読書メモ
・「最後の授業 〜ぼくの命があるうちに」
(ランディ・パウシュ、ジェフリー・ザスロー :著、矢羽野 薫 :訳、ランダムハウス講談社 \1,500) : 2008.10.05
内容と感想:
バーチャル・リアリティの第一人者として知られたランディ・パウシュ教授が2007/09/18、カーネギーメロン大学の講堂で「最後の講義」を
行なった。そのとき彼は癌に蝕まれ、余命わずかとされていた(2008/07/25に亡くなった。享年47歳)。
その講義はインターネットでも動画配信された(YouTubeで検索すれば見つかる。しっかり字幕付きで。彼の姿は健康体そのもの)。
その噂を聞いていたから気になっていた。
私の仕事がソフトウエアとランディの専門に近いこともあり彼に興味をもって、本書を手にとった。
本書はその講義のキーワードをまとめた記録であり、講義の続きでもある。
第2章では子供のころの夢を、
第3章では「最後の講義」では話しきれなかった思い出を、
第4章では若者たちへのアドバイスを、
第5章では彼がどう生きてきたかを、
第6章では最後に子供たちへ贈る言葉を書き残している。
死期が近づいていることを知っているからこそ、「生きていることは素晴らしい」と思える。
健康体で死ぬことなんてまだまだ先だと思っていると、生のありがたみなど分からないものだ。
人生は有限だ。しかし、無限だと錯覚してつい無駄な時間を過ごしてしまう。
この本の背景を知っていると、いかにも「お涙ちょうだい本」かと思うが、それ以上に学ぶことが多いはずだ。
一人の人間が何を考え、どうやって生きてきたかを知るのは、自分の人生の指針を得るために参考になる。
第5章に死期の迫った人の家族に対するこんな言葉がある。
「彼が死ぬときは、あなたの一部も死んで一緒に行く。(略)彼は一人ではない」。これにはハッとさせられた。
そう言われればどちらも慰められることだろう。
○印象的な言葉
・大切なのは完璧な答えではない。限られた中で最善の努力をすること
・ビジュアルで考える
・イマジニア:夢を形にする人
・夢を見ることができれば、やり遂げることができる(ウォルト・ディズニー)
・組織化された宗教を受け入れない。信仰はとても個人的なもの
・怒れる楽観主義者
・パンドラの箱の底に残ったのは希望
・自尊心を育てる方法:出来ないことを出来るまで必死にやらせる
・スポーツから学ぶこと:チームワーク、忍耐力、スポーツマンシップ、一生懸命にやることの価値、逆境に立ち向かう能力
・頭のフェイント:何かを間接的に学ぶこと。あとになって分かる。相手が気が付かないうちに教える
・リーダーシップのスキル:ビジョンを築き、雰囲気を作り上げる。士気を高める
・何を知らないかを分かっていて、知らないことを率直に認め、理解できるまで諦めない
・オランダのおじさん:愛情を込めて厳しいことを率直に言う人。苦言を呈してくれる人。
・変わった角度から世界を見る、人生の見方
・教師の第一の目標:学生が「どのように学ぶかを学ぶ」手助けをすること
・学生が「自分をどのように評価するかを学ぶこと」を手助けする。内省の手助け。
自分の能力・欠点を理解、他人が自分をどんなふうに見ているか。自分をチェックし続けることで成長する。
・グループメンバー同士の相互評価:彼は一生懸命に取り組んだか、どのくらい独創的な貢献をしたか、一緒にいてやりやすいと思ったか。具体的な助言
・他人の夢が実現するように手助けすることが楽しい
・授業の例:無作為で選んだ4人のチームで2週間かけてプログラムを作成、発表。
・アリス:カーネギーメロン大学が開発した教材用のソフトウエア。簡単にアニメーションを作成できる。プログラマーになるための勉強ができる。
・不満を言うために時間を費やすよりも、目標を達成することを考えたい
・グループでうまく活動するコツ:スポーツ、天気の話、食べ物
・失敗したことがある人は失敗を回避する方法を知っている
・不測の事態に備えることで楽観的になれる。最悪のシナリオを想像する。
・責任を語らずに権利を語っても意味がない
・正しく生きれば、運命は自分で動き出す。夢のほうから自分のところにやってくる
・壁は行く手をさえぎるためにあるのではなく、その夢をdれだけ真剣に追い求めているかを気付かせるためにある
-目次-
はじめに
第1章 最後の講義
第2章 僕はこうして夢をかなえてきた
第3章 僕を導いてくれた人たち
第4章 夢をかなえようとしているきみたちへ
第5章 人生をどう生きるか
第6章 最後に
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