読書メモ

・「ビジョナリーカンパニー【特別編】
(ジェームズ・C・コリンズ :著、 山岡洋一 :訳、日経BP社 \1,000) : 2008.02.23

内容と感想:
 
多くの経営者が薦める名著「ビジョナリーカンパニー」のタイトルどおり特別編である。 私はまだ本編のほうは未だ「積ん読」状態で手を付けられていないのだが、本書は続編の 「ビジョナリーカンパニー2」の付属論文として記された。
 「ビジョナリーカンパニー」および、「2」は文字通り”企業”をテーマに書かれた本のようだが、 それらは企業セクター以外(本書では社会セクターと呼んでいる)の人たちにも読まれたそうだ。 著者が社会セクターに強い興味を持ち始めた結果、本書は生まれた。
 「2」では「偉大な組織」に飛躍できた企業がある一方で飛躍できない企業が多い理由を時代を超えた法則として明らかにしたという。 その法則は社会セクターにも適用できるが、そのセクターの指導者は企業セクターとは直面している現実に大きな違いがある。 本書ではそれを5つの問題として全5節で論じている。 100ページにも満たない本なので短時間で読める。
 本シリーズのテーマは「偉大な組織」であるようだ(実はその前提として「良好な組織」でなければいけないようだ)。 社会セクターの場合、その「偉大さ」の定義は企業セクターとは異なるようだ。 企業のように財務実績では評価できず、その代わりに使命に照らして実績を評価する必要がある。 「使った資源に対してどれほど効率的に使命を達成し、社会に際立った影響を与えたか」が重要とのこと。 本書の最後にはまとめとして、偉大な組織を築くための4つの段階とそれぞれの段階において二つの基本的な法則を示している。 キーワードは「規律」。規律ある人材・考え・行動。
 無責任とか何かと批判の多い官僚組織。これも社会セクターの一つだ。 著者が言うように偉大なな企業があるだけでは、偉大な社会にはならない。日本が偉大な国家になるにはお役所も偉大な組織になってもらわねば。

○印象的な言葉
・偉大な(Great)な企業があるだけでは、繁栄する社会を実現できるとしても、偉大な社会にはならない。 経済の成長と力は偉大な国を作るための手段にすぎず、それだけで国が偉大になるわけではない。
・非営利団体は規律が欠けている
・「偉大な組織」:長期にわたって際立った影響を社会に与える組織。「良好な(Good)組織」からの飛躍。一貫性。 「基本理念を維持し、進歩を促す」原則を実践。時代を超える基本理念の一方で、変化と進歩を求めており、創造性を発揮したい欲求ももつ。
・アウトプットに責任をもつ規律
・「偉大さ」とは到着点ではなく、理想を目指す過程。
・第五水準の指導者:野心は自分個人ではなく、目標・活動・使命・仕事に向けられている。5段階の頂点。謙虚さと意志の強さ。
・優れた指導者は執行型(集権型)の手法と立法型(分権型)の手法を組み合わせている
・リーダーシップの実践は力の行使と同じではない
・人材採用の仕組みよりも初期評価の仕組みが重要。その人のことが分かるのは共に働いたとき。
・社会セクターの3つの円:情熱、世界一になれる部分、資源の原動力。 3つの円の重なる部分から離れる動きをもたらす資源を拒否する規律が必要
・非営利団体の活動が軌道に乗り財務が黒字化すると寄付集めが難しくなる
・社会セクターのブランド:実績と支援者たちの関心によって築かれる
・ソクラテス・メソッド
・最後には必ず勝つという確信を失わない
・進歩を促す仕組みを作る。カリスマ的な個性に頼って物事を進めようとしない。

-目次-
偉大な組織への飛躍の法則と社会セクター ―企業経営の手法を取り入れても答えにならない理由
第1節 「偉大さ」の定義 ―経営指標が使えないなかで、偉大さを判断する
第2節 第五水準のリーダーシップ ―分散型組織構造で成功を収める
第3節 最初に人を選ぶ ―社会セクターの制約のなかで適切な人をバスに乗せる
第4節 針鼠の概念 ―利益動機のないなかで、経済的原動力を見直す
第5節 弾み車を回す ―ブランドを構築して勢いをつける
全体的な状況が悪いなかで偉大な実績をあげる
良好な組織から偉大な組織への飛躍の法則 ―枠組みの要約