読書メモ

・「齋藤孝の企画塾 〜これでアイデアがドンドン浮かぶ!
(齋藤孝:著、筑摩書房 \1,200) : 2008.09.27

内容と感想:
 
日本社会も大量生産・大量消費の時代は終わり、新たな産業構造への転換が求められている。 ビジネスの世界だけでなく、古くなった社会保障制度なども見直しが必要だ。まさに今の日本は転換期である。 そこで重要になってくるのが企画力だ。あらゆる仕事に「企画」が求められている。 本書はその企画力を磨き方について書かれている。
 冒頭で企画とは「現実を動かす力になって、いろいろな人を巻き込み、協力をお願いしながら実現するもの」と書いてある。 私は「ものづくり」系の仕事をしているが、企画力というか提案力の弱さを痛感している。 言われたことだけをやっていてはこれからはサバイバルできない。積極的に企画し、提案していくことの大切さをますます実感している。 「おわりに」ではまさにそれと同じことが書かれている。 「これからは自分で企画を立てて、チームを組んで、こなしていくプロジェクトリーダーとしての資質」が要求されると。
 第2講では商品開発で大切なのは「方向性を舵取りする企画のほう」だとも言っている。「技術先行で開発するより成功しやすい」だろうとも。 技術先行で高機能の製品を作ったとしても売れないのが今の時代。技術力は当然、必要なのだが、最後は企画がものを言う。 企画を出すことは「積極性のひとつの明白な証拠」とも言っているが、その姿勢が会社にも評価されることだろう。
 最初からでっかいことを企画するから、採用されなかったり、失敗したり、そもそも企画にもならなかったりする。 私もそれを実感している。 だから「3割バッターでよしとする」とか「実現性のある企画を、最初は小さくバントのようにコツコツと当てていく」 というのは参考になるし、少し気が楽になる。
 本書では著者が企画をまとめるときに使っているという「デザインシート」というものを紹介している。 第1講ではそのデザインシートの概念と使い方について述べている。 必須項目を埋めていくことで企画書になるテンプレートになっている。このシートを使うことで考えがまとまるという。
 第2講は企画力を鍛えるための初級編として、どういうものが企画に活かせるか、発想の仕方などが書かれている。 換骨奪胎、領域またぎ越し、違うものの組み合わせなど著者らしいアイデア発想法が出てくる。 その他のキーワードとして、ストーリー性、他人の脳、らしさ(カラー、アイデンティティ)、 空白になっている需要(誰も気づかない)、旬、マイワールド(偏り)、古典(昔話)、 王道、スタイル、得意技、などなどを活かせば様々なアイデアが湧いて来るはず。
 第3講は上級編。 それが果たして上級かどうかは置くとして、企画で必要となる物の見方や考え方が書かれている。 既存のものをアレンジする方法や、グリコのオマケ方式(お得な情報、薀蓄、教養)なんてのもある。 企画には「志や情熱、意欲」は大切だが、「あまりに過剰になってしまうと失敗」するという。 一人でやる企画は別として、企画は「自己主張の場ではないことを忘れてはならない」のだ。
 第4講では既存の成功企画を参考にして分析している。企画として普遍的なものを見出している。より具体的で参考になるだろう。

○印象的な言葉
・企画は練るもの
・ロングセラーは耐久力のある企画。長寿番組がもつ型
・3割バッターならよし
・人と何が同じか
・兄弟企画、親子企画
・組み合わせの意外性、化学反応。つながっていく面白さ。色々なところから切り取ってもってくる
・経験。目を鍛える。情報に対する網のかけ方。習慣化。いい材料を見逃さない目。
・動物を主人公にした寓話:心のあり方を照射
・目のつけどころ。意表を突く
・言葉を吟味。説明過多にならないよう言葉を絞り込む
・ビジュアル化する力。映像が浮かびやすい
・昔はやったものを現代風にアレンジ。リメイク
・こんなのが欲しい、広めたい
・ネーミング。「xxスタイル」
・距離の遠いもの、時間のズレ。端っこ(辺境)。裏側
・信用の貯蓄
・小さく始める。リスク、コストを抑えられる。人にも迷惑をかけない
・優れた質問者:隠れた苦労やプロフェッショナルな工夫を引き出す。裏側、内側に潜り込む
・心のエネルギーをどのようにとらえ、ながしてやるか?エネルギー発散のさせ方
・人と同じ事をやらない。みんながチャレンジしているものは失敗しているから成功の可能性が低い
・チームのメリット:言わなくてもスタッフが分かってくれる。暗黙の了解で動ける。そこにカラー、スタイルができる。
・照明を当てる対象を変えてみる
・オタク:狭いところを広げていく。いくつもバリエーションを持っている
・「xx化」:ミニチュア化、リバーシブル化、和風化、ボックス化
・学問を体系的に身に付ける時期があってよい。知識が定着しやすい。物を見るときの視点や角度が安定する。
・知的満足と遊び心
・子供たちが求めているもの。世の中を生きていくために大事なこと

-目次-
第1講 デザインシートを使いこなす
第2講 「企画力」を鍛える 〜初級編
第3講 「企画力」を鍛える 〜上級編
第4講 成功した企画のエッセンス