読書メモ
・「大人が知らない携帯サイトの世界 〜PCとは全く違うもう1つのネット文化」
(佐野 正弘:著、マイコミ新書 \780) : 2008.04.29
内容と感想:
いまやPCからよりも携帯電話からのインターネット利用者のほうが上回っているそうだ。
老若男女ケータイ1人1台の時代ならさもありなん。
ケータイからもネットにアクセスできるようになり、インターネットの利用形態に世代格差も生じているという。
「格差」なる言葉が流行だから使っていると思うが、それを格差というのは適切ではないだろう。
格差だとすればそれは携帯サイトユーザがそれ以外の情報にアクセスしにくいとか言った(その逆もある)、
「情報格差」だろう。知りたい情報にアクセス出来ないとすればそれは格差と言える。
若年層の多くはPCよりも携帯電話からインターネットに接することが多い。
ネットと意識していない可能性すらある。最初からケータイから入ってくれば、ネットの捉え方に違いがあっても不思議ではない。
ネットに繋がっているのが当たり前になっているのだから。
さて、その携帯ネットの世界だが出会い系サイトだの、ネットいじめ、学校裏サイト
などネガティブな印象が強い。マスコミがそういう部分を協調しすぎるからだろう。
ケータイしか使えずPCが使えないために下流になるという「ケータイ下流論」なる差別とも悪意とも取れる言説もある。
実際には日本の携帯サイトにはケータイ小説を初め若者による独自文化が花開いているようだ。
そこは海外にも類を見ない独自の進化を遂げているらしい。
著者は早くから雑誌などで携帯サイトを紹介したり、サイトの開発や運営にも携わってきた。
本書では携帯サイトの世界の本当の姿を伝えたいと考え、
PC利用者からの携帯サイト利用者への誤解や偏見を解こうとしている。
私自身は携帯サイトには無関心で触れたこともなく、正直よく分からない。モバゲータウンのユーザが非常に多いこと、ケータイ小説も流行っていることくらいは知っているが。
そうしたこともあり、特に使いたいとも思わないが、どんな世界か知っておきたいと思い本書を手にした。
実際に、PCユーザとケータイユーザの相互理解が乏しいため、「互いの発言や行動、スタイルが全く理解できず揉め事に発展してしまう」こともあるそうだ。
きっとインターネット・リテラシーの相違が誤解を生むのだろう。ケータイネットしか知らないユーザはネチケットなんて言葉すら知らない可能性もある。
携帯電話会社はただ端末を売るだけでなく、ユーザのリテラシー向上にも取り組む責任があるのでないか?ケータイを犯罪の温床にしないためにも。
多くの若年層は今は資金力がないから携帯サイトに留まっている。
しかし大人になって資金力が付いたら果たして同じ場所に留まっていられるだろうか?
サイト自体もユーザと一緒に成長すれば話は別だが。
また、世代が変わって環境や考え方も変わると、次の世代が今と同じ携帯サイトを受け入れるとも限らない。
携帯サイトと従来のPC向けインターネットサイトとの分断はあるかも知れないが、
どちらにも良さがあり、今後も使い分け、棲み分けがされることだろう。
最近ではスマートフォンも登場し、携帯電話とPCの融合とも、PDAの延長とも言えるデバイスにより、サイトの融合もあるかも知れない。
通信速度の高速化や通信料金の低価格化によって、よりリッチなコンテンツが気軽に扱えるような環境が整備され、ユーザがそうしたコンテンツを求めるようになれば、
現在のようなチャチな携帯コンテンツからはユーザは離れていくだろう。おそらく現在の携帯サイトビジネスは
過渡的なものに留まるだろう。かつてのポケベルでメッセージを送っていた時代からケータイでメールが送れるようになったように。
○印象的な言葉
・3Gの普及で一般サイト(公式サイトでなく)が力を増した
・ネット文化の普及:よいサービスを広めて牽引していくリーダー的な役割を果たすユーザの存在
・PCからのネット利用に比べて携帯電話からのユーザは地域ごとの偏りが少ない。携帯電話のインフラがほぼ全国一律なため。
ITリテラシーが高くない地方のユーザでも溶け込みやすかった
・ケータイ世代は電話番号やメールアドレスに対する執着が希薄。平気で変更してしまう
・携帯サイトにはオタクは少数派
・携帯電話はいつでも使える自分だけのネット環境。家族の目からも解放
・日本の音楽配信サービスの9割はケータイ向け(着メロや着うたが主)。
・ケータイ世代は自己顕示欲が強く、仲間を作ろうという積極性もある。ホームページ作成で高度な自己表現も
・新し物好きで飽きっぽい中高生が主なターゲットのため、一時的な流行の後に市場が崩壊するリスク
・携帯サイトにはリンクを張り合うという習慣がほとんどない
・ケータイ世代のリテラシー不足。著作権や肖像権侵害など違法行為の知識不足
・モバゲー:無料で高品質なゲームが楽しめるケータイSNS。招待制ではない。仮想通貨もある。個人情報の公開やオフ会を禁止。
・携帯電話は個体認証が簡単で、1人1アカウントといった管理が可能
・携帯サイト上でのサービスの多くは携帯電話以外からアクセスできないことが多い。PCから閲覧することも困難。ハッキング防止や運営上の理由から。
・携帯電話が既存メディアから(ユーザの)時間を奪っている
・ケータイ中心の生活
-目次-
第1章 インターネットに存在する「2つの世界」
第2章 PCからは得られない「携帯サイト文化」
第3章 ケータイ世代の「コミュニティ・スタイル」
第4章 インターネットの「世代間格差」
第5章 「ケータイ世代」がネット文化を席巻する日
|