読書メモ

・「齋藤孝の30分散歩術
(齋藤 孝:著、実業之日本社 \1,300) : 2008.09.20

内容と感想:
 
散歩が健康によいことは古くから知られている。最近再び見直されるようになり、いまやブームの感もある。 健康法として意識して歩いている人が多いようだ。シューズやウエアなど周辺ビジネスも盛り上がっている。 私には散歩の習慣はないが、最近、ジョギングを再開した。 数年前は山登りができない冬の間の体力づくりのためのジョギングだったが 信州に引っ越してから忘れていた。今はその良さを見直している。 走るのもいいのだが、著者が歩くことを勧めているのは無理が少なく、歩き終わった後も、歩いてきたときのリズムが 身体に残りやすく、前に進む気持ちが残り続けるからだと言う。
 心を心でコントロールするのは難しい。だからその心の間に身体を入れるのだと説く。 それが歩くこと。歩くことで心をリセット。これが習慣になれば、 身体を動かすことを仲介にして心を制御できるようになる。 著者は自ら編み出した歩行法を「齋藤式東洋ウォーク」と呼んで紹介している。
 実際、私も身体を動かすことが習慣になっているから、本書の内容は全く違和感はない。 身体を動かせない時期が続くと逆にストレスが溜まるほうだ。ストレス解消に運動するというのとは逆。 身体を動かすときは屋外のほうがいい。 仕事で会社に閉じこもっているのと違い、開放感がある。
 本書でひとつヒントをもらった。 「歩行祭」のように大勢で歩くことの効果。一緒に歩くことで気持ちが一つにまとまり、 多少、辛くてもエネルギーが湧いてくることもある。 もう一つは、歩きながらみんなで「何かやってみたいこと」を語り合う時間にするということ。 前向きないいアイディアが出そうな気がする。

○印象的な言葉
・心身の疲れのアンバランスがストレスを増殖させる
・一定のリズム
・日光のもつ力。セントロニンやドーパミンを活性化
・負荷をかける
・夜に歩く。夜の風情。街が落ち着いてくる。情緒的なものを味わったり、思想的に深いことを考えるには夜がいい
・刺激のシャワー。街がもつ雰囲気やエネルギー。場のもつ力
・旅先など非日常の散歩
・よい気をもらう。我々は気の力に敏感な民族
・ストレスが減ると心に余裕が生まれる。余裕ができると抑えられていた能力が開放され、軽やかに走れる
・偉人の志を学んで継承する
・幸福感:不安と不信を感じない状態
・すごくよい状態にある人は、すごく悪い状態も起こりやすい。大きな振幅。悩みもそれなりに大きい
・正負の法則(美輪明宏):人生は結果的にはみなおよそイーブンになる
・心(脳)にスペースを空ける
・睡眠は最大の治療薬
・最悪の事態を考える。死ぬほどのことでもない。まあ、いいか。
・犬がなでられたときに身体をブルブルッとさせるのは、不快感を振るい落とし、整え直すため
・セントロニンは気持ちを安定させる働き、ドーパミンは意欲や学習に関わる
・ゆったりと深く長く吐く呼吸は脳を活性化
・水中:静か、外界から隔絶、一人の世界に没入
・照明は欧米より日本のほうが明るい
・チアフル:心が元気で機嫌がよい状態。子供のチアフルさ
・屋外では屋内では考えられなかった展望(ビジョン)が広がる
・ある心の状態をいつでも作り出せる。身と心が型として結びつく
・年をとると集中力の持続時間も短くなり、無理もきかない。自信も失いやすい
・自分は独立してここに存在している。自分はここにいる。安心感、存在感
・三つの丹田:道教の用語。エネルギーの中心。
・同行二人:弘法大師とともに歩く
・一度ピークが来て疲れてきても、更に続けると気持ちが乗ってくる。まだまだ行ける、自信
・逍遥:気ままに歩く
・アイデアは脳が揺らぐと自然と出てくる。よい揺らぎは海馬(脳の中心部)。シータ波(脳波)を出す。歩くのがよい
・アイデアを生む:いろいろな経験知を網にかける。自分を掘り起こす。様々なものがつながり合い、スパーク
・一人のリッチな空間
・テレビを見て知的になるのは難しい
・世の中の新たな見方の発見を求めて歩きに出る
・心象スケッチ(宮沢賢治):心に映ってきた外の世界を心を鏡にして言葉に変える。外から自分の心に飛び込んできた
・並んで歩くのはプレッシャーが少ない。お互いを見すぎていない
・深い睡眠のあとの、はっきりとした覚醒
・人生はプラスとマイナスの糸が織り成す織物
・奇跡と思える瞬間
・こもって自分自身に厳しく向き合う
・路上観察学:みんなが気づかないような面白い物や図像を探す、道草

-目次-
プロローグ 私は人生で何度も歩くことに助けられた
第1章 なぜ歩くことは心にもよいのか
第2章 さっそく歩いてみよう
第3章 発想力・思考力を高める散歩術
第4章 ともに歩けば人間関係がよくなる
第5章 歩いて心のエネルギーを蓄える