読書メモ
・「ウェブ2.0は夢か現実か? ―テレビ・新聞を呑み込むネットの破壊力」
(佐々木 俊尚:著、宝島社新書 \720) : 2008.01.01
内容と感想:
ウェブのニュース媒体「ホット・ワイアード」で著者が連載していた「ITジャーナル」の記事をベースに単行本化。
記事の寄せ集めといった感が否めない。残念ながらタイトルの「ウェブ2.0」と関係あるのは第一章と第五章くらいだろうか。
あとはIT業界(その中でも極めて狭いネットビジネス業界)周辺の事件簿的な文章が多く、
そうした裏事情などに興味があれば面白いだろう。
著者は記者出身ということもあり、マスコミ業界事情にも詳しく、そこらあたりの文章は興味深く読めた。
ウェブ2.0は別として、あらためてマスコミについては考えさせられた。
誤字や誤植が多く、本としての出来も決して良いとは言えないのも残念。
○印象的な言葉
・スカイプ:P2Pファイル交換ソフト「Kazaa」の開発者たちが開発
・グローバルIPサウンド社:スカイプを支える音声技術。品質は固定電話並かそれ以上。ブロードバンドである必要もない。
・記者の取材プロセス自体が企業秘密、貴重なノウハウ
・インターネットによりマスコミによる報道被害にあった側が抗議できるメディアが手に入った
・日本では「革新」が旧勢力になり、保守が新勢力=自由主義者と捉えられてきている
・韓国では新聞、雑誌、TVなどオールドメディアに対する報道規制が厳しい。軍事政権時代の遺物
・韓国では1997年の通貨危機で苦境に陥った経済を救うためITへの集中的な傾斜が国策となった。ネットメディアが成長産業として保護された。
・2ちゃんねる:退屈な日常を過ごすために生み出された文化。ある種の知的遊戯。知をひたすら浪費し、遊びに明け暮れる。
・日本人の100人に1人は富裕層(1億円以上の資産家)
・ブログの信頼度:文章の長さも指標になる可能性がある。エントリー数が多いことも。
・問題解決のためのナビゲーションとしての検索エンジン。ユーザの利用状況やニーズにマッチした情報の推薦。
・階層意識が「下」の人ほどパソコンやネットを楽しむ人が多い
・かつての派閥抗争のような荒々しい人間関係は徐々に消滅しつつある
・アメリカの新聞は広告収入の比率が非常に高い。日本では36%に過ぎない。
・プロダクト・プレースメント:コンテンツのドラマなどの中に商品の紹介を挿入。コンテンツと広告を融合。
・コンテンツさえ維持できれば広告モデルも維持できる。コンテナーが別の媒体になっても構わない
・楽天のTBSとの経営統合策:ヤフーを超えるため、ヤフーを凌駕する(ユーザとの)リーチ率をもつメディアを手に入れたかった
・コンテナーの多様化:多チャンネル化の延長線上。視聴者にとっては見たい番組があれば地上波も衛星放送もネットも無関係。
・記憶する住宅:ありとあらゆる体験をデジタルコンテンツ化し蓄積。マイライフ・ビッツ。
・年間2兆円のテレビCM市場。ネット広告は雑誌広告費に迫っている。
・出版社は大手でも規模が小さく、ミリオンセラーを一発出せば、社員を食わせていける。水商売
・スカイリー・ネットワークス:ワイヤレスP2Pのパイオニア。「デセントラ」シリーズ。
・ソフトバンク:日本テレコム買収の失敗を拭おうと、携帯電話ビジネスに全力を注いでいる。発表会経営。孫社長は卓越したビジョナリーだが実務の人ではない。
SBIとの投資ビジネスから離れ、通信ビジネスへ転向。
・産経新聞の編集方針は「正論」路線
・ライブドア事件:グレーな資本政策に対し、金融庁からの是正や行政指導は行なわれていなかった。
・ITのブラックホール:IT知識を吸収しているだけで満足し、それを実際の仕事、実社会に役立てることがどうでもよくなってしまう
・古い大人文化:腹に何でも呑み込んでしまって社会正義や本音を語らずに生きていくようになる
・Winny裁判:被告による2ちゃんねるへの膨大な書き込みの中には著作権に対する挑戦的なものも少なくなかった
・週刊誌記者は記者クラブ制度の壁のせいでなかなか警察当局の奥の院まで近づけないため、記者クラブ所属の記者に接触する
・日本人のモラルとは「相互監視と相互規制」により成り立っていた空虚なものでしかなかった。
・SNS:日本では他人とつながること自体を目的として利用。ゆるやかな日本的人間関係をネット上に転写したサービス。
・インターネットの理想:自律、分散、協調。生命体もこれで表現できる。情報システムのみでなく、社会・経済・政治にも適用
-目次-
第1章 ウェブは、世の中を変えるのか?
第2章 ウェブVSオールドメディア
第3章 ウェブの世界の不思議な人びと
第4章 ウェブ事件簿
第5章 ウェブ2.0は幻想か?
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