読書メモ
・「消える中間管理職 〜10年後に生き残る働き方」
(鴨志田 晃:著、アスキー新書 \743) : 2008.07.06
内容と感想:
21世紀は知識社会の時代と言われる。
IT革命がもたらした情報化の波が、20世紀型の工業社会から社会を変えた。
その知識社会に誕生する新たな職業人の生き方を、「ゴールドカラー」という。これが本書のテーマ。
タイトルの中間管理職だけを扱ったものではない。
ゴールドカラーはロバート・E・ケリーが提唱した言葉。
さて、そのゴールドカラーはどれくらい眩しく、輝いているのだろう?
ホワイトカラーでもブルーカラーでもないそれは、
特定分野の専門家、経営者などマネジメント層、営業マン、企画マン、開発マンなどを総称している。
それだったら従来のホワイトカラーと何が違うのか?
知識を応用する智恵を持つプロであるところが違う。
ケリーによればそれは「情報を知識に換え、知識を利益に換える」ことのできる「知識労働者(ナレッジワーカー)」である。
またピーター・ドラッカーは経営担当者(マネジメントに携わる人)も知識労働者と定義している。
私の理解ではより付加価値を提供できれば「ゴールド」なのだろう。金(カネ、利益)になれば「ゴールド」なのかも知れない。
「フラット化する世界」で著者トーマス・フリードマンは近年のグローバリゼーションの進展と労働市場のボーダレス化の拡大で生き残ることができる人を「無敵の民」と呼んだ。
それは自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人である。
つまり機械化、外注化できるような仕事はゴールドカラーの仕事ではないと言える。
例えばゴールドカラーの営業マンとは経験を価値に変えられる営業マン。経験を積めば積むほど顧客が増え、ノウハウやナレッジが身に付き、成長していく。
Webサイトで売買が完結してしまうようなものは営業マンがやる仕事ではないのだ。
工業社会では標準的な能力があれば個性がなくても生きて来れた。知識社会ではその人の個性が重視され、差別化となる。
「ゴールドカラー」であるためには自分の意見をもち、独自の方法論や普遍的な物の見方をもつことが大事だ。
特定分野の専門家は昔から存在するが、これからは狭い専門性(見える専門性)だけでは不十分である。
そこでは「見えない専門性」というプラスアルファで差がついてくる。現実に対処する応用の智恵や専門知識を活かす智恵のことだ。
第4章には「ニューミドルマン」という単語も登場する。
文字通り新しい中間業者なのだが、
従来の供給側の論理で仲介する中間業者とは違い、より中立的な立場で、顧客の利益を最大化することが最重要課題である。
顧客にアドバイスするコンシェルジュ、サポーターとしての役割を果たす営業マン。
あとがきの「自分自身の未来を阻むものは、唯一、自身の内にある否定的な意識だけ」という言葉は「ゴールドカラー」でありたいならば常に心に銘じて置く必要がある。
○印象的な言葉
・成長したい、挑戦し続けたい、夢を忘れず、喜びを感じながら
・時間価値労働から知識価値労働へ
・職業に貴賎はないが、生み出す価値の差はある
・管理型マネージャーから創発型マネージャーへ。部下のサポーター(育成・支援)。相談相手、共感してくれる同志。優先順位付けと質の向上を促す。オーケストレータ(指揮者)。
・商品でなく自分を売る。顔を売る。自分ブランド
・理想家であると同時に現実主義者であれ
・人間は二種類(パレート):守る人(着実に物事に取り組むが型にはまっていて創造力に乏しい)と、
挑戦し思索する人(新しいものを作り出す創造力とアイディア、行動力を持った革新的な人。現状に甘んじることなく、先の見えない未来に向けて果敢に挑戦できる人。リスクの取れる人)
・日常に流され、現実の壁に阻まれ、挫折を繰り返す中で現状を打破することに臆病になり、やがては志や闘志を忘れてしまう
・大衆心理:大衆は自由を求めるが、結果として一人の独裁者にすべてを委ねてしまう。自由を守るために必要な代償(義務、責任)を忘れ、自由だけを欲しがる安易さ。
・不満だけど自分は動かない。衝突を避け、自分をだましながら「死んだふり」
・意味のある情報を見出し、自身のアイデアや提案を織り込む。本当に必要とされる情報の価値の高まり
・人件費はコストではなく、投資。会社の将来を担う人材
・プロフェッショナル:自分との闘い、自分を客観視、求道者、さすがだね、こだわり、気概や思いや志、継続できる力、極める
・顧客をいらつかせるな、長口上はいいから結論を早く言え、抽象論はぶつな
・師匠の生き様を学ぶ。心構えや精神のありよう。後ろ姿を見ながら、自分のスタイルを見出し、個性に辿り着く
・師匠を探し求める
・エジソンは「1%のひらめき」に徹底的にこだわり、磨く努力をし続けた。世の中には無駄な努力が山ほどある。
・専門性の複合化
・アメリカの大学は授業とプロジェクトを重視。チーム作業やコラボレーションのスキルが問われる
・どんな仕事をしてきたか、実績と蓄積された経験は何か?
・格差社会論の問題:「悪いのはすべて社会だ」という依存主義が潜んでいる
・どんな社会になろうと最後は「自分がどうあるかだ」
・独創的研究:独自の視点から今まで誰も問うことがなかった本質的な課題を見つけ出し定義する。そこに全く新しい可能性が開けていることを提示
・チェンジリーダー:企業の事業や組織を変えていく
・フリーエージェント:組織に属さない生き方
・操作主義のマネジメント:人や組織を設計管理。人を機械を動かす歯車として扱った。人間らしさを軽視
・顧客を知る、顧客が抱えている問題を詳らかにする。隠れた声を聞く
・ブランドの源泉:顧客が暗黙のうちに期待する信頼の高さ
・顧客は自身のニーズが分かっていない場合もある、そのニーズも日々変わる。タイムリーな提供
・投資判断の決め手は人物:現実と向かい合いながら経営できる人。目の前の現実と格闘できる力。
・戦略と戦術の双方向のやりとりを迅速に柔軟に行なう
・一歩踏み込んだときに見えてくる世界
・天才と凡才の本当の違いは「信じる力」の差
-目次-
第1章 ゴールドカラーの誕生 ――知識社会の働き方
第2章 専門家の幻想から脱却する ――専門バカとマルチ人間
第3章 ビジョンを語って衆知を活かす ――新しいマネジメントの登場
第4章 ニューミドルマンの顧客専門家になる
第5章 成長エンジンをつかめ
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