読書メモ

・「ビジネスマンのための「発見力」養成講座
(小宮 一慶:著、ディスカヴァー・トゥエンティワン \1,000) : 2008.05.31

内容と感想:
 
タイトルの「発見力」とは「ものが見える力」のこと。 問題解決能力よりも問題発見能力が必要とされるようになってきた。 これは発想力、企画力、創造力と深い関係がある。 発見能力があれば「顧客のニーズに応える前にニーズを発見できるようになる」。 しかし発見能力の向上のためには問題解決の経験をたくさん積む必要がある、という。 そもそも仕事というものは何らかの問題解決をすることだと思っているから、確かに経験を積むことで見えてくることは多いだろう。
 経営コンサルタントである著者は「お客様本位か?」という視点、判断基準をもってものを見る習慣がついているそうだ。
 本書はその「発見力」を養うための方法についてやさしく解説している。非常に読みやすく、あっという間に読める。 ものが見えるようになるには、たくさん勉強し、知識や道具の引き出しを増やすことが必要である。 必要なときにその引き出しをいくつ開けられるか、どのように組み合わせて使えるかが見え方を決める。 引き出しを増やすには物事に対する関心を持たねばならない。関心があると必要な情報が目に飛び込んできて、自然につながっていく。
 最後の章で「人の喜びや悲しみが分かる、見えるということが、人として非常に大事なこと」と言っているように、 ビジネス偏重で自分のことで手一杯、他人には無関心、人情味のない行政など世知辛い昨今、日本に必要な力はこちらが「見える」能力のほうではないかと思える。 問題をよく見つめ、どうしたら社会全体が幸せになれるかを個々が真剣に考えて手を打たないと、ますます希望が持てない国になっていく。

○印象的な言葉
・観察力、気付き
・セブンイレブンのロゴ「7-ELEVEn」の最後の「n」は小文字
・気にかけていないものは見えない。関心があるから見える
・目利き:「何を見るべきか」、判断基準を知っている
・関心→疑問→仮説→検証
・ちょっと見ただけで全体をつかめる人:本質的なものを見逃しながら、分かった気になり、誤った判断・行動をする可能性がある
・「分かる」とは「分かること」と「分からないこと」を分けること
・物事の違いや類似点、因果関係や関連
・日本経済の実態はGDPの数字ほどよくなく、不動産全体も本格的な上昇はない
・旭山動物園:感動をリピートさせる仕組み
・仮説を立てるために:全体像を推測しうる一点を見つける
・物事を根底から考える人だけに見えていること。深くものを考える習慣
・友情確認商品。「承認の欲求」。仲間に認められたい。ステータスシンボルの商品
・ステータスシンボルの商品の特徴:持ち運びができる。誇示できる。高価、希少性、誰でも知っている
・日経新聞月曜日の経済統計:経済分析に必要なほとんど全ての統計が出ている
・ここ4年くらいで輸入物価が4割以上上がっている。最終商品の値段は上げられない。給料を抑えている。
・世界中の貿易黒字をアメリカが飲み込んでいる
・ノーマルをたくさん見ていると異常が分かる、優れた点が分かる
・危機感や真剣さ(責任)のレベルが違うと見えるものも違う
・こだわり:関心の深さ、奥行き
・満足度が「ふつう」なのは無関心な証拠。真剣にやっているときに「ふつう」はない
・社員には会社のことを考える機会を与えられていない。関心が持てない。もてないように会社がしている
・部長までは能力で昇進させるが、役員にするかは思想があるかで決める。会社の方針の決定の際に必要なのは能力ではなく拠って立つ思想(倫理観、価値観)。

-目次-
はじめに 発見力=ものが見える力
第1章 見えているようで、何も見えていない
第2章 関心と仮説でものが見える
第3章 たとえば、こんなふうに見えてくる!
第4章 見える力を養う方法
第5章 ものが見える10の小さなヒント