読書メモ
・「いちばんやさしいPMBOKの本」
(深沢 隆司 : 著、技評SE新書 \840) : 2008.12.29
内容と感想:
プロジェクトマネジメント(PM)の知識体系と言われるPMBOK。
プロジェクトマネジメントの知識を体系的に整理している。
本書はその「PMBOKガイド」第3版をベースにPMBOKを解説している。
PMBOKは、ベストプラクティスをまとめており、
それらをそのまま真似るのではなく、取捨選択(テーラリング)して用いることを想定している。
試験で合格するとPMIに認定されるPMP資格がある。
44のプロジェクトマネジメント・プロセスを時系列的な視点で5グループに分類した「プロジェクトマネジメント・プロセス群」と、
対象別の視点で9グループに分類した「プロジェクトマネジメント知識エリア」がある。
ここでいう「プロジェクトマネジメント」はソフトウエア開発などIT業界に限ったものではなく、様々な業界で共通に使えるとされている。
その内容をちゃんと理解するには「PMBOKガイド」をしっかり読み込む必要がある。
本書は全体像を把握する、という点では役に立つだろう。
PMの知識はいわゆるプロジェクトマネージャだけが持っていればいいのではなく、プロジェクトに関わる全ての人が理解している必要性がある。
うちの会社でも上位等級者だけでなく広く、教育していく必要があると感じた。
CMMIは、PMBOKの中では品質のマネジメントプロセスとして登場する。
そういう意味ではCMMIだけを理解していればプロジェクトマネジメントできると理解していた私には考え方の転換が迫られた。
品質だけでなくより広い視点が求められる。
全体イメージの説明がメインであるため、見積もり手法や計画手法、パフォーマンス評価手法など個別の手法までは説明はもなく、
具体的な点までは踏み込めていないが、今後、自習し実践しながら身につけていくしかなさそうだ。
私が一番興味を持ったのはリスク管理手法や見積もり手法である。もっと知識を深める必要があると感じた。
また、「プロジェクトのパフォーマンス評価」にも興味を持てた。それはEV(アーーンド・バリュー)法というものだが、
進捗を金額で表現することから理解しやすそうで、プロジェクトの「見える化」にも役立ちそうである。
比較的大きな規模のプロジェクトでないと効果がないようだが、知っていて無駄にはならないと考える。
PMBOKは比較的大きな規模のプロジェクトを想定しているが、考え方は小規模な組み込み系のソフトウエア開発プロジェクトにも適用できると考える。
趣旨から外れない範囲で必要なところを取捨選択していけばいい。
PMBOKがアメリカが発祥であること、また背景には国防省などの政府調達部門からのニーズから生まれてきた。
つまり経営・発注側の視点なのである。CMMIなどの現場の品質改善の視点とは異なるということだ。
日本政府も(特に国土交通省など)公共事業などでの効率的な経費の使用のためにPMに注目している。
説明責任(アカウンタビリティ)の面で透明性のあるプロジェクト管理が求められているからPMのニーズは、
経営側にもプロジェクトの当事者である個々人にも、今後も高まるであろう。
○印象的な言葉
・新人にも教えるべき。実務を通じてやがて、本人にもプロマネが実現できるようになる
・しっかりした計画がすべて。
・要求されている納期やコストとのギャップをはっきり意識する
・計画技法は義務教育として教えるべき。
夢を実現するための見通しを立てる具体的な方法。「計画の科学」
・役割をまっとう出来ている人ほど評価されない
-目次-
1 PMBOKとは何か ―ものごとを成功裏に成し遂げるための基礎知識
2 第1部 プロジェクトマネジメント・フレームワーク
3 第2部 単一プロジェクトのプロジェクトマネジメント標準
4 第3部 プロジェクトマネジメント知識エリア
Appendix アーンド・バリュー法(EVT) ―プロジェクトの進捗を金額で表現する
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