読書メモ

・「なぜ、エクゼクティブは書けないペンを捨てないのか?
(パコ・ムーロ:著、野田 恭子:訳、ゴマブックス \1,200) : 2008.06.14

内容と感想:
 
「なぜ、エクゼクティブは・・」シリーズの続編。 本作もビジネスパーソンに対して、例え話を多く用いて仕事や人生を良くするためのヒントを説いている。
 第9話に会社がうまくいかなくなる原因は次の3つに尽きると書かれている。
  −経営全般が悪い、将来のビジョンがない、意思決定が正しく行なわれていない。
本書でも前作と同様、「会社によいマネジメントを期待するのは、株主、管理職、社員の正当な権利」だと言っている。 会社が適切にマネジメントされているかを判断するには経営陣の質についての情報が必要だ。
 経営陣の力量や質を判定する指標の例として有能な管理職および社員の離職率、社員の平均年齢と推移、早期退職制度の有無などを挙げている。 そして「前年度の経営判断とその結果も毎年、公表するのが理想的」だという。 社員が経営陣に対して不信感を持つ原因の一つとしてはマネジメントがうまくいっていないと社員に思われているのに、それに対する反省がなく、 対策も取られず年度が変わればただなんとなく、新年度が始まってしまうことがあるだろう。
 社員と株主のもう一つの権利として、「きちんと開示された、信頼できる分かりやすいデータや指標に基づいて、会社に働きかける権利」を挙げている。 そう、情報がないと経営陣に対して正当な批判もできず、ただの苦情や文句になってしまう。 きっとしっかりした労組があるような会社では当然の権利として既にやっていることだろう。
 一方で社員は権利だけを主張すべきではない。やるべきことをやらなければならない。「やるべきことをやらない社員」にはお引取りいただく必要がある。 「社員や労働組合は同僚や会社を欺き、会社に害を及ぼす社員には厳しい対抗手段を講じる必要がある」。 責任を果たさない不誠実な社員、同僚の足を引っ張る、欠勤する、職場を混乱させる、否定的な雰囲気を作る、士気を萎えさせる、図々しく怠惰、 そんな社員は百害あって一利なしだ。会社に価値を提供するどころかマイナスになるのでは雇う意味がない。タイトルにある「書けないペン」とは全く性質の違う人なのである。 注意しても改善されないようなら、パワハラとか社内いじめとか言われないように、うまく退社してもらわねばならない。これが実は難しかったりする。
 最後の第3部には各個人の仕事の水準をチェックするためのツールとして「人物評価テスト」なるものが掲載されている。 7つの設問からなり、ある人に対して最低4人の評価者に評価してもらい採点する。結果はどうあれ向上のための有効な手がかりになるだろう、と書かれている。

○印象的な言葉
・社員の間に不満足感が広がっているのは人間という要素を後回しにしてきたせい。人間関係への対処法や気持ちの扱い方
・難問をサジ加減もタイミングも考えず、強引な手段で解決しようとしては、問題を悪化させ、不信感を引き起こす
・顧客を訪問することがまず営業マンがすべきこと
・人の考えの誤りや欠点を見つけるのは簡単。批判するときは適切な解決案を示して元の案をよりよくすべき
・優秀な人材がやる気を出せば、そのやる気は他の社員にも広がっていく
・「オズの魔法使い」の著者フランク・ボームは元営業マン
・最高の勇気は万事うまくいっているときに変化を起こす勇気
・不本意な決定事項にも良いところは見つかる。それを部下に伝えるときは自分が納得したのと同じように説明する。 必要があると理解すれば、誰でも熱心に取り組む。
・企業の墓場行き:誤った経営判断、必要な判断が下されない(無策)。判断に誤りが多いならすぐに説明だけでも求めるべき
・一定の年齢で自動的に退職の対象にするのは膨大な才能と経験を無駄にする
・一流企業は果たすべき使命、ビジョン、価値観を明確にしている。
・優秀な人材には「この会社で働くのは楽しい」と感じてもらう
・疲れ切って、悲観的、否定的な社員がいるのは明らかにマネジメントがうまくいっていない
・一部の社員のせいで他の社員のやる気を挫くことがある
・経験のない人には訓練、能力のない人には支援を提供できるが、やる気のない人には辞めてもらうしかない
・正当な根拠もなく残業が多い部門:悪癖、無意味な習慣になっている。仕事に制限を設けることで労働習慣や仕事の優先順位の決め方、分担方法を改めるようになる。
・効率的な仕事を尊重する文化
・変わり者:物事のやり方が人と違う。ふつうの人がうまく対処できない特殊な問題に対して有効なことがある。仕事熱心で間違ったことに異を唱え、物事が正しく行なわれることにこだわる。 常に向上しよう、最良のものを更に良くしようと心がけ、はっきりとものを言う。目標に向かって働くのが好き。

-目次-
第1部 仕事と人生に報酬をもたらす8つの物語
第2部 自分を、人生を変える2つの誓い
第3部 実践編 本書を読んで最初にやるべきこと