読書メモ

・「体系的に学び直す 無線LAN
(清水 理史:著、日経BPソフトプレス  \1,600) : 2008.03.22

内容と感想:
 
「体系的に学び直す」シリーズ。
 今やノートパソコンには無線LANは標準装備のものも多くなり、PDAや携帯ゲーム機、スマートフォンなどにも無線LANが搭載されるようになっている。 その身近になった無線LANの仕組みを学ぶことができる入門書。やや深みが足りない気がするが、概要はつかめるだろう。 携帯電話システムなどと比較すれば通信エリアは狭いし、システムのスケールも小さい。だから、技術的にはそれほど難しくない。 図解でイメージしやすいだろう。
 2002年に書かれた本なので内容はやや古い印象。 まだ仕様がドラフト(2008.03.34現在)のIEEE802.11nや、MIMOといった単語は本書には登場していない。機器メーカーの合従連衡も進んでいる。
 また、意外にもBluetoothにも一章を割いている。802.11b/gと同じ2.4GHz帯を使用する近距離通信技術として、(比較の意味もあり)取り上げている。 最近はBluetooth搭載機器もあるにはあるが、今ひとつ認知度は低いのではないか?私も無線LANのことはだいたい分かっていたつもりだったが、 Bluetoothの仕組みを説明しろと言われるとお手上げだったので、今回勉強になった。

○印象的な言葉
・あらゆる機器がワイヤレスで接続
・802.11b/gは無線免許不要のISMバンド(2.4GHz帯)。電子レンジも同じ周波数を使う。アマチュア無線、VICS(道路交通情報通信システム)、衛星通信でも利用。 11bの理論値最大11Mbps、実効速度は4〜6Mbps。11gは11bと互換性をもたせながら、54Mbpsと高速。
・802.11a: 5GHz帯。理論値最大54Mbps、実効速度は20Mbps。11bより消費電力が大きく、伝送距離が短い。
・赤外線:障害物に弱い。電波より波長が短く(1,000nm。電波はcm、mm単位)、直進性が強い。高速。電磁ノイズの影響を受けない、与えない。装置を小型化しにくい。
・無線通信システムALOHAネットワーク(1973年)がEthernetの起源
・「802.11b」はIEEEの「802委員会」の「ワーキンググループ(WG)11」の「タスクグループB」が策定した規格
・無線LANでは二次変調にスペクトラム拡散を使う。ノイズや干渉に強く、周波数利用効率が高い。
・OFDM(直交周波数分割多重):11aや11gで採用。バースト誤り(信号がまとめて失われる)に強い。
・ガードインターバル:マルチパス(電波の乱反射により受信のタイミングが遅れる)対応のため、遅れを見越して時間的に重複させて送信。
・無線LANでは電波を使うため、有線のように信号の衝突検出ができない
・無線アクセスポイントは電波を水平方向に広がるよう調整。無線LANカードなどは斜め上方向に電波が送信されるよう調整。
・フォールバック:通信距離や電波の状況に応じて、通信速度を段階的に落とす
・デジタルビデオ映像の品質の目安:標準画質で4Mbps、高画質モードで8Mbps。映像を快適に再生するにはビットレートの2倍程度の転送速度が必要。
・ESS-IDを隠す設定
・WEPの問題:暗号に使用しているアルゴリズムRC4が既に解読可能となっている
・MACアドレス・フィルタリングの問題:盗聴には効果がない。MACアドレスを詐称できてしまう。
・TKIP: WEPの拡張。既存ハードウエアを使える。次世代暗号技術までのつなぎの技術。
・プライバシー・セパレーター:アクセスポイントに接続したステーション間の通信を禁止
・Wakeup On LAN:ネットワーク経由でパソコンを起動
・Bluetooth:最大723.2kbpsの通信速度。約10mの近距離。低電力、小型化可能。送信電力は1mW(無線LANは30mW)。赤外線より障害物に強い。無線LANと同じISMバンド。 マスターとスレーブで構成。必要に応じてどちらにもなれる。兼用もできる。2台のマスターに接続も可能。1マスターに最大7スレーブを接続可。
・Bluetoothアドレス: EthernetのMACアドレスに相当。長さは48bit。
・リンク・キーによるペアリングで不正接続や誤接続を防止。ユーザが入力したパス・キーからリンク・キーを生成。リンク・キーから128bitの暗号化キーを生成して通信を暗号化。 送信パケットごとに暗号化キーを変更したり、同報通信したりできる。

-目次-
第1章 無線LANの基礎知識
第2章 無線LANで通信できる理由
第3章 アクセスポイントの効率的な配置法
第4章 失敗しない無線LAN構築法
第5章 セキュリティ上の問題点と対応策
第6章 ホットスポットはどこまで普及するか
第7章 Bluetoothは何が違うのか?