読書メモ
・「大系 日本の歴史 8 天下一統」
(朝尾直弘:著、 \1,800、小学館) : 2003.03.08
内容と感想:
全15巻(古代から現代までを網羅。各巻を別の著者が担当)の内の第8巻は西暦1568年からの30年間という、日本史の中でもごく短期間を対象としている。これは信長が上洛を果たしから秀吉が死ぬまでの時期に当たる。著者はこの期間を「明治維新に匹敵するか、それをはるかに上回る大きな変革期」だとしている。
個人的に日本史でも特に戦国史には興味があり、これまで興味の向くままに主に小説を読み漁ってきたが体系的な知識は不足していた。で、ちょっと教科書的な本でも読んでみようかと手にしたのがこれ。とは言っても本書も主役はやはり信長、秀吉であり、彼らの行動と京都、大坂を中心とした国内の動きが主としたトピックである。
図や写真が豊富でほぼ全ページに何らかの絵図が登場し、それだけでも楽しめる。
<目次>
・天下人の登場
・石山合戦の底流
・安土の楽市
・「将軍権力」と信長
・豊臣政権の成立
・関白の平和
・天下の富を手に
・大坂と京都
・唐・南蛮までも
・蝦夷島と琉球
・太閤の夢
この時期について改めて認識させられたのは、ポルトガル等のキリスト教国との貿易などを通して、それまでの中国・朝鮮にかわる新たな文明の中心に対する警戒と憧憬が、信長・秀吉らを初め日本人の心に大きくなっていたこと。日本の(中国)大陸離れ、中華文明からの自立の意識が明確になっていたこと。しかも秀吉はかつて日本が中国皇帝に対してとっていた姿勢(朝貢貿易)にかわり、逆に自らが統合した日本への諸外国の服属を目指していたらしいという点は、絶頂期の秀吉の自信の大きさの現れであろう。更に秀吉の幸運は当時のゴールドラッシュともいうべき金や銀の産出量の急拡大であろう。豪華絢爛な安土桃山文化が花開く原動力であったとともに、それまでの中国貨幣に依存した経済から独自の貨幣体系をもつ経済へ移行する画期になったようだ。
蝦夷島と呼ばれていた北海道、今は沖縄県の琉球についても触れている点は興味深い。
更新日: 03/05/30
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