読書メモ
・「「加速力」で成功をつかめ!」
(齋藤 孝:著、草思社 \1,300) : 2008.06.08
内容と感想:
人は成功のために努力をする。成功する人はその「努力の速度にメリハリをつけている」そうだ。
それを著者は「加速度感覚」と呼んでいる。その感覚は快感ですらあると。
その例として日本人プロ野球選手のメジャーリーグ挑戦を挙げている。日本である程度まで成功してしまうと、
もはや自分で自分を加速させることが出来なくなる。選手としてもっと伸びたい、チャレンジしたい、という気持ちがメジャーを目指させる。
メジャーという環境が自分を加速させてくれるのではないかと期待するわけだ。
メジャーに行った選手の皆が皆、そう考えていたかは分からないが、加速という言葉を成長と置き換えて見れば分かりやすい。
成長を実感できることはモチベーションの向上、維持に欠かせない。
しかし単に成長と言ってしまうと、加速が持つ感覚が薄れてしまう。いつも同じ速度で成長しているなら加速がない(等速直線運動)。
数学的には加速度は速度の変化率を表すから、それがメリハリ(緩急)ということになる。
一生、加速し続けることは大変だ。ここぞというときに加速すればいい、という。
車と同じで加速中は燃費はよくない。急激にエネルギーを消費する。加速の一方で減速も重要になる。
アクセルとブレーキを使って上手くコントロールする。自在に加減速する技を身につける必要がある。
加速度感覚を「仕事が速い」「勢いがある」と言われるとよりイメージしやすいだろう。
加速度が付いている時は、他の人間は止まって見える。
サイボーグ009の島村ジョーの加速装置と同じだ(古い!)。
本書はそんな加速力を操るコツや、加速力の向上のしかた、そのエネルギー源の養い方などを説いている。
○印象的な言葉
・八割方よければOK。7〜8割までは相当なスピードで仕事はこなせる。そこから9〜10割という完璧を目指すと、多大な時間がかかる
・十割主義より大ミスをしないこと
・加速とは五感を研ぎ澄ました覚醒状態
・ここぞという時には、タダでも働く覚悟
・単純作業で集中状態に入る
・セルフメイド・マン
・最近の教育が競争や試験を悪としてしまった。「ほどほど感覚」の世の中
・元気な人についていくほうが生存の可能性が高い、と本能的に分かっている
・トヨタは会社ぐるみで加速している
・仕事の少ない時期にこそ、もっと加速して将来のための仕事(準備)をしている
・ベテランの域に達して、既にスタイルも出来上がると、あとは反復しているだけかも知れない(等速運動)
・バブル経済のとき、国民は「加速の幻影」を追いかけていた。地価はどんどん上がっていくことにしよう、と国民の多くがバブルに加担した。
・フウッと息を吐いたり、小便をすることで不安や緊張が出て行く
・エネルギーの大半をもっとも重要な部分に注ぎ込む
・量をこなすことで「自動化」できる部分を増やす。それが新しい分野や表現にチャレンジする時間の確保につながる
・禁欲:すればするほど人格が向上していくイメージ。生物としての膨大な基本エネルギーを一流の人間に仕立て上げる方向に振り向ける
・優れた人は意識の回転数が高い。
・仲間同士で伸びる。集団が醸し出す高揚感。加速したいという野心のある人たちの集まり。
・私淑:直接教えを受けていないが、その人を慕い、師と仰ぎ学ぶ。師を勝手に選べる
・領域の違う人に私淑するのは心の避難所をつくること。芸術家に私淑すると、心の安息所となる
・他者の存在があると気が張る
・リーダーの資質:「なんとしてでもやる」という覚悟を見せること。自信と決意の発露。
・不安とは対象の正体がはっきりしないときの感情。正体を暴いてしまえ。心の内側に溜め込まず、ノートに吐き出す
・気持ちの切り換え:いちいち落ち込んでなどいられない。感情面ではネガティブなものを残さない。客観的にミスのポイントを理解し、修正する。メンタリティのタフさ。
ドライなところの心地好さ。
・恕(じょ):孔子が人生で一番大切なこと、と説いた。他人の立場や心情を察する思いやり
・微分、細かな変化率に注意を払う。変化の傾向を見る習慣があるほうが、体勢を立て直すのが早い
・自分を追い込んだことが最大の成果
・全ての人を置き去りにして突っ走る感覚、ぶっちぎり感
・ノンディレクティブ:カンセリングの非指示的な療法。患者に報告させることで悩みに気付いていく
-目次-
はじめに 「加速の快感」が成功を引き寄せる
第1章 加速力が人生に「メリハリ」をあたえる
第2章 加速力をあやつる「コツ」がある
第3章 「人間関係」が加速力のテコになる
第4章 「集中」でその仕事はもっと加速できる
第5章 「逆境」こそ加速力の最大のエネルギー源
第6章 「環境」をつくれば加速力はアップする
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