読書メモ

・「勝間和代の日本を変えよう 〜Lifehacking Japan
(勝間和代:著、毎日新聞社 \1,500) : 2008.11.24

内容と感想:
 
著者ならずとも「今の日本はなんか変だ。変えたい」と思っている人は多いだろう。 でも一人では何も出来ないと、具体的な行動に起こせない。 しかし現状を放置しておいても状況は変わらない。今の国政の状況を見れば、自ら変わろうとしない政治家ばかりであることは 明らかで、絶望的ですらある。
 著者は政治家でもないし、何か劇的に「日本を変える」ための提案を語っているわけではない。 問題意識は高いが理想主義に陥らず、女性ならではの超現実的な目線で語っている。 現在の日本の人口の年齢構成からみて、若い世代は不利である。従って最後は「年齢交代を待つしかない」と 著者もいうように、上の世代が世を去り、考えも見方も異なる世代が中心となる時期が来るまで日本は大きくは変われないと見ている。 時間を経ることで自然に世代交代して変化するのを待つのだ。 しかし黙って時を待つだけでなく、変えられるところから順番に変えていこうと言い、それでも性急さはない。 よく日本人の民族性を理解していると感じる。
 本書では若い世代に多い非正規雇用の問題や女性問題などを重要なテーマとして取り上げ、 その問題の状況や原因の分析をし、解決策を提案している。巻末には著者なりの「15の提言」を掲げている。
 戦後60年を過ぎ、日本は制度疲労を起こしており、システムが時代に合わなくなっていることから、システムや制度設計を変える必要がある。 日本を変えていくためには国民のコンセンサスを形成していくことが必要になる。 まだ行政や国民も情報不足で、情報の非対称性が不信感や誤解を生んで様々な問題を引き起こしているとも言える。 それを解消するには徹底した情報開示と情報共有が必要だ。
 著者は日本の生活向上のために「家族省」という家族政策を横串で見る組織の設置が必要になるとも言っている。 縦割り行政のせいで政策実施の足並みが揃っていないのだ。
 サブタイトルにある「Lifehacking」は生活を気の利いたやり方で便利に変えていこう、快適な環境に変えていこう、という意志が込められているそうだ。
 第2章は漫画家・西原理恵子氏との対談で、働く主婦同士で女性の社会進出について語り合っている。 また第4章は作家・雨宮処凛氏との対談で、非正規雇用の問題や格差・貧困問題について話している。 彼女らのように意識の高い人が増えることを望むし、そうした心ある声が国政に届くようにしなければならない。 日々の生活に追われているとしても、何かを変えたいのであれば我々も当事者として責任をもった行動をとっていかねばならない。

○印象的な言葉
・自分の生活を犠牲にしない範囲で人のために何かできないか
・無理なく参加できるプラットフォーム
・多くの人の善意がもっと生かせる仕組み
・日本は個人による寄付の規模がアメリカのたった1/100
・人が誤った行動をしたり、すべきことをしないのは正しい情報をしなかったから
・我々は政治家や官僚に本当の希望を伝える努力をすべき
・出来るところから効率よく順番に現実的に変えていく
・長期継続主義。サスティナビリティ
・フリーランス志向
・社会起業家
・若者に希望を与えるような社会的条件を用意するのも年長者の役割
・問題の解決を模索している世代が社会の中心になる
・変化はチャンスをもたらす
・ラテラル・シンキング:水平思考
・戦略を3C(Company、Customer、Competitor)の視点で分解
・輸出産業は世界が相手で競争が厳しいから元気でレベルが高い
・日本の管理職はビジネス・経営の専門教育を受けずに管理職になっている。プロフェッショナル
・経済競争、生存競争の中にあるという現実
・本での学習はバーチャル上司
・ITの発達により短期間でノウハウの習得が可能
・情報伝達のスピードが個人の行動のスピードにつながる
・コンピュータには出来ない仕事:企画、マネジメント
・クリエイティビティ:従来の問題設定を疑う、問題を自ら設定し解を見つける
・こっそり会社の中でスキルを蓄える
・ビジネス書はサバイバルガイド
・リスクをとって変化したほうがかえって安全な時代
・会社への帰属意識が乏しいため、組織をよりよく変える力にならない
・社内改革できる人:会社を辞めることができる人。失敗の責任を取れる人
・欧州の国立大学は授業料はタダに近い
・議員も人口配分どおりになるべき(男女、年齢比率)
・日本の女性の政治・経済の意思決定への参画状況は世界で54位(2007年)。女性は二流市民扱い
・女性採用比率の高い企業のほうが競争力が高い
・欧米先進国では女性の労働率と出生率が比例。仕事と育児の両立を政府が支援
・ベビーシッターやヘルパー:新しい雇用
・貧困が生まれる過程:五重の排除(家族福祉、教育課程、企業福祉、公的福祉、自分自身からの排除)
・アメリカの富裕層は日本に比べて分厚い

-目次-
第1章 若い人が暗い国
第2章 西原理恵子さんと、最強ワーキングマザー対談
第3章 女性が産める、働ける国へ
第4章 雨宮処凛さんと、脱・ワーキングプア対談
第5章 NYで考えたポスト資本主義
勝間和代の日本を変えよう15の提言