切なくて涙が溢れてきた。その時、利吉の腕が乱太郎の体を引き寄せ、口付けに閉じ込めた。口付けは昨夜見た夢と同じに甘く、余計に切なくて。
「いいよ、そのままで」
 優しい声がそう囁いて。驚いて顔を上げると、利吉は微笑っている。
「そのままの乱太郎が好きだよ。だから、無理して大人に成らなくていいんだ」
「利吉さん…」
 乱太郎の涙を見た瞬間、本当にそう思ったのだ。もう、無理に待つ事も、躊躇う事も止めよう、と。
「大きくても小さくても、乱太郎は乱太郎だから。だから、そのままで良いんだよ」
 優しく抱き締められて、また泣きたくなる。
「月が替わったら、大木先生の所に行こう。二人でお出でって言われたんだ。だから、二人で大木先生の所に行こう。縁組の報告をしに、ね」
「えっ…?」
「縁組をするんだよ。私と、乱太郎と。嫌かい?」
「ううん、ううん」
 零れた涙を拭ってくれる口唇は、昨夜と同じ優しさで、涙が止まらない。そうして乱太郎は、昔聞いた言い伝えを思い出す。
『満月の夜に見た夢は、本当に叶うんだよ』
 そう言った声が誰なのかはもう忘れてしまったけれど、夢は本当に叶ったのだ。
 乱太郎の涙が止まるまで、利吉はその小さな身体をそっと抱き締めていた。















≪其の1へ                                TXIT : 利太郎 様

【利】
出来ましたっ!
大人なうさみみです。
もうもう、神様接触悪くって困っちゃうですよ(笑)
それでは、今夜もうさみみが幸せを運んでくれる事を祈りつつ。

利太郎様!!
いつもいつもほんとに…もう……!!!
ありがとうございますーーーー!!!!
少し(重要)大人の乱ちゃん美しかったですね〜…。
今回リッキーも際だって美しくて、ビジュアルを想像するだに溜息モノです。
ほんと人には頭の中身が見えない仕組みでよかった…。

うさみみ宅急便。信じられないくらい優秀です。
なのに今回UPが大幅に遅れてほんとに申し訳ありませんでした。
乱ちゃん玄関に待たせっぱなしにしちゃいましたよ。(可愛かったですが)

今夜、丁度外は良い月夜です。


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