読書メモ
・「ヒット商品を最初に買う人たち」
(森 行生:著、ソフトバンク新書 \700) : 2008.05.10
内容と感想:
タイトルにある「人たち」はヒットする前に買う人たちなのだとは思ったが、それがヒットすると思って買う人たちなのか、どうなのか?
そこを知りたくて読んだ。
マーケティングの世界では「イノベータ理論」という理論を使って、ヒット商品作りの努力が行なわれているという。
イノベータというのがタイトルの「最初に買う人たち」なのだそうだ(イノベーションとは関係ないらしい)。
新商品を最初に買うのはマニアが多いが、それがヒットするとは限らない。
「マニアの後に続くより広い層に広がるきっかけとなる存在」がイノベータなのだ。
商品が売れる期間を延ばし大ヒットにつなげるためには、まずはきちんとイノベータに定着させる必要がある。
彼らイノベータは自信をもって選択し、他人の評価は気にしない。良いと思ったものは買う。好奇心旺盛で行動力がある。
主観的に判断する。深い商品知識に基づいた眼力を持つ。商品の価値と価格のバランスを見る目をもつ自信家である。
購入は直感で決める。躊躇することなく判断するが、自分たちが革新的だという意識はない。
目的を追いかけていくうちに、たまたま良い商品にぶちあたっただけなのだ。
ではマニアとの違いは何か?
マニアは好きなものにはお金を惜しまない。マニアの世界だけで通用するような基準に従って商品を選ぶ。
しかし彼らがヒット商品のイノベータとは限らないようだ。
また自分たち以外の人たちにその商品の良さを伝えることに熱心ではない。ヒットすることを嫌うかも知れない。
そこが違う。
本書ではiPodやニンテンドーDSといったヒット商品を例に、それらがどのようにヒット商品となったのかを
イノベータ理論を使って解説している。マーケティング担当や企画担当にはヒット商品作りのヒントになるだろう。
SONYのウォークマンとiPodの対比は現在のSONYの課題を鋭く突いている。
本書の最後を引用すれば「いつの間にか自分の基準が万人に当てはまると錯覚」し、ゲーム(市場)の「ルールが変わってもそれに気付かず」時代とはズレた商品を
作り続けてしまっている、と言える。
この本、非常に字が大きいのが気になった。その分、情報量が少ない印象だが、マーケティング理論の入門編だと思えば、とっつきやすい本だ。
○印象的な言葉
・中年男性はヘルシア緑茶を買っていない
・ゲーム・オタクには相手にされなかったニンテンドーDS
・iPodは二流の音響機器
・最初はイメージ最悪だったミニバン
・客層が荒れ始めたスターバックス。人気が出すぎて様々な客が来る。来店客もインテリアの一部
・意外な人たちが買ったことがきっかけでヒットにつながったもの
・柔軟な発想のできる好奇心の強い大人
・少子化の原因:こんな環境では子供を産むのは不安
・人間は処理できないほどの量の情報と直面すると、重要でない刺激を無視する
・意識のピラミッド
・ファミレスの客層の変化:接客と食事の質の低下。客層の低年齢化。談笑し勉強する場
・コーディネート:ファッション上級者の証
・プロダクトコーン理論
・スキミング戦略:イノベータをとらえる戦略
・ペネトレーション戦略:最初からアーリーアダプタやフォロワーを狙う戦略。強い流通力と資金力が必要
・下位ブランドが上位ブランドに対抗するには市場シェア比の2乗の投資が必要
-目次-
第1章 最初に手を出す人たち
第2章 ヒットを作る「イノベータ」たち
第3章 ヒットの寿命もイノベータ次第
第4章 ヒットを狙う企業の戦略
第5章 ゲームのルールを変える革新的イノベータ
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