読書メモ

・「上司を演じる技術 ―誰も教えてくれない超実践的リーダー心得
(梅森 浩一:著、かんき出版  \1,200) : 2008.05.11

内容と感想:
 
サラリーマンも年数を積み重ねていくといつかは管理職になる。そういう立場になる日が来るのだ。 いろんな上司を見てくると管理職なんてなりたくない、と思う人もいるだろう。 最近の若者にも進んで管理職になりたい、無理して出世をしたいとは思わない人が増えているそうだ。 実際、望んだわけでもないのに管理職にならざるを得なかった人も多いはず。 そういう意味では自ら望んで管理職になった人には本書は不要かも知れない。
 著者がサラリーマンたるもの「各々に求められている役割を演じている」と言うように、上司でなくてもビジネスでは それなりの役を演じることを求められている。演技なしで素の自分で生きていける人、それが気にならない人にも本書は不要だろう。
 天性の上司(管理職)でない限り(そんな人がいるかは知らない)、TPOに合わせて上司役を臨機応変に演じているものだ。 「演じる」というと何か空々しい、中身のない軽さを感じてしまうが、ビジネスの現場では相手(部下)にそれを演技と感じさせない迫真の「演技力」が求められる。 部下も、経営者もそれを求めている。しかしいつも演じていることに一貫性がないと演技だとバレてしまう。部下も混乱する。
 そんな演技力があったら役者にでもなれそうだが、そんな下らないことは本書には書かれてはいない。 上司としての演技力のヒントが書かれている。私も上司の端くれだが、上司とはどうあるべきか、を教えてもらったことはない。 見よう見まねでやってきた。その他では色々な本も読んできた。いつも心の中で(抵抗を感じながらも)「演じてる」という意識があったから、 本書のタイトルにピクっと反応してしまった。意識しないでも演じられたら楽だろうと思うこともあるが、それが楽に出来るようになったら、 それはもはや演技ではない。私も未だに管理者ならではの悩みは多い。まだまだ修業が足りないようだ。本書はそんな悩み多き管理者への処方箋である。
 例えば17項目に「ミスした部下を反省させるコツ」というのがある。どこにでもありそうな話だ。 ミスした部下を叱っても効果がない場合はアプローチを変える。本人に考える時間を与え、上司も一緒に考えるのだ。 これは使える。デキる人は自分で勝手にこれをやる。その手順は、
 @ミスに対する対処は速やかに
 A部下本人に自らの至らない点を指摘させる
 Bその指摘が不十分ならヒントを与え考え直させる。全ての問題点を理解させる
 C納得させ今後の改善を約束させる

 18項目には「グレー発想法」ということが書かれていて印象的である。 それは白黒、二元的な発想から、「世の中のほとんどはグレー」と曖昧さの中にこそ解決を求めるような柔軟性、と言っている。 「清濁併せ持つ」とも言い換えている。世の中、奇麗事ばっかり言ってられないんだぞ、と。 それが大人の世界なんだぞ、と。しかし脳みそまでグレーに濁ってしまってはいけない。

○印象的な言葉
・嫌われることに慣れる。全員から好かれようとすると公正な判断が鈍る
・合わない部下:相性の悪さは「お客様扱い」「他人行儀」ビジネスライクで
・バックアップ・プラン
・管理職は辞退しても構わない。適性がない
・部下を尊重、親しみやすさは失わない、緊張感は保つ
・仕事の押し付け方:言い訳は部下に機会を与える、「君のためになる」、能力開発の一環、親心の表れ
・問題は出来るだけ早く上に報告し、サポートをもらう
・他人から言われてやることを人は嫌う。自分からその気になってもらう
・愚者の即断:保留するときは期限を決める。「ちょっと時間をくれ」「急いで結論を出すのはひとまずやめよう」。「急がば回れ」の保留の技術
・ちゃんと見るところは見ている
・部下の評価:キャリアを真剣に考え公正な評価、将来へ向かっての改善点を指摘し、アシスタントする
・自立:自ら問題点に気付き、自らの力で行動を起こす。部下の口から言わせる
・叱るより考えさせる。答えを焦って出させるのではなく、本人から答えが出るまでじっくり考え抜かせる。答えが出るまで付き合う
・デキない部下を戦力にするには、デキる部下の真似をさせる
・デキないヤツの特徴:自分であれこれ考えすぎる
・調子がいいときリスト:スランプ脱出法。リストを見て、今の自分のどこがズレているかを早期発見、軌道修正

-目次-
うまくやる自信がなければ、うまくやるフリをすればいい ―デキる上司は「プレイ(演技)」している!
あなたは変わりたくなくても、あなたを見る目は変わっている ―上司デビューは初日を逃すな!
率先してイヤな仕事を引き受けているようでは上司失格 ―仕事を押しつける「役得」と「責任」
引き立て役では「いい上司」ではなく「いい人」で終わる ―手柄は奪わず、より香りを引き立たせる
社内政治を疎かにしてはいけない ―ゼロ次会員か永世中立国を目指せ
社内情報を適切にコントロールするのが中間管理職の仕事 ―喉元で「ぐっ!」と飲み込む技術をマスターする
デキる上司は、下だけでなく上も使う ―「ほめる」と「おだてる」のコンビネーション
上司は食わねど高楊枝? ―部下を持ったら考えるマネープラン
「男女共同参画型」社会に対応した上司になる ―女性の部下を持ったら考えること
いいとこ見せようと、はやまってはいけない ―「保留」する技術
〔ほか〕