読書メモ

・「「残業ゼロ」の仕事力
(吉越 浩一郎:著、日本能率協会マネジメントセンター \1,400) : 2008.06.22

内容と感想:
 
著者の名は元トリンプ社長というよりも、「残業ゼロの会社」の社長ということで印象が強かった。 著者は社長在任中に残業を禁止し、毎日を「ノー残業デー」にした。残業ゼロで業績が落ちては意味がない。 残業をしなくてもそれまでと同じ、それ以上に業績を拡大することができるように社員の意識を変える必要がある。 しかし急に同じ事をやろうとしても容易ではない。実際、トリンプでも最初は現場の抵抗もあったようだ。 それを乗り越えて残業ゼロに到達できた秘訣が本書には書かれている。
 それが話題になり、同社を見学に来ることも多かったという。実際、私が知ったのもテレビで紹介されていたからだ。 「良品計画」や「しまむら」のように残業をなくし、同時に企業体力強化に成功している企業も出てきているという。
 残業ゼロの秘訣の一つが「早朝会議」だ。これには正直、目から鱗が落ちた。 一時間で40くらいの議題、一つの議題にかける時間は長くて二分という。 そのスピードの実現には参加者の会議に臨む姿勢を変える必要がある。 秘訣は準備段階にある。 担当者は問題に対する、現状、対処、それにかかる時間や経費などを整理し解決策をまとめてくる。 会議ではその策がいいかどうか判断するだけ。 情報不足、質問に理路整然と答えられない場合は詰めが甘いということで、議論は中止。 誰が、何を、いつまでに、を明確にして担当者に差し戻す。 期限は原則、翌日の早朝会議まで。これは生産的で緊張感のある会議になりそうだ。 問題を二分で処理できるサイズにまで分解することも、もう一つの秘訣だ。
 これが日本全体に広がれば、「日はまた昇る」はずだ。

○印象的な言葉
・次の人生にソフトランディング
・緊急対策、再発防止、横展開
・会議こそ最良の鍛錬の場
・長くて多いのがよい会議
・二度と残業したくないと思わせる。罪悪感。違反したら罰金、反省会、納得する答えが見つかるまで追求の手を緩めない
・リーダーシップよりフォロワーシップ(リーダーをフォローする能力):リーダーのやることを間近に見る、肌で感じる。思考回路、意思決定方法、視野の広げ方。
・豹変、朝令暮改は当たり前
・活気がないのがいいオフィス
・恒常的な残業が効率的に仕事をする能力をスポイルしている
・決められた時間内で戦うというルール(長時間働けば勝つのは当たり前)。同じルールで戦っても勝てることを示す
・自分は正しいことをやっているという信念
・仕事の密度をいくら濃くしても過労死につながることはない
・場当たり的な対処でその場をやり過ごしている、流されて仕事をしている
・失敗を怒っても意味がない。報告にきた時点で本人は十分反省している。一刻も早く緊急対策を
・GNN:義理、人情、浪花節が貴重な潤滑油の役目を果たす
・問題を小分けにする:自分でも何とかできるサイズに。孫子の兵法「各個撃破」
・立ち止まって考えているような余裕のないデッドラインをつける。一分一秒も惜しいという状況に追い込む
・会議の意義:情報共有、(結論に至る)プロセスの共有
・長時間労働の国・日本:体力と根性だけが売り物みたいで面白くない
・うまくいかない責任は、部下の意見に左右されるトップにある
・プライドを優先させると判断を誤る
・会社を強くして競争に勝つ。組織が共有するものはそれだけで十分。社訓は不要
・健全な組織:目的達成のための合理的な行動がスムーズにできる
・日本人は耐え忍ぶのが好きな民族。従順さの度合いがいっそう強まっている
・日本では子供から有害なものをことごとく遠ざけ、無菌に近い状態で育てる傾向が強まっている。ビジネスの世界はそれとは正反対。

-目次-
第1章 御社の残業がなくならない理由
第2章 問題はとにかく「分けて」考える
第3章 次に「会議」を変えていこう
第4章 「続ける」ための考え方
第5章 「速くて強い」チームの作り方
第6章 「仕事の常識」はこれだけ変わった
第7章 ほんとうのワークライフバランス